伊藤ひであきの地方からの提言

正確な情報で真摯な論議を!98.08.31

 豊橋が高温燃焼溶融炉を導入しようとして、三井造船との間に仮契約が済み、9月議会で、議決されれば本契約、そして実施設計、工事着工という大詰めの段階で「シーメンスプラントのガス漏れ事故」がドイツ、フィルト市で起きました。直ちに、小出助役が現地に赴き、「安全・安定稼動の確認ができたから、焼却炉の建設は従来方針通りに」という報告がなされています。

 事故を起こしたのはドイツのシーメンス社の焼却炉で、このシーメンスと技術提携している三井造船が豊橋に建設しようとする炉は同型炉だからドイツで事故を起こしたのと同じ設計、材質、仕組みで、シーメンスのがんじがらめの焼却炉を豊橋で建設しようとしているのでしょうか。三井炉は試験段階で得た多くの特許技術を採用していて、全く同じ物ではないはずです。

 「フィルトのシーメンス焼却炉と豊橋の三井焼却炉はどこがどのように違うのか」このことが明確にされないまま地球の裏側のフィルトでのガス漏れ事故がセンセーショナルに伝えられている事に危惧を抱くわけです。

 だから、ドイツで起きた事故原因の究明はこのごみ処理システムの更なる安全・安定稼動のために勿論必要ですが、豊橋の焼却炉導入とはどこかで区切って判断しなければならないのではないでしょうか。

 ただ、このゴミの熱分解ガス化技術そのものはフィルトプラントの連続稼動が未だ検証されていないどころか、今回のような事故を知る時、根本的に無理があるのではないかという素朴な疑問に突き当たります。そのために契約にあたっての様々なかし担保保証が設定されているのでしょうが、担保があるからいいという事にはならないと思います。なぜか、フィルト市と同じような事故は絶対起こしてはならないからです。

 ところで、豊橋はなぜ次世代型焼却炉を導入しようとしているのでしょうか。従来炉に溶融固化技術やダイオキシン対策をするよりも、それらをガス化と溶融の一体化で熱エネルギーを有効利用し、ダイオキシン類の発生を厚生省基準の更に十分の一の0.01ナノグラムに低減し、リサイクルにも貢献するからこれからの焼却炉――次世代型といわれています。

 市民にとっては誇りうるシステムを全国に先駆けて導入し、環境先進都市にしようというコンセプトが市民に十分伝わっていなくて、焼却炉の事だけがクローズアップされています。市当局はもっと広報活動に傾注すべきです。180億円のプロジェクトにどれだけの広報予算をセットしているのでしょうか。

 また、焼却炉論議が正確な情報で論議されているとは到底思えません。29日の東海日々新聞への「焼却炉の危険な契約」という寄稿文は典型です。
 フルモデルチェンジ車が完成するのは、販売されてから2年くらいで市場で実験しているようなものだと述べておられましたが、何十年前の自動車技術の事を指摘しておられるのでしょうか。フルモデルチェンジ車がリコールされた事例があるのでしょうか。
 横浜市は採用しないと決めたとありますが、横浜市は導入しようという前提で実験プラントにゴミを提供し協力したのでしょうか。
 大阪府能勢町の高濃度のダイオキシン土壌の原因は三井造船の偽装工作だという裏づけはあるのでしょうか
 豊橋は随意契約であっても、契約先の経営状況審査を行うはずですが、三井造船の経営内容がご指摘のような内容であったら当然、除外されているはずです。
 7月21日にNKKがシャフト式炉で、また荏原製作所が流動床式炉で技術評価書を得ましたが、炉型式が違うのです。どうして直ちに入札に参加させれるのでしょうか。厚生省基準の指針外の施設だから、その認定だけでも6ヶ月以上かかるのです。

   豊橋の不祥事から2年目の9月を迎えます。あの時、市民の厳しい目が行政と議会に向けられました。次世代型焼却炉導入をめぐって、行政能力が問われています。またそれを審議する議会の見識が問われています。

 「豊橋はどれだけ成長したのか、変わったのか」正念場の9月議会です。冷静な、そして正確な情報を市民に発信し、市民が納得できる議論と結論を出していくべきです。


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