伊藤ひであきの視察報告

● 茶畑の中の入間総合クリーンセンター ● 2000.05.18

 初夏の陽射しが茶畑の深い緑をいっそう引き出させる。埼玉の首都圏近郊都市ー入間市。
 遠く秩父山系を臨み、武蔵野の面影が残る、なだらかな起伏のある台地と丘陵が広がり、市域の約6分の1を占めるのが茶畑。いわゆる狭山茶は隣の狭山市でなく、この入間市が主産地である。2年前の暮れの所沢のダイオキシン騒動のとばっちりで一躍、脚光を浴びた狭山茶である。

 埼玉県が21世紀に残すべく風景を県民から募集したところ、そのトップに文句無しにこの緑の茶畑が選ばれたと言う入間市。(人口146,600人、面積44.7ku。市議会議員定数 28人。公明党5、共産党3、保守系無所属17、無所属2、欠員1。)

 その茶畑の中にデーンと構えるのが入間市総合クリーンセンターとリサイクルプラザ、そして、クリーンセンターの余熱を利用して温水プールや浴場、多目的ホールなどからなる社会保険健康センター「ペアーレ入間」と環境施設が配置されている。

 現在、豊橋市では、福岡県八女に次いで世界で2番目の高温燃焼溶融炉が建設中であり、回転キルン方式のその焼却炉は200トン炉2基であり、規模の面からいえば世界初のと言う事になる。併せてリサイクルプラザも建設中で、2年後の平成14年4月の稼働を目指している。また、我々が提唱した、世界に発信できる環境村構想が「エコビレッジ構想」として検討され、先行する形で余熱利用施設も具体的なプログラムに入っている。

 入間市の行政は、市制34年という浅い歴史といわゆる埼玉都民といわれる新住民から窺い知ることができる。例えば降り立った、西武池袋線の入間市駅。駅の周辺にあるのは高層マンションと銀行である。そして、クリーンセンターに向かう道路の両側にあるどこの町にもある住宅風景からも知ることができる

 「旧村、旧町と新住民との融和を最大のポイントにおいて、街づくりを行ってきました」と関係者はいう。そうした中で、循環型社会をどう作るか、新しい文化、福祉、環境行政をどう展開するか。それも規制するやり方でなく、市民の自主性を生かし、市民参加の行政展開で・・・。おもしろいというか、地方財政が逼迫する中でのユニークな、否、当然の智恵に感心する。

 だから、例えば「ごみ出しカレンダー」は45地区に12種類のパターンがあるが、これを豊橋では各小学校区毎に用意し、全戸配布する。所が入間市では統一の「ごみ出しカレンダー」。地域による収集の曜日などは自分で書き込むようになっている。「市民参加の行政ですから・・・」、これには納得。
 可燃ごみの中に粗大ゴミが出されて、収集車が置き去りにしていって、市民から連絡があっても、行政はすぐ動かない。出した覚えのある人がそのうち、家に戻すのを待つという。それも納得。「すぐやるばかりが行政ではないなー」と再度感心。

 粗大ゴミは有料、品目により手数料設定がしてあり、電話予約制で個別に収集。可燃ごみは週3日収集。かっては家庭用小型焼却機に補助金まで出していたが、その補助金を止め、粗大ゴミを有料にする時に、週3日収集にしたという。

 市民一人一日当たりのごみ量は962g(H10年度)、豊橋のそれは757g。1世帯当たりのごみ量は2.81kg、豊橋は2.19kg。この違いは何か。都会だからか。ごみ処理にかかる経費は市民一人当たり年間 14,597円。豊橋のそれは12,503円。収集業務を委託で行っているのに直営で行っている豊橋よりもコストがかかっているのはごみ量の差や週3日収集によるものか、平成8年の完成したクリーンセンターの建設改良費などの差か・・・、物差しが違うのか。いずれにしても「市民総ぐるみで100gゴミ減量運動」中である。

 こうして集められた可燃ごみ、不燃ごみ、古布・紙類、ビン・缶、粗大ゴミなどを総合処理するのが総合クリーンセンター。流動床式の焼却施設、粗大ごみ破砕機、缶・ビン処理施設がトータルで資源のリサイクルと減量化を進めている。

 そしてリサイクルプラザ。完成して1年。1万人の市民が来館し、ミニフリーマーケットや再生家具の抽選販売、再生自転車の抽選販売、マイバッグ推進運動、おもちゃ病院など毎月第2日曜日に開催している。元家具職人さんや、自転車技術者などが特技を発揮し、リサイクル商品化している。また、使用可能な古布でプラザおすすめマイバッグ作りの工房もあり、多くのボランティアの参加で成り立っているところが面白い。

 そして余熱は入間社会保険健康センター(ペアーレ入間)へ送られ、プールや浴場で有効利用されている。訪問した時には水泳教室が行われており、茶畑を望む広い浴場ではゆっくりお湯を楽しむ人達の姿があった。
 それだけではないトレーニングセンターでは少々太目の(失礼!)女性たちがエアロバイクを懸命に漕いでいたし、教室では英会話やモデルを前に絵画デッサンや太極拳など、余暇を有意義に過ごしている市民の姿があった。
 これを市のお金を使わずに、社会保険健康事業財団の施設として建設し、管理運営しているのは、さすがというべきか、これも智恵であり、政治である。

 入間市の創意・創出・創造の行政、それを可能たらしめる智恵・・。入間市環境基本計画は「人をつくる、場・機会を作る、人と人のつながりをつくる」とある。総合クリーンセンター一帯の仕組みはまさに、その具現化ゾーンではないか・・。そんな思いのする視察でした。

 視察にあたって、ご多忙な中、何かとご配慮いただいた、入間市環境経済部参事の吉田氏はじめ各セクションの皆様、議会事務局の須田主幹、吉川事務局長に厚く御礼申し上げます。


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