伊藤ひであきの視察報告

四万十に民あり智あり 97・07・16

 はるかなる四国の山並みから、いくつもの渓流や支流を集めてやがて太平洋へ と注ぎ込むーー日本最後の清流といわれる四万十川。その河口部に人口3万50 00人の中村市がある。

   四万十(しまんと)の由来はアイヌ語の「シ・マムタ」=はなはだ美しいとい う意味からとも、四万十もの支流が集まっているからとも、沿川の幾つもの地域 の数からとも言われる。

 この四万十川は全長196kmの一級河川。その源流は高知県高岡郡東津野村の 不入山で、流域は2県3郡2市を含む広範囲に及んでいる。この地域は我が国で も多量の雨に見舞われる地域であり、この雨が標高1200mの清水から始まり、 渓谷を流れて渓流となり、山間を流れて清流の大河となる。

 この清流を守るために、四万十方式といわれる幾つもの智恵が生かされている。
・上流の十和村や窪川町などに見られる自然排水浄化施設。地域の汚れた水を自 然本来の浄化機能を利用し、強化して、構築し、流路内で高度に処理する水処理 技術。
・ヨシや木炭など、自然にやさしい素材を利用した浄化施設「きらり」や多自然 型の河づくり。
・間伐材や地元産の苗木を利用して道路を改良する「木の香る道作り事業や」近 自然工法による河川改修。
・安定した水量の確保のための源流の森作りや、古くからの里山の風景を残そう とする棚田の補全事業など
 これらが関係機関の連携協力により、多重に行われていることである。

それに様々な市民グループの積極的な自主活動が重なっている。
 例えば上流部では生活に密着した自然環境の保全を目ざす「カウベル会」
若い林業者の育成をめざして設立された「ユースフォレスタ」
岸辺の生態系を守るために川岸の土地を購入するトラスト的な「僻村塾」など。

 そして毎年7月の第4日曜日は四万十川流域一斉の河川清掃「クリーン大作戦」 や流域はもちろん全国から寄せられる寄付を基に、その運用益によって清流保全 の取り組みを推進する四万十川総合保全機構(四万十川ファンド)が重なる。

 こうした住民主役の智恵を生かした粘り強い実戦活動があって、清流が守られ、 そればかりか20年、30年先を視野に入れた清流保全のプランを提案している ことである。

 7年前、15人で始めた豊橋市の豊川の支流「朝倉川を守る」活動。たかがゴ ミ拾いではあったが、今日まで多くの周辺住民の参加を得て、約6kmを春と秋の 年2回、清掃活動を実施し、河川ステージでの「朝倉川シンポジュウム」も企画 してきた。こうした地道な実践は、商工会議所が中心となって「朝倉川育水フォ ーラム」となり、今春の1500人も参加した「朝倉川530大作戦」となり、 ホタルが戻ってくる里山づくりーー「朝倉川流域ビジョン」としてまとめられた。

 しかし、もっとスケールのでっかい住民運動がこの四万十川にあった。

「四万十の 青き流れを 忘れめや」

爽やかな四万十の視察を終えて


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