伊藤ひであきの市政報告

98年9月 廃棄物調査特別委員会での質疑から 98.09.04

 テレビ局が2台、市政記者総動員、傍聴者は50人を越えて、午後1時から、 豊橋市議会で注目の廃棄物処理調査特別委員会が行われた。

 冒頭、市長は「未来への責任を果たすのが、行政の責任であり、市長の責務である。安全運転、安定稼動に責任もって、環境政策の重要課題として不退転の決意で取り組んでいく。今回、ドイツフィルト市でシーメンス炉のガス漏れ事故があり、人的被害があった事は厳粛に受け止めている。今回の事故を貴重な教訓として、更なる安全対策を講じていく。また三井造船との間に新たな担保保証の上乗せを交渉し、その内容については9月14日に報告する」と発言。

 資料説明に入り、ガス漏れは残さ室(熱分解ドラムの次の工程)下部のゲート部に針金などが太いワイヤー状になって詰まった事により、通路を遮断、残さが溜まったとほぼ断定し、さらに三井炉はその部分の構造が違うので、事故は起きない」と図を使って説明し、安全性を強調した。

 午後5時の2回目の15分の休憩が終わって、私の質疑に入った。

1.「随意契約のメリットを生かす」「八女を上回る担保設定」と主張してこられた。「施設稼動期間中」という破格な覚書確認事項だということ。
しかし、それはa.災害が発生した場合であり、
       b.設計・生産上の欠陥があった場合に、
「その原因究明を行い、必要な対策を施して復旧を行う、あるいは必要な措置を講ずる」とある。しかし、このようなケースの場合はかなりの停止期間が予想される、この場合のごみ処理には大変な状況が予測されるし、費用は大変なことになる。それで、この場合のごみ処理の責任はどこが行うのか。5年以内であれば(3.装置停止時の対応)の覚書で三井の責任においてごみを処理するということだが、
5年目以降の稼動期間中の災害、あるいは欠陥があって設備が停止した場合のごみ処理責任はどちらにあるのか。明確にすべきでないかと質したら、
その答弁は「基本的に5年という期限を設定しているので、それ以上求めるのは基本的には無理だと考えている。しかし、その災害の状況・程度に応じて交渉していく用意はある。これは仮定想定の話なのでこの程度の答弁でご理解いただきたい」とのことだった。

 そもそも、かし担保の設定とは何か。かしがあった場合を仮定、想定しての責任の明確化でないのか。であるならば設計・生産上の欠陥があったから災害が発生したからメーカーの責任において復旧を行うのではないのか。であるならば、その結果もたらされるごみ処理についてはどうするかを明確にするのが担保でないのか、でなければ施設稼動期間中というのは有名無実にならないか担保内容を見直すという事だったので、三井との再度の担保交渉で、この問題を取り上げて、その結果を19日の予算委員会でその経過と結果を報告していただけるか。

2.性能保証事項の中に処理能力 200t/日*2炉 とある。年間稼働日数を性能保証に明示しなかったのはなぜか。と前回の特別委員会で聞いたら、答弁は「ごみ処理構造指針を遵守するとしてあり、計算で年間122,000トン、1日あたり400トン、したがって305日の稼働日数となるから記載する必要がない」ということであった。

 ならば、なぜわざわざ八女は年間稼働日数 330日と明記したのでしょうか。

 動き出す最初の年の平成14年度の計画焼却ゴミ量は129,000トン、保証期間が切れる平成19年度のそれは149,000トン、これを200トン炉2基と、平成3年から動いている3号炉の150トンも動くわけだから550トンで処理するとなると3基が234日稼動すれば処理できるという計算になる。余裕を持って処理できる計算が裏側にあるのでないか。八女には豊橋の3号炉のような施設はない。

 新しい焼却炉2基の稼動性能が市民からわかりにくい。これも再折衝項目に加えていただけるかどうか。

1.2をまとめての答弁要旨(助役):今日までこの事を詰めてきた経過もある が、三井と話し合い、報告させていただく

3.ドイツシーメンス炉と豊橋の三井炉の違いを一生懸命に説明されている。いずれにしても、正式な原因は究明されていない。正式な原因が究明されていない中で、一昨日の記者会見でも「三井炉は事故起きぬ」とうこと。起きないはずです。実際の機械は一つもない。

