伊藤ひであきの地方からの提言

地方分権と財源改革−包括補助金制度を 99.07.20

 現在 国と地方の税収の割合は、およそ2:1。しかし、実際の国と地方の仕事の割合は1:2と逆転しています。そして、地方が2の仕事をするためには、地方交付税や補助金というかたちで、国が地方におカネを与える仕組みになっているのです。

 中央省庁は財源配分の権限を握ることで、地方に自分に都合のよい事業をさせたり、政策誘導ができるので、この権限を手放そうとはしていません。一方、地方はこの交付税と補助金の獲得のために東京に向かって奔走し、そこに費やしている費用と工数は膨大なものがあります。その上、補助金は裏負担がついて回り、地方債が膨大に膨らんでいます。この地方交付税と補助金の改革こそ、地方の財源改革の2本柱です。

 地方交付税を交付されていない自治体は、約3300の自治体のうちわずか120団体、5%にも達しません。(都道府県レベルでは東京都だけが不交付団体。政令指定都市であっても不交付団体はゼロになってしまいました。)

 住民が多額の国税、地方税を納めている自治体でさえ、地方税の収入だけではやっていけないのが、現在の地方財政の姿です。そして、このこと自体、現行の地方財源のあり方がゆがんでいることを雄弁に物語っています。

<<参考 平成11年度当初予算>>

所得税

15.685兆円

租税の34%

法人税

10.428兆円

   22%

相続税

1.948兆円

   4%

消費税

10.376兆円

   22%

酒 税

1.981兆円

   4%

地方交付税交付金

12.8831兆円

15.7%

 私は税収の割合が当面1:1になるように地方へ税源を移し、自治体の自主財源の拡大を提案します。その具体策として、所得税の納税者全員にかかっている比例部分(最低税率である10%)、約10兆円を地方に移したらどうでしょうか。これによって国対地方の割合はほぼ対等になります。何よりも国と地方の税収の取り分が変わるだけで、納税者の負担も変わりません。

 また現行の地方交付制度は算定方法が複雑で、国の裁量が働きやすくなっています。そこで、算定方法の簡素化、透明化を図り、地方の意見が反映される仕組みをつくって、国の裁量を小さくするようにしなければなりません。

 現在多くの公共事業と補助金制度がほねがらみで結びついています。そして公共事業の施設の基準などについてほとんど国が決定していたり、どこに何をつくるかといういわゆる「箇所づけ」などにも国が関与しています。

 結果として地方が望むものよりも、国が補助金などで推進する社会資本が優先されることになりがちです。そのため特色ある事業や、本当に必要とされる事業が行われることなく、地域住民の不満の高まりと財政支出の浪費がますます進行していくことになります。

 今回の市議選を通じて、たくさんの市民の皆さんと対話できました。その中で「あの国道一号線のエレベータ付きの歩道橋は一体どれだけの人が利用しているのか、あれだけの投資が本当に必要だったのか」
「前田町交差点のあの歩道橋は一体誰が認めたのか。ましてやあのタワーに夜になれば、豊橋駅からピンスポットで光を照射するなどともったいない事を誰が提案したのか」
などのご意見に悪戦苦闘して答えた苦い経験があります。

 6月市議会定例議会で図られた補正予算は1,773百万円、国県支出金は900百万円、地方債は501百万円、一般財源は370百万円という構成です。
 その中で、公園整備事業費が計上されていますが、豊橋総合スポーツ公園用地に市民の森づくりのための造成・舗装工事が国庫補助事業で計上されています。これは国の「平成の森作り事業」の事業採択によるものだという事です。また岩屋緑地公園の遊戯施設・便所等に100百万円計上されています。国の「環境に優しい公園整備事業」の創設により急きょこの公園をエコパークとして整備する事になったというのが提案理由です。

 果たして、豊橋総合スポーツ公園用地での市民の森作りが、岩屋緑地のエコパーク公園整備が豊橋市基本計画にあったかというと、全く計上されていなかった計画です。国が推進する補助金事業がすべてに優先されている事を物語っています。この事業による市民福祉向上への効果は一定期待できるにしても、こうして行われていく公共事業からどれだけの個性ある街づくりに資する事ができるのか疑問です。

 地方において、どのような公共事業が本当に必要なのかは、その地方の住民が一番よく知っているはず。創意工夫を活かした特色ある事業を行うためにも、国が行う直轄事業を減らしていくとともに、地方主体の事業の割合を増やしていかなければならないと思います。

 従来の補助金制度を改革して、人口数を基準に配分し、自治体が自由に使える「包括補助金制度」の導入を提案します。これによりそれぞれの自治体が、自主的・主体的に事業計画を決定することができるようになります。また同時に無駄な補助金の節約にもなるはずです。地方分権はここから始まると考えます。


ホームページに戻る 政策メニュー