伊藤ひであきの視察報告

杉並区の行政評価と外部評価 04.10.18

 10月18日、豊橋市議会行財政改革調査特別委員会(委員長=伊藤秀昭)は東京杉並区の「行政評価システム」特に「外部評価」について視察に赴きました。

 杉並区は文字通り江戸時代の初期、領地の境界を示すため青梅街道に植えられた杉並木に由来して昭和7年に「杉並区」が誕生している。
 人口52万人、面積34kuの住宅都市である。我が豊橋が人口37万人、面積261kuと比べればいかに都市集積度が高いいかうかがい知れる。

 この杉並区の行政評価は平成11年度から始まった事務事業評価から足かけ6年を経過している。その間に制度の変遷を重ね、昨年度からは政策・施策についての評価を行うなど、行政評価制度をより機能させるための仕組みづくりに向けた挑戦が続いている。
 当然であるが、こうした行政の仕組みを大胆に変革していこうとする挑戦は必ずといいっていいほど首長トップのリーダーシップが大きく影響する。

 杉並区の場合は、経常収支比率94.1%、公債費負担比率15.6%という財政危機に直面していたなかで平成11年に就任した山田 宏区長の強いリーダーシップによる。

 就任直後、直ちに「行財政再建緊急プラン」をまとめ、これを実施する事でひとまず危機を回避し、平成13年度から向こう10ヵ年の行革大綱と3ヵ年の行革実施プランからなる「スマートすぎなみ計画」を策定し、職員1千人削減や財政健全化の目標を掲げて取り組み、徹底した経費の削減と歳入の確保、思い切った施策の見直しに取り組んできた。

 その結果、3ヵ年の職員職員定数削減目標210人を2年で達成し、財政調整基金の積み増しや区債残高の削減など14年度末までの財政健全化目標をすべて達成している。
 また顧客思考の区役所作りにも着手するなど区政改革を大胆さとスピードで進めていて、区役所内には至る所に「五つ星の区役所をめざしています」と徹底した区民志向の区役所づくりが伺える。

 また、その過程で平成14年12月には区民主義に基づく住民自治の更なる進展のために区民一人ひとりが誇りを持って区政に参画し、協働する「自治のまち」を創っていくことをめざし「杉並区自治基本条例」を制定している。その中で行政評価の実施と結果の公表を規定し、行政評価の骨格を整えている。

 本題に戻すが、この改革の速度を速め、施策・事業のスクラップ&ビルドを徹底し、質の高いサービスを効率的に継続的に展開するための手法が「杉並区の行政評価システム」であり、この手法が区政経営システムの確立への取組みがエンジンとなっている。

 杉並区の行政評価システムは「21世紀ビジョン」ならびにその「基本計画」に基づいた政策、施策、事務事業評価の3階層からなっている。
 例えば「基本計画」の「まちづくり」の分野の中に、政策の一つとして「良好な住環境と都市機能が調和したまちをつくる」があり、それに基づいて「まちづくり施策の総合的推進」という施策があり、その下に「都市計画審議会運営」と「建設工事統計調査」という事務事業がある。

 評価においては、それぞれの階層に適した評価の手法を用い、総合的で体系化されたシステムの構築をめざしている。
 行政評価の目的が成果重視の行政への転換、効率的で質の高い行政の実現、説明責任の徹底であり、その手段としての行政評価システムである以上、当然の体系ともいえるし、政策の効果をあげるためには、施策や事務事業の構成が重要となる事も明白である。

 そこで杉並区の行政評価は担当部課と総括組織による庁内の評価体制以外に外部評価制度が明確に位置づけられているのが特徴的。
 行政評価の客観性を担保し、庁内の内部評価の結果について、新たに専門家等5人の委員により設置した「外部評価委員会」により外部評価を実施している。

 内部評価対象数は23政策、78施策、889事業 8団体と膨大であるが、外部評価委員会では限られた時間と労力の範囲で行うために5政策、19施策、3団体に絞って外部評価を行っている。

 その中味は@評価意見Aデータ等に関する意見B今後のあり方の視点から政策、施策、事務事業の方向性に関する評価を行っている。
 内部評価では拡充が70%、現状維持が5%、効率化が25%という評価であるが、外部評価では拡充が50%、現状維持が16%、効率化が29%となっている。
 こうして「杉並区外部評価委員会 報告書」としてまとめられ、広く市民に公開されている。

 そのまとめの中で「杉並区の現在の評価内容はまだ十分といえず、学習段階にあることは歪めないが、区民との協働による自治を進めていく上で大きな可能性を秘めている」として走りながら考え、ギヤチェンジしながら検討を深め、それらをインターネットをはじめ広く公開し、区民意見をフィードバックしながら確立していくスクラップ&ビルドで挑戦は続く。

 なお、杉並区では「施設白書」を発行し各施設のコストを明確にしていて、迫り来る「指定管理者制度」に反映していこうとしていることも注目される。

 今後、評価を政策・施策・事務事業の選択の判断材料として活用し、予算編成、組織改革、人事管理など区政運営にどう反映させていくかという課題に第三次行財政改革実施プランに取り組んでいく段階にあり、その意気込みは充分に感じられた。

 私事であるが本年9月定例議会一般質問で杉並区の施設白書を取り上げ紹介しています。これは今年6月まで杉並区に住んでいた娘に指摘されて杉並区のHPから学ばせていただきました。

 また、我が豊橋の行政評価システムは杉並区のそれとほぼ同じ経緯で展開されているが、特に施策の現状及び今後の課題認識は決算との連携による決算評価を行い、施策の推進に向けた今後の対応策を検討し、次年度への具体的な計画内容を記載する。これを予算要求資料として活用している点が杉並区のそれとは違いがあると認識できたことも付記しておきます。

 阿佐ヶ谷駅へ戻る途中に短時間でしたが「芝生の運動場」の区立和泉小学校を案内していただきましたが、緑いっぱいの爽やかな運動場は大いに期待できました。

 視察に際し、杉並区議会事務局の皆さんに大変にお世話になりました。特に調査担当係長の山田女史には歯切れのよい、的確な仕事振りには感銘を受けました。ありがとうございました。


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