伊藤ひであきの地方からの提言

三河湾はよみがえるか(3) 96.09.04

8月27日から30日まで、豊橋市で「閉鎖性海域の海水浄化と快適環境の創 造に向けて」をテーマに世界19カ国から、海洋科学の専門家や港湾開発の第一 人者が集まり「CLEAN SEA96 IN TOYOHASHI」(=閉鎖性海域の環境改善に関する 国際会議)が開かれた。

三河湾は、知多半島と渥美半島に囲まれる面積約600平方Kmの波静かな内 海で、海水の循環率が悪く、ヘドロが堆積し、赤潮の多発するなど、かっての青 砂青松の面影はなく、悲しいことに全国有数の汚れた海であり、閉鎖性海域の問 題点を凝縮した湾域である。

平成2年7月、「美しい三河湾を再び取り戻す事は、我々の使命であり、責務 である」と三河ベイサミット’89が開かれ、「三河湾浄化推進協議会」(会長= 高橋アキラ豊橋市長)が発足。足かけ7年の活動を経て、「全国閉鎖性海域連絡 会議」そしてこの「国際会議」にまでこぎ着けたのである。

人口35万人の中都市が初めて行った国際会議である。関係者のご苦労にただ ただ頭が下がる思いである。と同時に、及ばずながら市議会の場で「三河湾浄化 の日」、この「全国組織」、そして「国際会議」そして何よりも「住民運動とし ての三河湾浄化」を叫び続けてきた一人の人間として、嬉しい限りである。

ただ残念だったのは、行革懇などの日程の関係で4日間通して参加できなかっ たことである。

トルコからは「イズミル湾の事例」、オーストラリアからは「シドニー市排水プ ロジェクト」が、アメリカからは「ボストン港プロジェクト」ニュージーランド からは「沿岸都市廃水処理システム」がレポートされ、国内からは洞海湾、田子 の浦、大阪湾などの取り組み事例も発表された。

そうした中で特別講演された名古屋大学名誉教授の西條八束先生の「青 くない海」

・豊川用水は確かに東三河の大地を潤し、農業生産を日本一にしたが、逆に豊川 から直接、三河湾に流れ込む水量が少なくなり、周囲の海水を伴って流れていく 効果がなくなった。

・低質を改善するためのヘドロの浚渫や覆砂などの効果は、窒素やリンの供給が 減らない限り、水道の蛇口を開いたまま、浴槽の水をかき出しているようなもの である。

・埋め立てのために干潟が急速に消失していることは重大問題である。近年干潟 が、汚濁した海水を浄化する能力があることが研究され、解明されてきた。

・日本で一番汚れた海に「海の軽井沢」を目指す最大級のマリーンリゾートが行 われていることは遺憾である。「自然環境に配慮した開発」というが環境影響評 価をみてもその配慮には疑問である。

・三河湾で埋め立てが行われていなかったら貧酸素水塊は発生しなかったであろ う。

・三河湾は遠い昔からこの地域の住民に多くの恵みを与えてきた。そのような水 域があることがこの地域が発展した一つの大きな理由である。環境破壊を最小限 にして、この自然を子孫に引き継ぐことが我々の責務である。

一方で、三河湾リゾート計画、ウオーターフロント計画、三河港開発計画、人口 島計画・・・・・と21世紀の開発計画がギッシリ
一方で、三河湾浄化という環境保護の大命題・・・・・・

今後、この国際会議での熱心な研究発表やシンポジュウムなどの教訓をどう生か し「青い海」を取り戻すのか。議会人としての責任の重さを痛感した国際会議で あった。海はよみがえるか・・・青い海は取り戻せるか・・そして人間は我慢で きるか


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