特集「揺れる豊橋」(5)

市長 辞職!

9月29日
 市長逮捕ののダイジェスト版と緊急質問をまとめた「ひであきレポート」NO31を2500枚急ぎ印刷、衆院選の準備もあり時間がなく、今回、初めて妻にも応援頼み、区域を分けて手渡し配布。

「えらいこっちゃで、しっかり頑張れや」「すぐ作って配布してくるところがお前らしい」。
途中、来週末の祭りの準備中の人たちに呼び止められ「折角だから、詳しく説明してくれや」と急き、青空座談会。
「テレビでもたもた答えている奴は、市長から金をもらっている奴だぞー」
「早く、市長を辞めさせよ、何を時間かけとる」
市民はいつも自由で元気だ。
夜、党員さんに700枚、配布。

9月30日
10:00
 午前与党で打ち合わせ。助役が報告「市長には、最終的な市長の判断を仰ぎたく、弁護士を通じて接見を求めているが、許可が下りなく、難しい・・・・・」

 議会が出した声明も届いていない。
「市長の意思が確認できなければ、何とも進まない。」
「イヤ、武士の情けという言葉があるが、それも、明日、午後の議会運営委員会までだ、市民感情を考えれば、限界だ、辞職勧告決議を!」
「本人の意思を確認するのが先決」
「じゃー、何日待てばよいのか、待っても進まなかったらどうする、市民の理解は得られるのか」
激しい応酬。
 与党の足並みをそろえようとすればするほど、難しくなる。与党とは何なのだ。

13:00
 昼、議員団集まって、善後策協議、与党を離れても市民の立場から、早く状況の打開を計るべく、正面突破か、否か、正面突破で打開できるのか。

14:10
 そこへ、飛び込んできたニュース。
 早川勝代議士(社会党から社民党そして3日前に民主党)が「総選挙出馬をとりやめ市長選挙に出馬する記者会見を行う」

「な、な、な、なにー」
「ばかな、そんなことがあっていいのか」
「市議会が何に苦しんでいるのか解っているのか」

15:00
 「市長の逮捕は豊橋の歴史に最大の汚点であり、深刻な状況に陥っている。市民の求めているものは清潔な政治と失われた市政への信頼回復にある、21世紀の街づくりに取り組んでいきたい」居並ぶテレビカメラ、溢れる記者。
 決意表明が続く。本当に、市の現状を憂い、市の将来のためという純な気持ちなのか。それとも、政治的駆け引きがあるのか。純な気持ちならその行動は、市長が辞意を表明していないこの段階で、不謹慎ではないのか。
 一定の脚本で動いているなら、小選挙区の勝利と小選挙区の中心都市の市長のイスを分け合うという、ウルトラCなのか。
 何が起こってくるか解らない。この真意はどこに。市役所が三度揺れる。

17:00
 市議団として声明発表。
 「豊橋市政の大混乱の中で、市長の辞任を求め、議会が連日、苦労しているときに、驚いている。・・何のために民主党に移り、衆院選の準備を始められたのか。今、我々に課せられた最大の責務は・・豊橋に草の根の民主主義が厳然と存在することを内外に示すことである。

22:40
 市長がもう一人の弁護士を通して、「辞職願」を提出したとのこと。しかし、それを撤回したという情報もあり混乱。

10月1日 午前
 与党打ち合わせ
市長の辞職願が配られる。墨でしたためてあるが、重いこの現実。
「市長の顧問弁護士同志の確執でゴタゴタしている」
「早く、臨時議会を開き、退職の同意を議会で議決しよう」
「万一、保留という書面が届けられた場合の、対応策は考える必要がある」

13:30
 議会運営委員会。居並ぶカメラ、詰めかける記者達で一杯。
「早速ですが、昨日の午後11時45分、市長から議長の元に辞職願が提出されたため、議長から発言願います」

「今般一身上の都合により 市長職を辞任いたします    高橋アキラ
   平成八年九月三十日   豊橋市議会議長    石黒 巌 殿    」

「今後の対応について協議願いたい」
「明、10月2日、午前10時より臨時議会を開催し、受理を議決する事を提案」
「異議なし」「異議なし」「異議なし」「異議なし」「異議なし」
「そのように決定いたします。以上で閉会します」

