伊藤ひであきの視察報告

● 改めて我がまち−豊橋の視察記 ● 98.09.16

 新党平和幹事長代理の太田昭宏氏の久しぶりの、短時間の帰豊にあわせて、明日の豊橋の戦略拠点を駆け足で見て回った。もっとも私の役目は同行カメラマン。

●病診連携−豊橋市民病院

 移転新築して、2年半−豊橋市民病院は一日約2500人の通院患者で混雑し、920床の病床はほとんどフル回転。自治体病院としてはいわき市民病院に次ぐ規模を誇り、その設備としては東洋一といっても過言ではない。

 その中でも、特徴的なのが病診連携室。ここは豊橋市医師会に部屋を提供し、市内の開業医から患者属性と一緒に検査依頼、MRIなどの高度検査機器の予約などがFAXで送られてくる。これに対応し、初診予約や検査予約をいち早く開業医に送り返すという仕組み。今後の病院機能分化に対応しようとする試み。日平均約20件の問い合わせがあるという。開業医にとっては自院の延長線上にあるのが市民病院なのだ。決して競合するのではないという関係。地域医師会との共存関係があってこそできる連携の仕組みである。

●VWはなぜ豊橋へ

 自動車輸入は全国第一位、日本で走る外車の3台のうち1台は我が豊橋港か らの陸揚げである。その豊橋港の一角にインポートセンターを構えているのが メルセデスベンツ日本やローバジャパン、そして訪問したフォルクスワーゲン グループジャパン。

同社は年間10万台の整備能力を有するインポートセンタ ー用地を平成2年に同地に取得。平成4年には東京新橋から豊橋に本社を移し ている。翌、平成5年から本格操業開始している。全体面積29万平方メート ル、300億円の投資である。現在、従業員は290名。

 なぜ、豊橋に、それも本社まで・・今日の私の最大の調査テーマでもあった。 選定条件は以下の5点だったという

 1.10万台の陸揚げに十分な能力を有する港がある事
 2.PDI(納車前点検)として、20万平方メートル以上の土地が安く手に入る事
 3.国内の主要販売地域への供給に支障なく、かつ距離が近い事
 4.陸揚げ施設から納車前点検までの距離が近い事
 5.悪天候、特に雪などの影響が少ない事
この条件で全国27地域をリストアップし、選定したという。

 豊橋決定の要因は

 1.同地区に専用埠頭を確保できた事
 2.日本の中央で、国内輸送網が整備されている事
 3.Uターン志向の優秀な人材の確保の可能性
 4.従業員にとって良好な居住環境など
 などが上げられるが、それを可能にしたベクトルは会社の歴史が浅くて、東京に投資していなかったことや地方に対する負のイメージをもたないドイツ企業らしい判断があったという。

 当然ながらメリット、デメリットは各々上げられるが、「情報システムの進化で世界的規模で考えれば問題はないが、日本の中の豊橋という面からいへばギャップがある」という。特に宣伝戦略の展開には時間がかかりすぎるとの事。
 東京から豊橋へ転勤して住み着く場合、一番の関心事は教育面で、優秀な高校があるのかという事を小学1,2年の子供を持つ親が一番心配する。
 またドイツ社員にとっての最大の悩みは住宅で、独身者で30坪、家族持ちで50坪の広さが基本であり、その社宅確保が大変だとのこと。結局、住宅団地に専用住居を建てたとの事。これにはうなった。

●技科大そしてサイエンス

 豊橋南部の農業地帯の高台に居並ぶ広大なキャンパス−−国立豊橋技術科学大学。昭和51年、開学。第一回入学式は昭和53年。約2000人の学生と400人の教職員。密度の高い小人数教育で若き創造的・実践的な技術者の養成を図っており、国際交流も活発。最も特徴的なのは多様な産学交流と地域社会との協力の仕組みであり、開かれた大学への積極的な具体化である。

 その具体化が人間、自然、科学をテーマにしたサイエンスクリエイト21計画であり、その拠点がサイエンスコア。20年の歳月をかけた構想はいよいよ具体化の時を迎えている。
リサーチパーク、ベンチャーパークの分譲がいよいよ開始。長引く不況の中で、全国のハイテクパークが息詰まり、その指定さえも返上しようとする動きの中で、豊橋が蓄えてきた「もの作りへの戦略」が待ったなしに問われていく。


 昼食を共にしながら、豊橋の未来に話がはずむ。

「戦後最大の不況の中で、環境、福祉に時代の突破口を開こうとする時、それは新たなる第4次産業志向であり、そうした創造性と可能性を我がふるさと−豊橋が秘めているどころか、次世代を射程距離にして取り組まれている事に、新鮮な感銘を受けた」太田代議士の言葉が凛と響いた。


 視察にあたって、ご多忙な中、何かとご配慮いただいた、神野商工会議所会頭、技術科学大学堤副学長、フォルクスワーゲンの菊地氏、市民病院の鈴木氏、同行いただいた東三河地域研究センターの海野、戸田両氏に厚く御礼申し上げます。


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