地方政治クリエイト 14/09豊橋市議会傍聴記

来春の戦いに挑む覚悟を示せ

■介護保険制度

 斎藤啓氏(共産)は介護保険制度が、例えば「要支援1、2」の人たちへの訪問介護と通所介護が介護保険の個別給付から、市町村が実施する地域支援事業に移行するなどから、従来通りのサービスが受けられるのかと問題提起した。

 福祉部長は「ニーズに応じた多種多様な介護サービスを受けることができ、大きな影響はない」とした。

 現在のまま、社会保障費が増え続けると消費税は20%でも足りないという高齢社会をどう乗り越えるのか。そのために限りある財源を有効活用し、重度のお年寄りに振り向ける一方、軽度のお年寄りへのサービスや経済力に応じてメリハリをつける必要性は避けられないのでないのだろうか。

■失格判断基準

 寺本泰之氏(紘基会)は今回も工事に伴う委託に失格判断基準を導入した理由や市職員の退職後の再就職先民間企業の公開について迫った。財務部長や総務部長は従来の答弁を繰り返した。

 今回も議論は平行線のまま。寺本氏は一般質問で取り上げ、情報公開請求し、異議申し立てをし、それでも叶わぬ時は、行政訴訟も辞さないという手法の繰り返し。こうして二期目の任期を終えるのだろうか。

■学校週5日制

 尾崎雅輝氏(自民)は教育問題、特に10年を経過した学校週5日制の諸課題について取り上げた。
 尾崎氏は学力低下論争の中で土曜授業が実施されたりしているが、地域にある教育力を利用して仕事を引退した人や、企業人に講師をお願いして土曜授業を広げていったらどうかと提案した。

 教育長は子どもたちの有意義な活動や学びが実現できる環境整備に努めているとして、「今後も地域社会との連携を図り、多種多様な体験と学びの場を提供して、子どもたちの豊かな自己実現を支援していきたい」とした。

■災害時の水確保

大規模災害時の生活用水の確保や災害に対する水の確保について質問したのは市原享吾氏(豊隆会)。
 8月に発表した市の巨大地震の被害予測でも断水率99%、発災後7日後においても断水率61%と未曽有の被害が発生すると想定されており、注目された質問だった。

 市原氏は施行されたばかりの「雨水利用推進法」についても言及したが、雨水を活用すれば、水資源の有効利用につながるだけでなく、洪水の抑止や渇水時の水確保、水道料金の節約など多くの効果が期待できる。その具体的施策の展開について議論を深めていただきたかった。

■現状と課題

 尾林伸治氏(公明)は消費者トラブルとアルコール健康被害について質問した。
 第一問から行政側に「現状と課題について」を質問して議論を始めるのはいかがなものか。
 自ら現状を分析し、そこから浮き彫りになる課題について行政側に質(ただ)していくのが一般質問ではないのか。何よりも行政側は都合の悪い課題など明らかにするはずがない。行政側の土俵で議論が始まれば、中身のない議論に終始することは明白。制限時間60分の6割、36分も残して降壇したことを猛省していただきたい。

一般質問は足と汗でやるものだ。

■来年度予算

 佐藤多一氏(自民)は景気雇用対策など民間需要を誘発する施策の取り組みについて来年度予算編成に向けた諸課題について質問した。

 原材料価格の高騰や、人出不足、人材の減少などで景気回復の実感など地方には及んでいないどころか、地方経済は深刻な状況にあるだけに時宜を得た質問だった。

 企画部長は「国が地方創生本部を創設して、地方や中小企業を重点に大きく踏み出したこの機に、新たな施策を推進していく」と答えたが、「具体的にはそれはどのような政策か」と突っ込んでいただきたかった。

■息吹と覚悟

 宮澤佐知子氏(公明)は東京オリンピックでの「ホストシティ・タウン」構想について質問した。
 宮澤氏は「豊橋には、手筒花火があり、市電があり、総合動植物園がある・・」と東京オリンピックの合宿地誘致の優位性を羅列していたが、合宿地誘致の必要条件は何かをどう考えているのだろうか。

 9月議会直前、公明会派の5人の議員の来春の市議選での公認が発表された。それだけに3人の一般質問に注目したが、その息吹と覚悟は、伝わってこなかった。

 他の会派はそれなりの立場の議員が、予算編成、人口減少、介護保険、子育て新制度など地方政治の喫緊の課題に真正面から議論している中で、取り組みが甘くないか。

(愛大地域政策学センター研究員)


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