特集「揺れる豊橋」(3)

深まる疑惑

9月20日、市議会与党が集まり、善後策協議。「このまま9月議会が終わっていいのか」。緊急質問をやり、決議をし、後は、一般質問を予定通りこなし、議会日程どおり、常任委員会、予算委員会、最終本会議と終わっていいのか。

「緊急質問の決着だけは議会中につけよう。」
 急遽、午後4時に緊急質問者7人が集まり、議長中心に緊急質問の課題をまとめる。夕方、議長名で市長に申し入れる。

 申し入れた4点は以下
1、豊橋駅東口前広場整備などに伴う電気設備工事請負契約存廃の検討について
2、指名業者選定等入札制度見直しについて
3、市長が豊橋電機工事(株)の株式を売却した時期とその売却が明らかになる証ひょうの明示について
4、10年間の豊橋電機工事(株)に発注した工事名、設計金額、落札金額、契約方法及び同工事の指名業者について *注:豊橋電機工事(株)は市長の長男が社長

 9月24日、昼前、市長より議長に書面で報告

1、豊橋駅東口前広場整備などに伴う電気設備工事請負契約存廃の検討について

 当該工事の契約の存廃について、種々協議検討したところ、契約を解除することにより、本体工事は5ヶ月遅れる、これらの損害賠償等の問題が生じる、ステーションビルのオープンや周辺商店街に影響を与える、駅利用客や歩行者の通行に支障がある、よってこのまま契約を続行する。

2、指名業者選定等入札制度見直しについて
 この事態を厳粛に受け止め、信頼の回復に向け職員全員が努力し、入札制度検討委員会を開催し、主な見直し項目として一般競争入札を更に拡大する、指名業者の選定方法を見直す、設計図書の管理を徹底する、強く業者、業界の指導に努める・・・・・・

3、市長が豊橋電機工事(株)の株式を売却した時期とその売却が明らかになる証票の明示について
 添付されたのは平成5年分の所得税の確定申告書、所得の内訳書。その所得の内訳書の最後に、株譲渡に関して以下のように記してある
「平成5年度中(9月頃)豊橋電機工事(株)の株式(額面500円)27、800株を額面割れにて高橋慶全に売却譲渡する。ただし譲渡損失となるため申告不要」

4、10年間の豊橋電機工事(株)に発注した工事名、設計金額、落札金額、契約方法及び同工事の指名業者について

 現在、警察に一連の書類が押収されているので、書類が返還された段階で報告します。

 9月24日、午後1時過ぎ、議長から「市長からの報告」を受け取る。直ちに、居合わせた同僚議員と協議。「これで納得できるか、今後どうするか 」
 9月25日、午前12時、公明控室、5人の議員全員で協議。納得できないので、公明として、「申し入れ」を行うことになる。本会議、終了後、副幹事長と市長室で「申入書」を渡す。


        申 入 書
                      平成8年9月25日

豊橋市長 高橋アキラ殿
                   公明豊橋市議団
                      幹事長   伊藤 秀昭

 9月24日、市長が議長に報告された「申し入れに対する回答」を我々
公明市議団は精査させていただきましたが、残念ながら、特に下記2点に
ついては、納得できるものではありません。
改めて公明市議団として、行政への市民の信頼回復のために申し入れます。

1、東口駅前広場電気工事の契約解除について

 社長と専務さらには営業担当までが逮捕された豊橋電機工事(株)が引
き続き豊橋東口駅前広場の電気工事を継続することは、到底市民の理解を
得られるものではありませんし、返答は納得できるものではありません。
 当局はその理由として、契約が優先する、多額の損害賠償が発生すると
していますが、何よりも優先しなければならないのは市民の行政への信頼
回復であります。
 例え工期が150日延びても、あえて言えばどれだけ損害賠償が発生し
ようが、大切なことは豊橋電機工事(株)との契約を解除し、新たに工事
施工業者を決定し、市民に納得のいく「東口駅前広場」を完成させること
であります。
 民衆駅の歴史ある豊橋駅が「談合広場」となることは市民にとって不幸
な事であります。その手だてはないのか、あえて再考を求めます。

2、豊橋電機工事(株)の株式譲渡について

 市長は「豊橋電機工事(株)の役員でもなく、株主でもない、一切この
会社とは関係ない」と本会議緊急質問で答弁されました。またその答弁の
中で「93年7月20日に株式を長男に売却した」とも明確に答えられま
した。

 今回、その点についての返答は具体的な市長自身の「平成5年確定申告
書」で示されましたが、日付もない、捺印もない、税務署の受付印もない
下書き程度の書類で、かつその株譲渡の箇所は「平成5年9月頃譲渡する
ものとし、額面よりやすく売却するので、所得には当たらない」と記入し
てある部分だけです。これでは筆頭株主でないという明確な証明にはなら
ないと考えます。
 あえて、申し上げれば、幹事長伊藤秀昭が緊急質問で取り上げたパソコ
ン通信で取得した帝国データバンク企業情報(別途添付)の信憑性確認の
ため、9月17日、午後5時40分 帝国データバンク 豊橋支店長に面
会を求め同所で面会した時に正確な情報を提供するために、3年に1回づ
つ「帝国データバンク会社年鑑調査票」発送して、訂正を求めていること。
 そして昨年、5月22日に豊橋電機工事(株)より返送されてきた書類
を見せていただきましたが、問題の株主欄は

 1、高橋 僚   27、800株 とあり、訂正はありませんでした。

 我々が筆頭株主にこだわるのは、経営責任は問われなくても、その会社の
発言力の最も強いのが筆頭株主であるという商法上の慣例からであり、何よ
りも市長が「豊橋電機工事(株)とは一切関係ない」という証明にこの事を
使われているからであります。

(1)市長が同社の筆頭株主でなくなったのは平成5年7月20日でなく
平成5年9月何日なのですか。

(2)同社から帝国データバンクに昨年5月22日付で返送された調査票
の株主欄は、市長が筆頭株主であることに長く神経を使ってこられた経過
から、どうして訂正されていないのですか

以上、申し入れます。

 「皆さんにくれぐれも迷惑をかけていると、お伝え下さい。会社のことは私は一切タッチしていないので、全く解らないのです・・・・・・」と市長。憔悴しきった様子で力無く。不機嫌。「息子が今日、起訴されることは内々聞いています。親としてはつらいですよ。でも市長としては、方の裁きをきちんと受けよということですよ。どうして、こうした巡り合わせになったのか。
 とにかく私は息子とは仕事のことでは一切話はしないんですから。お互いに気を使うから・・・家内が気が触れてきて困っているのです。・・・・・・・」

 思わず言ってしまった。「市長、大変ですけど、がんばって下さい」

夕方、ラジオ、テレビが市長の長男などが起訴された事を報じた。

 愛知県豊橋市発注の電気設備工事をめぐる談合事件で名古屋地検特捜部は25日、競売入札妨害(談合)の罪で、高橋アキラ豊橋市長の長男で豊橋電機工事社長ら電気設備工事会社2社の計3人を起訴した。   

 起訴状によると、高橋被告ら3人は昨年11月に入札があった「豊橋東口駅前広場整備工事」で、参加したほかの12業者の担当者と共謀。公正な入札を妨害する目的で豊橋電機工事が落札できるよう事前に取り決め、談合した。


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