伊藤ひであきの市政報告

●第二問 1.予算編成課題(1)地方財政改革 (2)景気・雇用対策 (3)介護保険 (4)防災対策

2.合併問題と三河市構想 3.(1)三河港の構造改革特区 (2)都市エリア連携促進事業


2002年9月 ●一般質問の第二問のポイント

1.来年度予算編成に当たって、直面する諸課題について

(1)見直し論議が高まる国庫補助金や地方交付税の動きと地方財政について

 国における地方行財政改革の動きについては6月25日に閣議決定した「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」で地方行財政改革については、福祉、教育、社会資本などを含めた国庫補助負担事業の廃止・縮減について年内をめどに結論を出す事や、国庫補助負担金、交付税、税源委譲を含む税源配分のあり方を三位一体で検討し、それらの望ましい姿とそこにいたる具体的な改革工程を含む改革案を1年以内(来年6月)を目途に取りまとめるとされていた。ところが、8月28日の経済財政諮問会議では地方行財政改革については、作業を前倒しし、来年度から改革を具体化する方針を打ち出した。

 しかし、これは、国と地方の最終支出が4:6であるにかかわらず、税配分の根本的な改革を伴わない取組みであり、いわば国の視点が強く表れた考え方であるため、地方自治の根幹に関する地方財政のあり方については、地方の視点に立ち、真に分権社会を支える事ができるものとなるよう、国に対して積極的に働きかける事が極めて重要ではないか

 現に6月17日に地方分権推進会議が公表した「事務事業のあり方に関する中間報告」においては、国と地方の役割分担を適正化すべきとし、原則として国の補助事業を廃止し、国の直轄事業と地方単独事業だけとするほか地方公共団体の裁量を大幅に拡大することなどを提言している。

 @中核市に移行して、いよいよ5年目にはいり、地方分権一括法が施行されて3年目にはいるわけで、地方財政改革についてもっと地方の側からの問題提起の動きがなされるべきだと考えるが市長の意図するところをうかがいたい。

 また、新聞報道によれば総務省は「現在1%の地方消費税を2%に引き上げることで、国から地方への税源委譲を強め、国からの補助金の削減を提案してる」、一方、財務省は「交付税は自治体間の財源調整に徹すべき」であると綱引きが続いているという。

 Aこうしたなかで、市長は8月29日、中核市市長懇談会に出席し、片山総務大臣との意見交換をおこなっているが、これからの地方財政のあり方についてどのような論議、働きかけがあったのか、また市長はどのような考え方をもっておられるのか伺いたい。

(2)地域の自発力による景気・雇用対策について

 厳しい、経済状況、雇用状況はそうした数字以上に、身近な地域での相次ぐ倒産や、閉店など眼に見える形で深刻さがうかがい知れます。

 そうした中で、企業誘致については厳しい経済環境の中でも一定の成果をおさめておられる事は、企業立地奨励金交付実績からもうかがい知れます。平成13年度では7件、うち立地が2件。今年度は7件、うち立地が4件。来年度についても18件の奨励金交付が予定され、立地が6件、新増設が3件と伺っています。

 それで、やれ公共事業、やれ企業誘致などという従来型の考え方から、少し角度を変えて、この問題を論議させていただきたいわけですが、今や経済の構造は長引くデフレ社会の中で様変わりしてきています。国の財政は膨大な借金を抱え、大企業は激化するグローバル化のなかで生き延びるのに精一杯で製造拠点を海外に移していく産業の空洞化が著しい。

 勿論、国民経済と雇用の大きな骨格の建て直しは、やはり国レベルの責任であり、そこに任せていく事に異論はない。

 申し上げたいのは地域の中には、充分に働ける能力と意欲を持った中高年の人たちが増えている。障害のある人で働きたいのに機会のない人が多くいる。社会的にやりがいのある仕事をしたいと望む主婦たちも多い。

 その意味で、平成11年度からの緊急雇用対策事業の取組みの中で、市単独事業で高齢者個別訪問事業や安全安心のまちパトロール事業−校区見回りさんなどに嬉々として取り組んでいる姿の中に、新しい雇用が街づくりに向かう息吹を感じますし、TMO事業で障害者が中心となって車イス工房の開設などは特筆すべき新たな取組みではないかと評価します。

 また、日本一を誇る豊橋の農業生産物が名古屋の市場から、名古屋からの流通で豊橋に入ってくるという現実があります。食の不安の中で、地域で取れたものを地域で消費する地産地消の仕組みが、豊橋の地域資源である朝市の活性化につなげようという試みもあります。

