伊藤ひであきの地方からの提言

「容器包装リサイクル法」に異議あり 2000.10.26

循環型社会への道遠し

 時代が世紀末の様相を見せ、新世紀が音を立てて近づいてくる。既存の社会システムが制度疲弊どころ音を立てて崩れ、新たなる座標軸を求めさまよっている。その新たなる座標軸のキーワードの一つが「循環型社会」である。ところが、循環型社会を目指したはずの例えば「容器包装リサイクル法」は豊橋の現場ではどうなっているのか。地方政治の現場から問題提起したい。

●収集されたプラスチックごみは何処へ行っているのか。

 今春から「容器包装リサイクル法」が全面施行されました。それに先行して我が豊橋では昨年7月からプラスチックごみの収集を始めました。
 毎週水曜日、市内3800ヶ所のごみステェーションから収集しています。(収集形態は市直営で、清掃業務に従事している職員は180人。ごみ収集に要する費用は3.8億円)
 このことにより、昭和55年からの、36万都市としては画期的な5分別の歴史が、新たな6分別の時代に入りました。

 そして、収集するプラスチックごみの今年度の予定は年間7000t。収集されたプラスチックごみは東部環境センターへ運ばれ、高度分別し、機械で圧縮します。この業務はシルバー人材センターに委託しています。
 圧縮されたプラスチックのうち500tは広島県福山市の新日鉄に引き取ってもらい鉱炉の還元剤に使われます。引き取り費用は豊橋市が負担しています。t当り6300円。500tで300万円。もしも、全部、引き取ってもらったら4400万円。

 新日鉄福山工場ではプラスチックがリサイクルされています。まさに循環型社会への動きです。
 しかし、残りの約9割のプラスチックごみはどこへいくのでしょう。市の埋立処分場に送られ、残念ながら埋め立てられています。
 もちろん、圧縮された上での埋立ですから当然、処分場の延命策には貢献していますし、燃えるごみとして焼却されませんから、対ダイオキシンの削減にも大きく貢献していますが。

●収集すればするほど税金が使われる。

 この制度は市民の皆さんに協力願って、豊橋市が集めれば集めるほどリサイクルしようとすればするほど費用負担が増えるのです。その費用は市民の税金が使われているのです。
 かつ、それだけのコストをかけて収集したプラスチックごみは真にリサイクルされているのは1割にも満たないのです。9割以上が埋め立てられているのです。
 プラスチック業界やそれを使う関係業界が負担し合ってのプラスチックのリサイクル施設の建設が遅れているからです。また、建設計画があっても、食品残さなどの関係で住民の反対などでなかなか進まないからです。

 また全国にある鉄鋼メーカーの鉱炉の1割が還元剤としプラスチックを受け入れるような仕組みになれば、国内のプラスチックはすべて収容できる計算ですが、それも対応できていません。
 現行の「容器リサイクル法」は大量生産・大量消費・大量廃棄をそのままに、税金を使って「大量リサイクル」を義務づけるだけの欠陥制度である。プラスチック類のリサイクルに取り組む自治体が全国で15%なのはこのためです。
 厚生省が見込んだ今年のプラスチックの回収量は230,897t、今年の4月から6月の実績を年間に換算すると65,000t、28%である。
 <以下、10月1日付朝日新聞より引用>プラスチックごみは自治体の最大の悩みの種のはずだが、最も種類も多いだけに、「市民に混乱が出る」(広島市)「自治体の負担が大きすぎる」(川崎市)「容器はかさばる回収車で空気を運んでいるようなもの。金がかかって仕方ない」(大阪市)などの理由で二の足を踏む。 <引用終わり>

 今年、5月に成立した循環型社会推進基本法は、製品が廃棄された後まで生産者が責任を負う「拡大生産者責任」をうたっている。ごみ処理ではまず「発生抑制」次いで「再利用」「リサイクル」と優先順位を明確にした。「容器リサイクル法」はその理念に従って事業者の負担を増やし、ごみとなる物の生産を抑える方向に導く手直しが必要だ。

 発生抑制を最重視した仕組みに作り変えなければ、日本の循環型社会への道は遠い。

参考 「政令指定都市の容器包装の分別回収状況」
(9月末現在、10月1日付朝日新聞より)
都市紙製プラスチック
札幌市×
仙台市一部で実施予定今年中に実験実施
千葉市××
横浜市××
川崎市××
名古屋市
京都市×実験中
大阪市××
神戸市××
広島市××
北九州市××
福岡市××

****「容器包装リサイクル法}****
 1995年に制定され、今年4月、完全施行された。容量で一般廃棄物の約6割を占める紙製、プラスチック製の容器や包装を「資源」として再生利用する事を狙い、市町村が集めた「資源」をリサイクルする義務を、容器や包装を製造したり利用したりする企業に課した。だが、そのほとんどが自社ではリサイクルできないために、日本容器リサイクル協会に委託料を払って代行してもらう。


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