伊藤ひであきの視察報告

●派遣団(4)自動車の都ーデトロイト● 99.10.2

●10月1日、2日
 G・M、フォード、クライスラーの三大自動車メーカーの拠点、デトロイト。輝かしい自動車産業の中心的役割を果たした都市である。それだけに都市全体に光と影を背負っている。自動車メーカーの分社化も進み、流通の整理・統合も進んでいる。ビッツバーグからの大量の石炭が1.6キロに及ぶ貨車で運び込まれ、鉄が精製され、栄華を誇った中心市街地はゴーストタウン化し、郊外に新しい開発が進み、アンパン(中心は黒人で周囲に生活レベルの高い白人が住む)現象を生じている。日本企業の進出は370社、6000家族。

<<自動車リサイクル>>
 そのデトロイト郊外の「シラヌオートパーツ」という中古部品会社を訪問した。
 ミシガンオートリサイクル協会や全米の協会の創設に中心的役割を果たした会社でもある。日本や豊橋の同種の会社に比べて整然と整備されているのが何よりも印象的。油漏れのような状態は1台もない。アメリカでは洪水や竜巻時の企業責任が問われるので当然だという。オイル、ガソリン、不凍液なども企業責任においてアメリカの環境基準にしたがって適切に処理している。フロン対策についても同様。タイヤの処理には頭を痛めている。

 解体でとった部品は整然と陳列、在庫されており、コンピュータで管理され、販売されている。ミシガン400社の販売ネットワーク構築は協会の目的でもある。事業規模は社員43人、売上高6億円、年に解体する車は600台。

 現在では85%はリサイクルできるが、再利用率を90%にあげたいという。事故車や水没車も扱うが長年の経験で的確に処理する。リサイクル業が企業として確立されており、この会社は65年の歴史で、社長は3代目。自動車リサイクルは日本よりは20年以上、進んでいるといっても過言ではない。

<<デトロイト交通局>>
 デトロイトには公営の駐車場が17ヶ所、18,000台の駐車能力を備えているがそれを管理しているのが駐車場管理局。駐車違反切符も切り、一般会計に入れている。財政規模は33億円、駐車違反収入は9億円。安全とスムーズな交通の流れを管理するための施策を展開している。

 安全・市民サービス・経済振興・健全な財政運営の柱をもとに世界第一級の都市を目指している。その施策の一つがパーク・アンド・ライドシステム。20年前にできた3,000台規模の駐車場が中心部から離れており、利用率をあげるために無料のシャトルバスを15分間隔で約5キロをカバーしている。

 特に3年前からは、市の中心部に車を乗り入れない施策が展開されていて、他の都市ではライトレール(市電など)を検討しているが、デトロイトはモーターシティメンタリティーが強く、なかなか思うようには行かないようだ。

 大型バス600台を保有し、1日約14万人を運ぶデトロイト交通局を訪問したときも車の都であるだけに公共交通機関に対する関心は高くないことが指摘されていたが、余りにもひどい交通渋滞や高齢社会に対応するため長距離高速バスや高速鉄道などが協議されていて複合交通手段(モーダルミックス)の計画も進んでいるが、財政面からも実現の可能性は低い。
 デトロイト市内にはモノレールが走っており、8,000人が利用し、13の駅にはそれぞれのアートが施されているのが特徴的。

<<デトロイト港湾管理局>>
 ヘンリーフォード二世の発案で設置された港湾局。穀物や石炭、鉄鉱石など国内貨物だけでも2200万トンを扱っている。港の扱い高は440億円。業界のニーズと環境と国の政策とのバランスを取って運営している。  鉄道貨物会社と運送会社が結託して低い価格設定で海上輸送に対抗してきた歴史もあり、時には軍事輸送の一翼をになったときもある。今では持続性のあるものを中心に扱っている。
 カナダにも近く五大湖周辺には自然が残り、200年前のインディアンの遺跡も多くクルージングのニーズも高く世界的観光産業として軌道に乗せたいとしている。

<<ヘンリーフォード博物館・グリーンビレッジ>>
 ヘンリフォード博物館はとてつもないスケールのエキサイティングな博物館でFORD帝国を思わせる。とにかく交通、産業、生活をはじめアメリカの歴史代弁する博物館である。広さは48,600平方メートルに及ぶ。  隣接するグリーンビレッジは日本で言う明治村のようなコンセプトで、このスケールの大きさにも圧倒される。特にフォードが愛した普通の市民の生活が見事にまで再現されている。ビレッジというだけあって、その当時の農機具で収穫作業も行われている。
 アメリカが生んだ20世紀の偉人、エヂソン、ライト兄弟、そしてフォードの生家や工場などもそっくり移設され、かつ偉大なる足跡をたどることができる。
 普通のアメリカ人の柔軟性、創造力、開拓者魂の歴史が蘇ってくる。

 10月1日夜、トリード市と豊橋の交流の窓口となって尽力いただいているデトロイト日本国総領事の天木夫婦の招待で公邸にお邪魔し、楽しい一時を過ごした。真摯な天木夫婦と格別の日本料理のディナー。リフレッシュできた最高のときでもあった。


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