 こうした、地域の有形・無形の資源の掘り起こしと地域の生活、福祉・教育・環境などの組み合わせの中から、あたらしい雇用・経済が生まれ、自立した地域づくりが行われていく。その動きが市民協働の街づくりにシフトされていく。

 @こうした動きを更に太く大きくサポートしていく情熱と仕組みづくりが重要でないか。そういう可能性が発揮できる時ではないのかという意味で「地域の自発力による」と質問させていただいた。そういう「コミュニティビジネス」というか、ヨーロッパで根付いている「ローカル・エンブロイメント・イニシアチブ」の可能性に期待したいわけです。

 意図するところがあればご所見を伺いたい。

(3)介護保険の三年間の運用評価と第二期事業運営について

 概ね円滑に推移してきたと総括されていますが、介護保険への移行を視野に入れた長い間の地域福祉へのソフト・ハード両面からの取組みが、効を奏しているわけで、関係者のたゆまぬ努力と、高齢社会に向けた「明日はわが身」意識からの市民全体の協力に負うところが大きかったのではないかと考えられます。

 しかし、また行政課題として残された幾つかの項目を検討しなければならないし、第二期事業運営に当たって、円滑に実施する段階から、地方分権の試金石とまでいわれた介護保険は地域が政策で競う段階に入っていく。

 @介護保険を導入した目的は介護の社会化。介護地獄、老々介護を解消し、特に女性の軽減を負担し、地域全体で支えあう事であった。介護する側の選択肢は拡大したが、自宅で介護されたいという高齢者の願い(アンケート調査でも豊橋の在宅要介護認定者は65%が在宅介護希望)が厳然とあるわけで、国の計画見直しの視点においても「在宅サービスの重視」が打ち出されている。膨張する施設介護費用を抑制するためにも、家族の崩壊に歯止めをかけるためにも、在宅介護サービス基盤の適切な整備は第二期の事業運営に向かうにあたって、どのように対処しようとしているのか伺いたい。

 A介護保険制度では「措置」から「選択による契約」になり、各地域でサービス料と保険料が決められることで、保険料に見合ったサービスがあるのかどうか、すなわち「質」に対する関心は急速に高まっている。利用者にサービスを購入する消費者としての意識が高まってきているからであり、自治体レベルでも「介護サービスの評価事業」への取組みがなされているケースもあるが、国の見直し視点にもある「サービスの質の向上」ついてはどのように対処しようとしているのか伺いたい。

 B厚生労働省は8月28日、来年4月からの介護保険料の全国平均が現行の月額2911円より11.3%増の3241円になると発表した。今回発表された保険料は、市町村が6月時点で来年度から5年間のサービスの利用見込みを基に推計したもので、今後の事業計画見直しや介護報酬改定で変動するとしているが、答弁にあった次期介護保険事業計画、その結果として介護サービス量の見込がはじきだされ、介護保険料の額が決まってくる。その作業は何時を目途に作業がなされているのか、確認させていただきたい。

 Cともすれば保険料の額に注意が集中する事になりがちであるが、保険料は給付との見合いで決まるものではあるが、医療保険制度の改正に伴い、10月から自己負担1割の徹底、年金の物価スライドで給付額が削減されるだけに、高齢者にとってトリプルパンチは痛い。介護が必要なお年寄りが増加し、サービスの利用料が増えるのは当然のことであり、保険料アップは避けられない状況にあると考えますが、介護保険料のアップには慎重を期すべきだと思うが、現時点での考え方を伺いたい。

(4)東海地震の防災対策への具体的取り組みについて

 地震防災対策強化地域の指定を受け、防災対策課を中心に全庁的に、精力的に防災対策に取り組まれている事は承知した上で、焦点を絞って、提案させていただく。

 @自主防災会を対象にした地震防災対策アンケートの結果や、マスコミによる市民意識調査の結果で見る限り市民の東海地震に対する意識は「備えは不十分、不安は感じる」という域を出ていない。
 それで、いざ、地震となったときに、誰が助けに来てくれるだろうか。現在市消防職員は322人、すなわち豊橋市民1000人に一人にもならない配置である事を考えれば、自力で生き延びる最低限の努力を事前に行っておかなければならないことは明白である。まさに「ふだんの備えが あなたを守る」ことをどう具体化させるかということ。

