伊藤ひであきの視察報告

● 課題山積 オリンピックの長野と議会運営 ● 99.07.28

  7月27日、28日と議会運営委員会の行政視察で長野市へ

 昨年の長野冬期オリンピックは記憶に新しい。人口36万人の中都市が長野県・JOCが主体であったとしても、あれだけの国際イベントをやりきったのである。

 その長野市、四方を信州の山並みに囲まれ、市域は404k平方メートルと広く、市街化区域は14%である。また言うまでもなく、推古天皇の時代に始まったといわれる善光寺信仰の門前町でもある。年間1500万人の観光客が訪れる。今年、4月からは我が豊橋と同じく中核市に移行し、文字どおり長野の県都、地方中核都市で ある。明治30年の市制施行でその100周年イベントが、冬季オリンピックでもあった訳で、このエポックを目指して急速に高速道や新幹線が開通し、次世代公共インフラが整備された。

 この長野市の議会は構成は新友会(自民系)25人、社会・市民クラブ(社会・民社系)5人、共産党5人、公明党4人、真成会3人、欠員2人の計42人。今年9月に市議選を控えていて定数2人減らして、42人に減員する。

 議会運営で特徴的なのは、4常任委員会(総務・福祉環境・経済文教・建設企業)を同時開催し、なお所管事項の政策課題への質疑が自由に行われているということである。議案審議が中心の豊橋市議会の委員会運営よりは多分、緊張感ある委員会審議が行われている事になる。

 また、工場・大学・病院対策特別委員会や観光振興対策特別委員会、中核市対策特別委員会、市街地整備対策特別委員会と4つの特別委員会も長野の置かれていて政治的特性を反映している。

 3月、12月定例会の代表質問は質問時間を1人45分以内とし、個人質問はそれぞれ総時間を15時間、10時間として会派所属議員数に応じて配分しているなど、会派構成人員によってメリハリをつけている。ただこの会派については明確な定義はなく、代表質問は5人以上の構成員数で区切っているが、議会運営委員会の 委員は構成員2人以上の会派から選出している。

 補正予算は所管の常任委員会に付託し、豊橋のようにその度ごとに予算特別委員会を構成することはない。

 調査研究費は1人年額、105万円(豊橋は70万円)、また会議出席費用弁償は居住地と議会との距離で3,000円、3,500円と区別し支給(豊橋はなし)、議員歳費は619,000円(豊橋は58,600円)と県庁所在地ならではの待遇でもある。

 この長野市、民生費は20,4%、土木費は22%と豊橋の23,8%、20,5%とは逆転している。豊橋以上に公共工事主体の地域経済である。この土木費、オリンピック前は40から45%をしめ、結果として公債費比率は16,6%と黄信号であり、財政力指数0.857が示す財政基盤の中で、オリンピックを機に膨らんだ借金をいかに 返しながら、地域活性化に挑んでいくかが今後、問われていくことになる。

 オリンピックで注目を集めたスケートリンク会場エムウェーブは、現在は市と建設会社、製氷メーカーの三社出資の第三セクターで運営しているが、維持管理費への市の持ち出しは年1,2億円を計上しており、入場料800円でオリンピック記録メディアの上映などに資しているが、経営の目処は遠い。世界各国からのマス コミ関係の居住地となったメディア村は現在、県営団地と県職員住宅となっているが空き家のほうが多い。など、オリンピック以後の都市経営は景気低迷の中で課題は多い。

 一方、長野は長寿日本一であり、元気なお年寄りが多いのが特徴。それだけに介護保険料を納めるだけの人が圧倒的に多いことになることから、生きがい対策に力を入れている。また郵政省の「自治体ネットワーク施設整備事業」により地域情報化の中核施設として整備された長野市フルネットセンターが開館1周年を 迎え、マルチメディア化への取り組みも着々である。

 教育と福祉に先進的に取り組んできた長野県の県都として、中核市長野が有形無形のオリンピック財産を生かして、どうジャンプしていくか。長野市議会がオリンピックで示した長野市民のボランティア意識を集約し、そのリーダーシップを図っていくか。


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