実機がない中でこのような判断ができる市長の確信はどこから来ているのか。

答弁要旨(市長):事故の原因が明確になってきており、三井炉は原因となった箇所は構造も違うし、二重三重の対策を施しているので、安全である事を確信している。
4.三井造船からの故障報告書にも明確に書いてあるが、推測での故障原因であり、それによるフィルトプラントと三井プラントの比較であり、資料の最後ではいつの間にやら「残さ室の閉塞とシール構造の問題という二つの原因で今回の故障が生じたが三井造船方式はいずれの原因も引き起こさぬ対策を講じている」と断言している。断言する根拠は何か

答弁要旨(環境事業部長):このシーメンスの事故調査は三井は勿論、ドイツの公的機関の立ち会いの下で行われたものであり、確率の高い故障原因が明確になった以上、このような報告ができると確信している。
5.事故調査報告書にもあるが
   ・検察庁と鑑定人によるコンポーネントのオープンと鑑定
   ・許可局を通じての将来の故障防止のための条件を出す。
   ・社外の鑑定人を含めた下での条件をKWUが充たす。
検察庁と鑑定人、許可局といった第三者による結論もこの通りだという結論が出るまで、本契約を待てないのか。ここまで原因が明確になっている以上、結論は早いのではないか。

答弁要旨(市長):確かにそのような見方もできるが、その報告がいつ出るかも解らない中で、そのような判断はできない。その裏には、この焼却炉のスケジュールがタイトな日程になっていて、余裕はないのだ。
6.「待てないのか」というにはシーメンス炉と三井炉は別物だ、三井炉原理は同じだが、改良が進み、既に別物になっている。共通なのは原理は同じだという事。すなわち、ごみをガス化して分解し、ガスと炭素に分解し、このガスと炭素の燃焼熱を利用して無機物を溶融してスラグ化を図ろうとする。それも回転キルン方式でという所は共通。一体、シーメンスの炉はどれだけ連続運転しているのか。三井の実証プラントはどれだけ連続運転しているのか。その上に今回の事故を知る時、この原理はシーメンスが15年の歳月をかけ、日本でも1970年代の廃棄物から熱分解ガスを獲得する事を目標に取り組まれた経過がある。長い年月の上に、この原理の実用化の取り組みが行われてきた上での初めての実機がフィルトであり、こうした稼動状況と今回の事故。やはりまだ完成の域には達していないのでないかと考える。認識を聞きたい。

答弁要旨(市長):確かに、長い研究の成果があっていよいよ実用化する段階に来ているが、厚生省の外郭団体である廃棄物研究財団による技術評価書、厚生省の指針外指針の認定、補助内示という動きから、一定 の確立された技術といえるのではないか。
    7.この「待てないのか」「立ち止まることはできないか」という問題について具体的に聞くが、国県の補助金との兼ね合いがあると思うが、そのことによって、もしも、補助金がおかしくなったら、責められるのは国のこうした硬直した補助金行政のあり方であり、市長も議会も、むしろ市民から評価されるのではないか。

答弁要旨(助役):確かに補助金についてはそのような考え方もできると思うが、私どもは様々な兼ね合いがあって国・県の補助金を詰めてきた経過があり、一時的にでも中断する理由はないという判断で事を進め ようとしているわけで、ご理解を賜わりたい。

 本会議と違って、調査特別委員会であり、質問回数は無制限であるので、角度を変えて、迫ったが、結局、当局は「かたくなに」スケジュールにしたがって進めようという意志に変化は見られなかった。

 「何のために担保の追加を行うのか、やはりこのごみ処理システムに不安が出てきたからではないのか」との質問にも、市長は「それは見解が違う、より安全稼動を市民に約束するためだ」という。「より安全の反対語は何か、より不安ということでないのか」とせまると「例えば、私は家内にどんなことがあっても別れない。別れる時は1億円払う、といっているが、1億円の金があるわけでなく、私たち夫婦は絶対、別れないという事を強調しているのだ」と市長夫婦の愛情論まででてくる。

 平行線は交わる事はなかった。


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