 そのために、詳細な地震の作成を行い、その地震ハザードマップを市民に公開し市民防災意識啓発の大きな役割を果たすのではないかと考える。
 昨年、8月横浜市は南関東地震に対応するための地震マップを作成し、公表した。これは市内各地の揺れの分布図を50mメッシュで表示したもので、それを可能にしたのは、従来のボーリング調査などによる手法でなく、特殊自動車のバイブレーターが人工的な揺れを発生させ、その反射をデータ解析することにより「地震基盤」とよばれる地下深くにある固い岩盤の層までの構造を明らかにできたからです。  詳細な地震マップは、防災対策の精度を向上させると同時に、マップの公表により、市民が住んでいる土地の状態から、住宅の耐震構造の必要性を判断したり、日常の備えや地震時の行動への心構えを促す役割を果たすのでないかと考えます。

 一昨年の東海豪雨のとき、豊橋市の「洪水ハザードマップ」が大きな反響を呼んだが、東田町では、東雲町では、前畑町ではと生活地域に密着した「地震ハザードマップ」の作成を提案しますが、当局の見解を伺いたい。

A次に、いざ避難となったとき、なんといってもその避難拠点となるのは指定避難所となっている地域の小中学校。ところが市内小中学校の361棟の耐震実態はその48.8%約5割が未対策という実態があります。

 児童生徒の安全を守るという面からも、地域の防災拠点の確保という面からも、学校施設の耐震性強化は極めて重要な緊急課題だと考えます。しかし、この対策には膨大な費用がかかることも事実で、国においても「学校施設耐震化促進特別措置法」の制定にも取り組んでいく動きもありますが、当局の考え方を伺いたい。

2.東三河の各地域の合併への取組みと市長の三河市構想について

(1)渥美三町、豊川宝飯、新城南北設楽など近隣の合併への動きについて
(2)市長が公約に掲げた三河市をめざした取り組みについて

 同じ東三河の市町村の事であっても、こと各地域の合併問題について、こうした場で軽々に論ずる事は避けなければならないと思います。何よりもそれぞれの地域には固有の歴史があり、地域に根ざした生活があり、そこに住民のかけがいのない人生が刻まれているからです。

 その上で、周辺市町村の首長の最近の例えば産学官交流サロンなどで、この「三河市」構想への取り組みについては、かなり、踏み込んだ発言があります。設楽ダム建設予定地の後藤設楽町長は「豊橋市が中心となって、東三河市をつくっていくくらいの一体感がなければ、下流の受益地においても、上流の受益地においても水問題は解決しないのではないか。それにより、一つの方向が生まれるのではないか」

 あるいは、下江鳳来町長は「南北設楽でも合併への取組みがあるが、南北設楽では財政状況は赤字であり、高齢化率も高い。その意味で自立できる、元気が出てくる合併でないと意味がない。過疎・高齢化・少子化の奥だけの合併は広域合併の一里塚であり、むしろ、私たちは合併に加わらせてもらえる、いい街づくりに励まなければならない」  また、金原蒲郡市長は「蒲郡市が他市町村と合併するケースは、東三河の全市町村が一体となって三河市構想が動き出すときである。自分としては三河市のネーミングはいいと思う」

 また、白井田原町長は「渥美半島の製造品出荷額は1兆5000億円で、長崎県と同等だが、東三河や湖西市がまとまれば5兆円、農業祖生産高も大きく、山間地域も港も個性的な文化も持つ。豊橋中心のネックレスのような市ができる。いきなりでは無理でも豊田市や浜松市も政令都市構想を持ち、当地域もダイナミックな合併検討を進めるべきだ」

 豊橋市議会において、この三河市構想について論議されたのは、平成12年12月議会−すなわち二期目の早川市長の最初の本会議でありました。その時のお答は「住民意識の醸成が必要不可欠であり、また長期的な課題である。水問題も含め一体となって広域的な行政を行っていくことが大切である」
「市町村合併は時代の流れであり、いずれその時期が来る、規模的には政令指定都市に準じた規模になる」など発言されています。

 また昨年6月議会では「地域の実情を充分踏まえる中で対応していく事が欠かせない。豊橋渥美広域交流圏、東三河広域交流圏さらには三遠南信広域交流圏など多様な広域連携の中で、地方全体のレベルアップに向け本市の役割と責任を果たし、地方分権をより実るあるものにするために政令指定都市−三河市をめざしていきたい。そのための内部的な研究組織を始めた」というやりとりでした。

