市民の皆さんからのご質問にお答えします

三井の次世代型焼却炉を視察の感想を聞かせて下さい。

Q:今度、豊橋が導入しようとしている次世代型焼却炉を視察に行かれたという事ですが資源化センターの焼却炉の論点を教えて下さい。


A: 1月30日(金)廃棄物処理調査特別委員会(伊藤秀昭は副委員長)一行と千葉県 市原市の三井造船千葉工場へ。

 豊橋市が導入しようとしている熱分解高温燃焼溶融炉は「環境に優しい次世代 型焼却炉」といわれるが、その導入をめぐって議会で様々な論議が沸騰し、3月 議会でその事業化予算が計上され、それが議決されれば実施設計を経て、建設が 始まり、4年後の平成14年度に稼動することになります。我が豊橋で世界最大規 模(日400トン処理)の次世代型ゴミ焼却炉が動き出すことになります。

 このシステムは15年の歳月をかけて、ドイツシーメンス社によってその技術が 確立され、ドイツ・フィルト市に建設した1号機が、今秋の本格稼動を控え、試 運転や改造が行われている。日本ではプラントメーカーや自治体などが参画した 「廃棄物研究財団」が中心となって研究開発が始まったばかり。

 その中でも先陣を切っているのがシーメンス社と技術提携した三井造船。三井 は横浜市との共同研究で、日20トン処理の実証プラントを建設。94年8月から95年 12月まで運転し、96年に唯一「技術評価書」を取得し、厚生省の補助金対象設備 のお墨付きを得た。商品名は「三井リサイクリング21」(以下、R21と記す)

 一方、次期焼却炉の選定を迫られている豊橋市はこの次世代型を採用すること を決めた。その理由は厚生省の2つの新たな指針。それは
(1)焼却灰は今までは最終処分場で埋め立てられていたが、溶融し固化し再利用 することを義務づけたこと
(2)新設炉は0.1ナノグラム以下というダイオキシン規制。

従来炉に溶融固化技術やダイオキシン対策をするよりも、それらをガス化と溶 融の一体化で熱量のロスをなくし、溶融炉の高温燃焼でダイオキシン類の発生を 低減、熱回収による発電効率も上げる。またスラグの有効利用で減量化率を高め、 飛灰の無害化も可能にする。その上、建設コストが安価でそれはごみ処理コスト に連動する。この熱分解高温燃焼炉こそ21世紀の主流になると判断して、昨年2 月末、市長の政治判断で決定はなされた。

 しかし、稼動実績はない。事実、それまで議会に示してきた検討資料ではこの 熱分解炉について「維持管理に手間がかかり、既存施設との整合性もなく、安定 稼動の実証性に欠ける」としてきた経過からは逆転の決定である。この決定に議 会はもめた。それまではストーカー炉で絞り込まれてきたからだ。

 一方、折りからの造船鉄鋼不況に直面している重工業メーカーはそれまで培っ てきたボイラー技術や鉄鋼炉、プラント技術を生かして、脚光を浴びている新た なる次世代型焼却炉の市場に一気に参入しようとしてくる。「遅れてはならじ」 と急ピッチで実証炉を設計し、稼動させ調査に入っている。

 しかし、時間がかかる。「実証装置にはごみ質の変動に対応できること」とい う条件がついている。すなわち春夏秋冬のごみによる質の変化の運転期間が約1 年必要なのだ。さらに研究財団に技術評価を申請し、結論を得るのに6〜9ヶ月 は必要だからである。

 各メーカーが実証炉を設計し、稼動し始めている現状の中で、豊橋市が今夏に 契約しようとすれば、すでにお墨付きを得ている三井以外は参入できなくなる。 よって市長は昨年11月末の特別委員会で「発注時には入札に参加でき得るメー カーは1社とならざるを得ない状況になってまいりました」と発言、遺憾の意を 示しながら理解を求め、三井との随意契約でこの事業を進めることになっていっ た。

 その三井の実証プラントが今度は千葉県市原市に移され、千葉県と産廃処理の 共同研究を行う目的でこの工場内で組み立てられ、1月下旬から稼動中というこ とで、この機会に視察し、調査研究しようとなった次第。何故実証プラントかと いえば最初から実機を作って研究開発するには多大なコストがかかるわけで、実 証規模20トンのスケールアップは限界は無制限という同財団の開発指針による。

 総武線、内房線と乗り継ぎ、八幡宿でおりタクシーで10分(当初は三井側から 同社のバスの手配がなされていたが、委員長と相談しそれを断った。あくまでも 公的な視察であることにこだわった)、東京湾に面した広大な臨海工業地帯に三 井造船千葉工場がある。

 工場の入口門で迎えられ、会議室へ。かって私は建設機械の営業マンだった。 業界の人が、あるいは大型機械の商談中の業者が工場を見学するとなると、随分 気を使ってスケジューリングしたもので、当日などは緊張の連続だった。あの時 と同じように、会社を挙げて木目細かく準備がなされていることが手に取るよう に理解でき、かえって恐縮した。

