●医療制度改革を推進しなければならない理由
昨年の暮れにかけて、政府与党間で医療制度や医療保険制度の改革が論議されました。
政府与党が合意した改革案については、例えば自己負担割合が増えるなどの皆さんにとって厳しい面もあります。しかしながら、なぜこうした改革に踏み切らねばならないかから、少々ご説明し
なけれればなりません。

まず医療費が年々増大(年間約31兆円、年間約1兆円弱増加)し、それを支払うすべての医療保険、例えば国民健康保険、中小企業の従業員が対象の政府管掌健康保険、大企業の従業員が対象の組合健康保険、その他公務員が対象の共済健康保険が大きな赤字に陥っていることであります。 市町村国保は年間3235億円、政管健保は3235億円、及び組合健保は1992億円の赤字を出している上、特に政管健保は平成14年度に積立金もなくなろうとしています。このままでは医療費が支払えなくなります。
この状態を放置しておけば、高齢化のピークを迎える2025年には、医療費は約81兆円に達することが確実視されています。そうなれば、国民皆保険制度は崩壊につながりかねません。「改革はまったなし」なのです。
●長持ちできる制度(持続可能な制度)へ改革推進
そこで公明党は責任与党として、少子高齢化が一層進展する10年、20年先を見据え、「安定し、長持ちする医療制度」にすべく、抜本的な改革案を主張してきました。その多くは、昨年11月29日に政府与党でまとめた「医療制度改革大綱」のなかに反映されたところです。
その幾つかを紹介します。
第一に「まず徹底した医療費の無駄使いをなくす」という点です。
医療保険財政の悪化を断ち切るためには、まず今の医療費がムダに使われている部分に「メス」を入れ、その無駄をなくす仕組みを作る必要があります。
例えば、
@医療の効率化を進め、病院でのカルテ・レセプト(診療報酬明細書)をIT化させ、ムダを省く。
A病気ごとに最新の科学的根拠に基づく標準的なな診療内容のデータベースを作って公開するとともに、患者の治療への参加を促進する。
B薬価については2002年度の引き下げを行う。
こうした主張が改革大綱の中に反映されました。
第二に必要なことは「関係者がお互いに責任と痛みを分担し合う」ということです。
医療制度を改革するためには、医療を供給する医療機関、医療費を支払う保険者団体、及び保険料や税金を納付する患者・国等の行政、それぞれの関係者が責任と痛みを分担する必要があります。けっして患者・国民だけがその負担を強いられるということがあってはならないと公明党は一貫してして主張してきました。
その結果、医療機関の収入源である「診療報酬の本体部分の引き下げ」(医師の技術料等)が決まりました。これまでの医療改革において、医療機関が本体部分の引き下げに合意した例はありません。
公明党出身の坂口大臣が医師会と必死に交渉し、2002年に薬価引き下げを含めて診療報酬の引き下げ(2.7%)を行うことで合意したのです。「診療報酬」はこれまで「聖域」でしたから、ここにメスが入ったことは画期的なことと言えます。
●高齢者の医療制度とその自己負担を適切なものに
医療制度改革においては、新たな高齢者医療制度を創設することが決まりましたが、それまでの間、老人保健制度の財源を支える各医療保険制度の負担を軽減するため、公費負担割合(現行3割)を引き上げることも明示されました。
また高齢者が急激な負担増にならないよう、老人保健制度の対象年齢を現行の70歳以上から75歳以上に引き上げることも5年間かけて段階的に行うことが決定しました。
また70歳から74歳の高齢者の負担こついては当初厚生労働省試案では「2割負担」とされていましたが、公明党は「年金生活に入って病院へ通う事も多いお年寄りに対して自己負担を倍にする」ことはどうしても認められない」と主張し、その結果、70歳から74歳の高齢者も75歳以上と同じく「1割負担」とすることで決着をみました。
参考までに豊橋市老人保健の実態は平成12年度において、70歳以上のお年寄りのうち延べ36,663人が医療機関で受診し、263億円余かかっています。一受診者平均年約72万円かかっていることになります。その負担額は下記の表の現行のところをみてください。
●サラリーマンの自己負担について
さてサラリーマンの自己負担を3割(現行2割)にするという問題ですが、医療保険財政と現在の景気・雇用情勢の双方の厳しさを配慮した結果、政府の「2003年導入」という方針を撤回させ、「必要な時に実施」と変更させました。また1ケ月当りの自己負担限度額については、適正な負担となるよう十分な配慮をしていくという事です。
この事については、1月12日の新聞報道で坂口厚生労働大臣は「1月下旬からの通常国会に提出予定の健康保険法改正案に盛り込まない事もありうる」との考えを表明している事もあり、流動的です。
●医療保険の一元化など抜本的な改革をめざす
今後の少子高齢社会を考えれば、将来も持統可能な医療制度とするための抜本的な改革が避けて通れません。
私たち公明党は、そのための方法として、従来から「医療保険制度の一元化」を主張してきました。その実現がどうしても必要です。そこで「医療制度改革大綱」のなかに「医療制度の一元化について具体的な検討を開始し、一定期間内に結論を得る」と明記させたのです。
そのための序奏として、公明党は、医療保険や雇用保険及び介護保険等の保険料徴収の一元化を主張し、今回の改革大綱の中に「具体化に向け早急に取り組む」と明記させたのです。
このような医療制度の危機的状況をご理解いただき、今回の医療制度改革案をご支持いただければ幸いです。
* 坂口大臣による塩川財務大臣との交渉による成果
《高齢者医療制度における自己負担限度額の見直し》
1)高齢者一般の医療制度における自己負担額の見直しは
外来 4万200円(厚生労働省原案)を12000円に縮小
2)高齢低所得者の自己負担限度額の見直しは
外来 厚生労働省原案をより引き下げ8000円に縮小
3)高齢低所得者の入院自己負担限度額の見直しは
現行通り据え置き、収入によって2万4600円と1万5000円の
二通りにつき、1万5000円の枠を厚生労働省原案の全高齢者
の10%(現行0.7%)から、さらに15%(現行10万人→20
0万人に)にまで拡大
(13.12.19の公明新聞から)
<<高齢者(70歳 以上)の自己争担限度額の見直し案>>
(平成14年 10月実施予定)
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現 行 |
改正案 |
現 行 |
改正案 |
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外 来
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外 来
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入 院
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入 院
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一般
(一定以上の高額所得者は別料金〉 |
3000円 診療所
5000円 大病晩
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12,000円 |
37,200円 |
40,200円
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低所得者
(住民税非課税)
福祉年金受給者
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3000円 診療所
5000円 大病院
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8,000円 |
24,600円
15,000円 |
24,600円
15,000円 |
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