伊藤ひであきの地方からの提言

何故、介護保険を見直すのか 99.11.30

 来年四月からスタートする介護保険制度は多くの問題点を抱えています。今月初め、国民が安心し納得のいくサービスが受けられるように自自公の与党三党の見直し案が決まりました。それに対して「どうして今ごろ見直すのか」「選挙目当て」などと野党や一部マスコミが的外れの批判を続けています。

介護保険とは

 日本の人口は2005年をピークに、減少していきます。それとは逆に高齢者はどんどん増えて急速に高齢社会に突入します。こうした中で、介護保険は40歳以上の国民みんなでお金(保険料)を出し合い、介護を必要とするお年寄りを社会全体で手助けし支える制度です。
 来年4月に介護保険が始まると、必要に応じてホームヘルパーが家まで来て世話を手伝ったり、介護をしてくれる施設に入れます。本人や家族は、介護にかかった費用のうち1割を払います。
 介護が受けられる対象は、原則的に65歳以上のお年寄りです。
 介護サービスを希望する人は市町村に介護認定を申し込めば、面接調査などを行った上で、どのような介護が必要かが決まります。その判定によって、様々な介護サービスが受けられるという制度です。

いつこの制度は決まったのか

 自社さ政権時代の2年前の12月、公明などの反対を押しきって、成立しました。なぜ、公明などの野党は反対したかというと、介護サービス基盤の遅れから「保険あってサービスなし」が懸念されること、低所得者層の自己負担が重すぎることなどからでした。
 当時のマスコミもこぞって「欠陥法を見切り発車させた責任は思い。必要ならばスタート前でも法改正に取り組むべきだ」などと酷評していました。

的外れの一方的批判

 そして、2年が経過し、いよいよ来年4月からのスタートが迫ってきて、市町村の現場から円滑な実施のために制度の改善を求める要望が寄せられていました。豊橋市議会9月定例会でも「介護保険制度の円滑な実施を求める意見書」が全会一致で決議されました。
 こうした切実な声に対し、公明党が10月始めに政権に参加してから、ようやく見直し作業が始まりました。逆にいえば、自社さ政権が制度をつくる時点でやるべき議論をやっていなかったことが問題であり、「公明党のバラマキ福祉が始まった」などとの批判や、ましてや「保険料凍結は選挙目当て」との批判は全くの的外れであり、本末転倒しています。
 「この家は欠陥住宅です。それでも家賃は予定通りいただきます」という理屈が通るでしょうか。

なぜ介護保険料が高くなったか

 現在の介護保険制度が実施されれば、65歳以上の基準保険料は月額約2,800円になると試算されています。住民税を支払っている人はこの1.5倍すなわち4,200円になります。
 介護保険に必要な財源は約4兆円と言われ、その半分は老人保健施設や療養型病床群など医療保険の分野に使用されます。残りのさらに半分は特別養護老人ホームなど施設介護に利用され、目的の在宅介護に使用される額はわずかに1兆円強にすぎません。
 すなわち、介護保険料が高くなる最大の原因は、医療制度の改革を放置し、本来、医療保険で賄うべき分野に利用されるからです。また、特別養護老人ホームなど施設での介護は、保険よりも税で賄うべき分野です。
 この法律が目的とする在宅介護の部分のみを介護保険にすれば、保険料も2,800円の1/4となり、月額700円前後となります。

保険料を半年間凍結した理由

 @介護保険の円滑な実施のため、サービスを先行させ、この間に制度を大幅に見直し、適正な保険料にする。
 A介護サービス基盤を国民が納得できる体制にする。
 B現在の景気動向からみて、来年4月からの保険料徴収は、国内消費の低下を招く可能性がある。
家族介護にも支援する理由

 @公的介護保険も保険である以上、要介護の状態になれば、家族の有無にかかわらず何らかの支援を受ける権利が生じる。家族介護に努める家庭にも支援の選択肢を広げるペきである。
 A要介護度の認定は家族介護の有無や支援状況と関係なく、高齢者の要介護度にしたがって進められている。サービスも公的介護であれ、家族介護であれ、要介護者の必要度に応じて扱われるべきである。
 B公的介護サービスを受けるかどうかの判断は、本人、家族の心情や地域の風習、さらには家計との関係もある。さまざまな人間関係の中から、公的介護の受け入れか家庭介護中心か、の選択が行われるようにすべきである。

介護保険制度の今後をどうするか

 @平成12年4月1日からは現行法のまま、サービスからスタートすることとし、保険料徴収は半年間凍結する。(半年以降は1/2徴収になる見込み)
 A今後、保険料凍結期間を含め、約1年間の間、介護保険法見直しの期間として、与党三党で検討する。少なくとも、平成13年度(2001年度)から改正介護保険法で実施できるようにする。
 B与党3党は「介護問題検討チーム」をつくり、来年4月からの円滑な実施と制度見直しの議論をすすめる。

**介護保険の政府見直し案の骨子**

 @65歳以上は来年4月から半年間保険料を徴収せず、その後、1年間は半額。財源は国が負担。
 A40歳から64歳は負担増となる額を国が医療保険者に1年間財政支援。
 Bホームヘルプサービスの低所得者層の利用料を3年間、3%に軽減、その後、段階的に引き上げ。
 C家族介護で介護保険法と別に市町村が行う家族介護支援事業に国が助成。家族のヘルパー資格取得を応援。おむつなど介護用品の支給にも助成。
 D介護サービスを利用しない重度の要介護者を抱える低所得の家族らに上限年額10万円の「家族介護慰労金」を支給。

公明党の考え方

 政府案の低所得者層に対する軽減措置はまだ不十分。また家族介護についても要介護度4と5に限定されており納得しがたい。額においても年額10万円では少なすぎる。
 公明党は今後、1年以内に法律改正を行い、さらに安心でき、利用しやすい介護保険にすべく努力していきます。


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