 会議室で概略の説明を受けた後、早速プラントへ直行。24トン/日処理のプラン トということで想像よりは結構大きい。約20mの回転ドラムがゆっくり回転し つづけている。ごみの投入口から、破砕機、熱分解ドラム、高温燃焼溶融炉、廃 熱ボイラーなどごみの流れに沿って、原田R21担当部長の説明をイヤホーンで聞 きながら移動する方式。、有効利用するスラグの状態もつぶさに視察した。

 破砕され、投入されたゴミは回転ドラムによって蒸し焼きされる。そこで発生 するガスは、灰を溶かす炉にパイプでつなぎ、燃料として使う。また熱分解の結 果出てくる灰は、それぞれドラム缶くらいの大きさの冷却器に移し、水で冷やし ている。灰には鉄やアルミ、それにガレキなどが含まれており、これらを機械の 振動で分別し、猛毒のダイオキシンを含んだカーボンのみを溶融炉へ送り、そこ で溶かし、溶けた灰は黒い針金状となって水で冷やされ出てくる。プラント特有 の音は出ているが想像以上に静か。「これは三井のデモンストレーションだ」と 意識して冷静に見ていたが、それでも確かに安定稼動を印象づける状況であり、 何よりもこの1年、時間とエネルギーの大半を費やしてきた次世代型焼却炉は目 の前にあるのは感動である。

 会議室に戻り質疑。各委員が真剣に迫力ある質疑を雨あられのごとく展開した。

 私の質問のポイントと三井側とのやりとりの要約は以下の通り

 伊藤「市民の皆さんの最大関心はダイオキシン対策。先ほどの説明では0.01ng は目標値であって実証データではないんだなあという印象を持った。この点はど うか」
 原田R21担当部長「ダイオキシンの0.1ngという対応はバグフィルターの温度 を170度に保つことでクリアできる。さらに0.01ngの対応については第二バーボ ンの後に触媒反応塔を設置して、触媒の力で0.01ng、もしくはそれ以下をクリ アできる事実を確認している」

伊藤「スケールアップについてだがフェルトプラントでは240トン炉に対する回 転キルンは120トンに分割して2系統にしてリスクは軽減しているという報告が シーメンスを訪れた豊橋市議会欧州視察団によりなされているが、予定される豊 橋の回転キルンは200トンそのままであるが問題ないのか、分割してリスクを分 散した方がよいのではないか」
 原田R21担当部長「シーメンスが最初に経験したプラントは70トン/日であり、 このプラントから120トン/日を作り上げた。今日、彼らは設計基準を330トン/日まで 引き上げ、スケールアップを図っている。我々はシーメンスの120トン/日を基に 200トン/日にしていく」

伊藤「我々が注意しなければならないのはシーメンスとは技術提携はしているが、 シーメンス方式と三井造船方式とは明らかに違いがあり、我々が導入しようとす るのは三井バージョンだという事。三井の200件を超える特許との関係を聞きた い」
原田R21担当部長「200件を超える特許は横浜で実際にプラントを動かし、そこ で出た色んなアイデアを特許申請しているのであり、そのほとんどは分別に関す る周辺機器が大多数だ」

伊藤「三井造船の今までの焼却炉の実績では100トン/日以上の炉の実績はない。そ れは営業力の問題か、商品力の問題か」
R21担当部長、原田裕昭氏「技術屋から見ると、長年100トン以上の炉をやりたか ったが、営業が話しを持ってこなかった」
太田紀一専務「はっきり言って営業力の差である。しがらみがあり、締め付けが あった。御市のような大きな市はストーカー炉メーカー5社しか参入できなかっ た」

伊藤「三井リサイクリング21を開発し、商品化し、全国に営業活動を開始したと 思うが、我が豊橋へこのR21の情報を持ってきたのはいつか」
海野中部支社長代理「はっきりした日にちは覚えてないが、3年前だ」
「一昨年の11月頃までは、このR21の情報はほとんどなかったが」
< 海野中部支社長代理「3年前には私どもがシーメンスからこういうものを導入し てやっていますという通常の営業だった」

田蔦豊橋市環境事業部長「その件については私がよく承知しているので・・・」 質問「庁内で聞ける事はまたあとで聞かせてもらう。ここでしか聞けない事を聞 きたい」
田蔦豊橋市環境事業部長「結局、3年前である。その時の厚生経済委員会に資料 として出してある」

 時間を延長しての白熱した質疑が続いた。

 どのようなゴミ処理施設が設置されるかはその自治体のゴミ行政を象徴します。 その意味で我が豊橋市が導入しようとしている熱分解溶融炉--三井R21は全国 自治体に情報発信していくことになるだろう。また我々がこの1年間、真面目に 真剣にこの焼却炉導入をめぐって論議してきた経過とその内容は全地方議会の貴 重な資料となるだろう。

 帰途に向かう途中、八幡宿駅前広場に「ようこそサッカーの町 市原へ」の看 板に気がついた。530発祥の地ー我が豊橋。新たなる次世代型焼却炉を中心に してゼロエミッションを目指す新530運動でリサイクル社会のモデル都市を創 りだそうではないか。「ようこそ環境先進都市 豊橋へ」のアドバルーンを豊橋 駅に上げようではないか。そんな思いで帰途についた。


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