伊藤ひであきの視察報告

● 帯広・千歳 交流と技術への挑戦 ● 99.07.09

 7月8日、行政視察4日目、釧路から帯広市へ。十勝平野の中心都市、国内最大の日照時間と十勝川の扇状地帯が我が国屈指の大規模畑作・酪農地帯を形成している。農家1戸当たりのの耕地面積は23ha(豊橋は1ha)、農業祖生産額は250億円(豊橋は570億円)。
 行政は活発な市民活動を助長する手だてとして「市長への手紙」「市長と語る会」など活発であり、公文書公開制度も昭和62年度(豊橋は平成8年)から実施している。文字どおり「緑広がる北のフロンティア都市−おびひろ」(都市像)である。

 この帯広市の郊外に400haに及ぶ「帯広の森」があり、各種運動施設も整備されているが、特徴的なのは「創造の森」。この森に包まれるように「森の交流館・十勝」と「帯広国際センター」がある。

 日本政府は、開発途上国の経済社会開発や福祉の向上を支援するために「政府開発援助」(ODA)を行っており、その2国間贈与のうちの技術協力を行っているのが国際協力事業団(JICA)であり、そのための施設が「帯広国際センター」。開発途上国の国造りの中核となる技術者や行政官などに技術習得の機会を与え、研修員の受け入れを実施している。
 特に帯広では中近東、アフリカ、及びアジア、中南米から研修員が訪れており、農業改良や土木技術、農畜産技術などの分野の研修が行われている。「国際センター」のレストランは市民にも開放されていて研修員と市民とのコミュニケーションを深める場としても提供されている。

 そして、その「国際センター」に隣接し、市民と海外からの研修員や留学生がスポーツなどで触れ合う「国際交流施設」が「森の交流館・十勝」。この交流館の中心に緑と光のあふれたウィンターガーデンがあり、交流サロンとして音楽会やファッションショーなど国際色豊に行われるという。

 「国際センター」のレストランで館長の三浦博士(元帯広畜産大学教授)を囲んで懇談が続いた。世界591カ国のうちの8割は発展途上国。日本だと国民一人当たりの年間所得は446万円なのに発展途上国のそれは102万円から8万円という現実。研修員の食べ物も宗教などの問題もありなかなか難しい。ここで研修を受けた人達が母国へ帰ってどのように実践に生かしているかをフォローするために、担当教員が現地へ出向きフォローしている・・・等、静かにそして若々しく話す三浦館長。国際貢献への使命感とそれを支える帯広市民のバックアップ体制が頼もしく感じられた。

 7月9日。視察の最後は千歳市。いうまでもなく国内線の乗降客数では国内2番目の新千歳空港を擁し、その周辺に広がる千歳臨空工業団地と流通業務団地を核とし昭和39年の新産都市の指定を受け、2百社以上の企業誘致に成功した千歳市が21世紀に向け、新たに取り組んでいるのがホトニクスバレー構想。

 ホトニクスバレーとは米国シリコンバレーの光テクノロジー版としてネーミングしており、光科学技術の研究開発拠点を形成し、21世紀を牽引する新産業の創出を図ろうとするプロジェクト。今までの企業誘致や地場産業振興の取り組みにおいて、従来のシステムでは構造的な問題があり限界が見られる事から、中央の景況に引きずられない地域経済構造への転換を図ろうと独自の振興策に位置づけている所がおもしろいというか独創的。淡々と話す千歳市科学技術プロジェクト本部の渡辺科学技術振興課長の表情が輝く、目がいい。

 また、その産業政策の柱として大学機能を捉え、千歳市は大学立地を目指す。そして事業費98億円と27haをそっくり学校法人に寄付して、公設民営の千歳科学技術大学が昨春、開学している。光科学技術を核とした先端科学技術分野の学問体系の構築にキーマンを演じたのが慶応大学の佐々木敬介教授であり、初代学長。理学と工学の領域を融合させた独創的な教育カリキュラムである。また千歳市もさることながら、民間の寄付金も12億円よ集まったことからも如何に産業界の期待が大きかったたかも示している。

 もうひとつ、特徴的なのはPWC(ホトニクスワールド・コンソーシアム)という産学官共同研究システムの推進組識。人材育成から始まり基礎研究、応用研究、開発と成果を連動させ、インキュベート、事業化、市場化へと段階的に展開を進めて、社会の実用化に結実させるとともに、そこから得た対価を再び大学や研究者に還元させ、更なる研究活動に充てて、新たな研究成果の創出をめざすというフィードバック・ループのメカニズム。擁するに研究開発の設備投資は莫大にかかる。レーザー光線勝者装置など何億とかかる。学生も含めて500台からのパソコンだけでも時代に合ったものに絶えず代替していくには億単位で金がかかる。それで研究者には大いに稼いでもらって、その何%かは大学に入れてもらって設備投資をしていくのだという。こうした中で、すでに昨年、波長が世界一短いレーザー光線を照射できる画期的な装置の開発に成功したという。またサケの白子からコンピュータに使う新素材を取り出そうという試みも科学技術庁が年間約1億円の事業費が投じられる地域先導研究として進んでいるという。

 21世紀がエレクトロニクスから光テクノロジーに移行する世紀になる事は火を見るより明らか。現在では5兆円規模の光技術市場は10年後には15兆円規模になるという。

臨空の街−千歳ははばたくか!


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