10月2日、「市長の退職申し出の同意について」臨時議会召集

 いよいよこぎ着けた、この日、「豊橋市長の辞職の日」
豊橋公園の緑がまぶしい。この1ヶ月、不眠不休の1ヶ月。果たして睡眠時間は累計どれだけだろうか。 「辞職願」が提出されないまま、地団駄踏んだ4日間。

 午前10時からの臨時議会の開会に当たって、幾つかの法的問題があった。

○市長から「辞職願」でてこない・・議会が「辞職勧告決議」をした場合。辞職勧告決議は長、議長、議員などの辞職を勧めることを内容とする、議会としての意思を表明することを言う。原則として辞職勧告決議がなされても、勧告に従って辞職する法的義務を負うことはない・
ただし、長に対する辞職勧告決議には在職議員数3分の2以上のものが出席し、その4分の3以上が同意した場合、地方自治法第178条により、長の不信任決議と解され、法的効果が生ずる。なお辞職のように、本人の意思により決定すべき事柄については、事実上の議会の意志表示としても適当でない。(地方自治関係実例集)

◇すなわち、辞職勧告決議は不信任決議となり、それに対し、市長がそれを拒否し「議会解散権」の行使ができる。それには一部議員から「そこまでいくなら待ってくれ」という悲鳴が上がった。
 それを回避するには、3分の2以上の出席でなく2分の1以上の出席で議会を開くことができるから、豊橋の場合44人の議員数から、あえて29人を出席させて、辞職勧告決議を行えば不信任とはならなく、よって市長は解散権を発することはできない。
 しかし、このやり方はあまりにも姑息で、議会の良識が非難の元になる。

○市長の辞職願は9月30日となっている、この日を退職期日としてよいか。
◇9月30日は辞職願を書いたの日であって、退職期日ではない。よって議会が辞表の同意の議決を行った日を持って退職の期日とする。

○市長が議長に退職を申し出た、以降の取り扱い
◇議長が受理を拒否しても、効力は失しない。退職申し出から5日以内に議長は選管に通知しなければならない。選挙管理委員会は通知を受けた、日から50日以内に市長選挙を行わなければならない。

<パターン1>
 退職を申し出て、議長が預かったままにしておけば、預かった日から20日目に退職することになる。議会の同意は必要ない。
<パターン2>
 議長、受理から20日前に退職する場合は臨時会を開催し、同意議決が必要。(地方自治法第145条ただし書き)

 とまれ、市長から弁護士を通じて、9月30日深夜、「辞職願」が議長に提出された。おまけの情報混乱もあったが、とにかくでた。
 そして10月1日、議会運営委員会で10月2日に臨時会を召集し退職の同意を図ることになった。「辞職願を留保する」文書が別にあって、市役所に届くかもしれないと言う情報もあり、日をおかずに臨時会の日程を決めた。

臨時議会は10月2日、午前10時開会。

「高橋市長の退職の申し出の同意」議案上程。
議会事務局長が市長の辞表を朗読。
議長「地方自治法第145条ただし書きの規定により、本申し出に同意することにご意義ありませんか」
「異議なし」
議長「よって、高橋アキラ豊橋市長の退職の申し出に同意することに決しました。続いて村田助役より発言の申し出がありますので、これを許可いたします」

助役「市民の皆様に謹んでお詫び申し上げます。今後におきましては、再びこの様なことが起きることがないよう万全を尽くし、全職員が一丸となって信頼の回復に全力を傾注する所存でございます」
 この間、わずか5分。重く厳しい臨時会が閉会した。

 閉会後、市議団で声明を発表
「重く、苦渋の現実に結論が出せた。地に落ちた市政の信頼回復のために公明市議団も地方自治の原点に戻って市政刷新に全力を注いでいく。 次の市長は幅広い各層から「信念ある市民派」が擁立でき、「清廉・潔白」な市長を誕生させるために行動していく。

 記者団の質問に答えて「議会に特別委員会を設置し、うみを出し切らねばならない。市長が辞めたからこれで終わったのでない。市長の肉親が役員を務める会社は入札に参加できないなど、入札制度も厳しく改善すべきだ・・」


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