伊藤ひであきの地方からの提言

本当に大丈夫ですか!介護保険!98.06.25

 「この中で40歳以上の方、失礼ですが手を挙げて下さい。手を挙げていただいた皆さんは再来年から、今のところ1ヶ月に約2500円の保険料が徴収されます。寝たきりのお婆さんも、定年のお父さんも、元気なお母さんも対象です。

 年金をもらっている方は年金から強制的に天引きされます。国民健康保険の方は国保保険料に上乗せして支払わなければなりません。社会保険の方は半分は会社負担ですが給与から天引きされます」。
 この1ヶ月間、市内約40ヶ所で行った「福祉セミナー」で私はこう切り出した。ほとんどの方が「知らなかった」と絶句したが、昨年12月国会で成立し、実施まであと1年10ヶ月と迫っている「介護保険」の認識はまだこんなものである。

 「いざという時は国で介護の面倒を見てくれるんですか」
 介護保険は40歳から保険料を徴収されますが、サービスの適用は65歳からです。55歳で交通事故にあって介護を必要としても、介護保険サービスは受けれません。40歳以上でそのサービスの対象となるのはアルツハイマーなど国が認める老人性の病気だけです。40歳から64歳までの方でその対象となるのは全体の2%位といわれていて、掛け捨てになります。 サービスを受けるには市町村の窓口に申請します。すると役所から調査員がやってきて73項目の調査をし、コンピュータによる一次判定を受け、その資料を基に専門家による介護認定審査会の二次判定で一度(虚弱)から六度(最重度)までのどれかに認定されます。

 その認定に応じた介護メニューでサービスを利用することになります。サービスを利用すると全額の1割を負担することになります。ただではありません。しかも、支給限度額があるからそのサービスで足りない分は補わなければなりません。

 体の弱ったお婆さんが一度(虚弱)と認定され、要支援対象となったとすれば、サービス費は月6万円、1割負担で6000円の負担。寝たきりのお爺さんが最重度と認定され特別養護老人ホームに入所し、24万円かかったとすると利用料はその1割の2万4000円、食費は別途かかるから2万3000円の食費とあわせると4万7000円。それに二人の毎月の保険料5000円。合計すると5万8000円の介護出費となります。

 ここまで説明してくるとみんなの表情が曇ってくるのが手に取るようにわかります。

   当然、危惧されることは

 所得なければ介護なし
 現在は税による福祉制度があり、市町村に申し込めば誰でも受けられる。しかし、介護保険が始まると、介護サービスは保険料を納めていないと受けられなくなる。
 特に財政基盤の弱い国保加入者は国保保険料に上乗せで徴収されるが、今でさえ国保の滞納者が1〜2割の滞納者がいることから、ますます滞納者が増えると予測され、多くの市町村では財政負担が過重になるのでないか。
 また保険料の決定に国会審議は必要なしとされており、最初は一人当たり2500円であっても不十分なサービスが今後整備されていくと当然保険料はアップする。2010年には3500円と推計されている。高齢化の進展と共に介護を受ける対象者が多くなると同時に国民の権利意識も高まり介護需要が増え、さらに保険料アップが懸念される。

 保険あって介護なし
 要介護認定が本当に公平に行われるだろうか。認定されてもそれに見合ったサービスが受けれる基盤整備が達成されているであろうか。
 調査によると8割の自治体が介護基盤の整備が不十分であると答えている。また介護保険により、ホームヘルパーやディサービスなどの福祉は徹底的な効率化を求められ、民間の経営第一主義が持ち込まれると、福祉の心を失った儲け主義のサービスになる可能性も高い。

 親不孝のすすめにならないか
 介護保険は申請主義の現物給付だから、助け合って介護している家族には給付はない。「毎月保険料を納めているのだから、市役所から来てもらえればいいじゃない」となって、親不孝のすすめにならないだろうか。このことにより日本人の生き方の根幹にある「家族」「家制度」をぎすぎすしたものに変質させてしまわないかということである。

  負担ばかり押しつけるこの国の政治
 新たな保険制度ができれば、魔法の杖のように全てが良くなるなど、誰が信じられようか。昨年9月の医療改革でも、医療サービスの根本に触れずに患者の負担増のみで終わった。

 税金は本来、国民のために使われるべきであり、国民に還元されるべきもののはずである。その税金のムダが多すぎます。公共事業の抜本見直し、行政改革、規制緩和などの徹底したムダ削減で年間10兆円程度の財源確保が十分に可能と考えられます。
 これを国民生活の向上に役立てるべきで、国の責任で介護サービス体制を充実させることなど十分可能であるはずです。
 試算では平成12年度の国全体の介護費は4兆2000億円。「火だるまになって行政改革を断行」(橋本首相)すれば介護保険料など徴収する必要は全くないのです。

 急速に進む高齢化は、我が国にいまだかってない社会体制の変革を求めています。その根本理念に最も必要なのは何か・・・・。政官財の癒着を断ち切り、国民の目線で一人一人を大切にする人間主義の政治が待たれる所以です。

 政治に理性と正義感が取り戻せるかどうか。20世紀最後の参議院選はその転換点にしなければならない・・・・・。


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