伊藤ひであきの地方からの提言

 不良債権の最終処理とは何か 2001.05.13

 国民の皆様の大きな関心を背景に、4月26日、新しく小泉政権が誕生いたしました。それに先立ち自公保の三党協議が行われ、政府が先に決定した「緊急経済対策」の早急な実施や構造改革の強力な推進など9項目に渡る「政策合意」を交わし、引き続き「自公保」三党連立政権が継続される事になりました。「緊急経済対策」の中でも、日本経済の足かせになってきた銀行の不良債権問題に決着をつけるため、最終処理に期限を設け決着をつけようとしているのが最大のポイントです。不良債権処理とは何か。この事により私たちの生活にどのような影響があるのか、まとめました。

●不良債権処理とはどういう事ですか?

 主要銀行の「破たん懸念先」より内容の悪い不良債権を2年以内に直接償却し、新たに発生する不良債権についても3年以内に直接償却するというものです。

●「破たん懸念先」より悪い債権とは

 不良債権の分類の仕方で、内容の悪い方から順番に以下のように区分しています。
 @破たん・実質破たん先   8.65兆円
 A破たん懸念先(危険債権)15.26兆円
 B要注意先(管理債権)   8.99兆円
 C正常先(正常債権)  498.95兆円
 うち@とAの2区分が直接償却の対象で、主要銀行分は12兆7000億円に上ります。この部分を2年間で削減しようとするものです。

●直接償却とは何か、関節償却とは何か

 銀行は融資先が経営不振に陥り返済が危ぶまれる場合、まず将来の損失に備え引当金を積みます。融資額から担保で保全した部分を引いた上で、一定の率をかけた金額を引当金として貸借対照表に計上します。これが間接償却です。この場合は借り手企業との関係は維持されます。
 直接償却とは、債権放棄などにより損失を確定させ、不良債権を貸借対照表から外す事です。 当然、借り手企業との関係も切れます。

●どうして期限を設けて直接償却を行う必要があるのか

 これまでのような処理では、いつまで経っても解決しないからです。日銀の推計では、99年度までに累計で52兆円の不良債権の直接償却が行われていますが、処理額に相当する新たな不良債権が生れており、総額はいっこうに減りません。それはなぜか。
 間接償却では、担保価値が下がった場合、新たに引当金を積まねばならず、地価の下落が止まらない現状では、終わりなき償却を続けなければならないからです。
 また、融資先の経営悪化から正常債権が不良化する可能性があります。そこで新規分は3年以内に直接償却するとして、スピードアップしようとしているのです。

●不良債権は日本経済にどれほど悪影響を与えているのか。

 日本経済が回復しようとしても、すぐ失速してしまうのは、経済の血管である金融システムに不良債権が詰まったままだからです。そして、成長産業などの必要な分野に資金が回らないだけでなく、銀行や企業の資産内容に不信感がつのり、日本経済全体の需要を縮小させています。

●最終処理をすれば、借り手企業の痛みを伴い、約100万人の失業が予測されていますが。

 倒産や失業増など短期的にはマイナス面が強く出ることが予想されます。しかし、ずるずると先延ばししていると、日本経済はいつまでも立ち直る事はできません。構造改革に伴う痛みに対して、緊急経済対策は成長分野での雇用創出などの手当を用意し、セーフティネットを整備しようとしています。
 グローバルな時代の構造改革は言い換えれば自由競争と効率主義の世界。不良債権の最終処理は否応なくその渦中に国民が身を置く事になる。そうした社会経済構造は深刻な歪みも生み出していく。ITや福祉・環境などの産業の成長は見込まれるが、新規雇用の受け皿が用意できるまで進むのかどうか。
 はじき出される人達に、政治はどのような安全網をかぶせることができるのかという課題がそこにある。そうした様々な力関係の中で我々は新しい時代に突入した。

 **参考 海外視察総括レポートアメリカの12日間**


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