 @それで、あれから1年経過しているわけで、地方財政改革と地方自治体の行政能力の強化と合理化は必然の課題であり、先程申し上げた周辺市町村からの熱いメッセージも届けられています。そのことに東三河の中核都市−豊橋市長がどう考え、どう説明責任を果たすかは極めて重要です。

 豊田市の鈴木公平市長は8月30日の記者会見で「豊田市の中核市の役割と責任を考えると周辺市町村との合併は必要であり、周辺7町村の首長間で合併についての方向性をまとめる。市民に理解を得るために9月に合併についてのアンケートを皮切りに作業を進める」と一歩踏み出す考えを明確にしています。

 勿論、豊田市とその周辺とは同列の次元で捉えてはいけませんが、「住民の声が大事」「民間のあるいは周辺市町村の動きを注意深く見守っていきたい」という答弁ですが、市長「時は作らなければなりません」「住民意識の醸成も道筋をつけなければ湧き上がってきません」
 東三河の人口76万人は鳥取県より大きく、島根県と同等であります。この夢の実現に向けて、夢で終わらせないために、市長の一歩突っ込んだリーダーシップが必用と考えますが、意図する事があれば伺いたい。

 Aさらに、その上で、広域行政の取り組みであります。何よりも東三河地方拠点都市地域整備推進協議会がもう10年目を迎える、また東三河縦貫道路建設促進期成同盟会など、水・道路・産業・観光などの東三河各地域が参画する機関も目白おしなわけで、そのリーダー都市としての機能を更に発揮されるように望むわけですが、2005年万国博にあわせた「森林祭」そしてそのメイン行事である「インターナショナル・ユースアカデミー事業」の取組みなどは長年の広域行政の大きな集大成として期待されるわけで、その取組みは東三河の一体感を更に醸成していくのではないかと考えられます。
 今後の東三河一帯の広域行政への取り組みについて市長の意図するところを伺いたい。

 Bもう一点、県域を超えた湖西市への見方であります。湖西市が地勢上、あるいは文化・経済、交流上の重要な地であることに異論はないと思います。何よりも工業出荷額1兆円、湖という自然の宝庫も有しているわけで、浜松市とは、浜名湖をはさんで隔たりがあるわけで、豊川水系の水を利用し、三河湾浄化、三河港、三遠南信というキーワードで豊橋との結びつきも深いわけです。
 すでに静岡市と清水市が来春に合併するという動きに連動し、浜松市を中心とした周辺3市6町による「政令指定都市研究会」も発足しているわけです。
 市長は三河市構想の中にこの魅力ある県域を超えた湖西市をどう捉えておられるのか、伺っておきたい。

3.地域経済活性化への新たな動きについて

(1)構造改革特区「三河港」提案について

この「構造改革特区」の設置は現在、法案設置の段階であり、今後、かなり早いスピードで関係法令が整備され、改めて地方公共団体から正式な申請を受付、指定していくという段取り。

 従来型の地域指定でなく、地方公共団体や民間の「知恵と工夫の競争による活性化」のために特定地域での成功事例を示す事により、全国的な規制改革へと波及させ、わが国全体の経済を活性化させようとするものであり、従来型の国の財政資金に頼らないという点でも特筆すべき取組みであり、それに手を挙げる意義は大きい。

 三河港における自動車荷役仮ナンバー利用要件の緩和や、ナンバープレートの登録規制の緩和、許可制になっている車両認証の簡素化などの規制緩和により、国際競争力の強化を図ろうとするだけに、自立した創意工夫、知恵、人材が不可欠です。またこの国際自動車特区プロジェクトは、広域行政でもあり、民の結集も不可欠です。今後、このプロジェクトの推進をどのような体制で行っていく考えなのか、お聞かせ下さい。

(2)都市エリア産学官連携促進事業の取り組みについて

 知的クラスター事業には採択されなかったが、それに準ずる形で都市エリア(中核的な都市とその周辺)の個性発揮を重視し、産学官連携で新技術を生み出し、新規事業の創出や研究開発型の地域育成などをめざす都市エリア産学官連携促進事業。

 採択になった19地域の事業のなかには米ぬかを利用したセラミック材料の開発(山形・米沢=山形)やサツマイモの糖類などを使った健康食品の開発(鹿児島市)、浄水装置の開発(宍道湖・中海=島根)など、地域性に富んだユニークな事業が並んだなかで、「スマートセンシングシステムの開発」というのはなかなか解りにくい。

 この地域の地域資源にどのように結びつき、具体的にどのような新規事業が期待され、地域経済活性化にはどのような形で結びついていくのか、伺いたい。


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