地方政治クリエイト 14/09新城市議会傍聴記

産廃と新庁舎問題が議会に緊張感

■まちづくり

 地方都市のコンパクトシティ化の中で、市街化区域内よりも調整区域内人口の方が多い特異な都市構造で大きな核を持たない新城市はどのようなまちづくりを目指すのかと質問したのは打桐厚史氏。

 議論は情報通信ネットワークを利用して、テレビ電話による相談とか自治体クラウドによるICT利活用に発展したが、高齢社会の中で、情報を必要とする人が情報リテラシーの側にある現実に言及してほしかった。

■生活排水

 丸山隆弘氏は生活排水処理基本計画に関して、下水道・農業集落排水の集合処理方式や合併処理浄化槽の個別処理方式には費用や負担に格差があることを問題視した。
単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への転換が遅れていて生活排水処理率がなかなか進んでいない現状が議論された。

 丸山氏は合併処理浄化槽への積極的な推進が格差是正につながるとして、その対応を迫ったが、取組の難しさだけが際立った。久しぶりに聞いた生活排水議論は新鮮だった。

■避難所の開設

 台風等の豪雨の際の避難所の開設や避難勧告の発令や市民への告知方法について問題提起したのは下江洋行氏。

 下江氏は、過去の災害事例から特に、夜間休日などの学校、子ども園などでの避難所開設の問題などに言及したが、災害時に父親が家庭にいるとは限らない。乳幼児を連れて、まして深夜にとなると時間もかかるし、危険も伴う。さらに避難所には乳児用の食べ物はあるのかどうか。男性の目線からでは気がつかないこれらの課題についても議論して欲しかった。

■新人投手粘投

 浅尾洋平氏は産廃廃棄物処理施設、新庁舎建設問題について反対の立場から質問した。

 産廃問題では区長による反対のビラを見合わせるよう示唆した事、区長や県議、市議が公費で視察に行ったことなどを厳しく迫った。
 「東三河、愛知県随一の産廃処理場にしたい」などとの産廃業者の発言や、新庁舎の市民試案(3階建て・総額30億円)などを盾に食い下がった。歯切れ良い、よく整理された質問だった。

■農協改革

 農業の成長産業化を目指して、国において農協改革が議論されていることから、質問を展開したのは山口洋一氏。
 「農協の創成期から今日まで、本市の農業にどのような成果を上げてきたか」と質問して、地域の農業を守る役割を果たしてきた農協の成果を示した。

 1948年の発足から66年を経過した農協が次の時代に向けて、自らの改革こそ迫られているのではないだろうか。

■環境保全

 中西宏彰氏は「今、私たちに問われているのは、環境汚染を未然に防止するために、何ができるのかが大事である」として産廃処理施設の拡大や進出の防止対策などを主張した。

 新城市議会でこの問題を傍聴している時に、不思議に思うのは一部の議員が「産廃処理施設は環境汚染の元凶である」と決めつけての議論がなされていることである。
 「開発か環境か」が議論される時に「開発も環境も」の考えで、共存共有できる方途を見出していくことこそ議論の場ではないだろうか。産廃処理もまた人間の営みで不可欠なのだから。

■再生可能エネルギー

 再生可能エネルギーを普及させるための取り組みなどについて質(ただ)したのは滝川健司氏。

 地産地消の再生可能エネルギーの普及が地域の雇用創出など、地域経済の活性化に繋げる議論の展開が欲しかった。
   全国では住民参加型の再生可能エネルギー発電の成功事例もあり、情報収集、政策立案に取り組んでほしい。


 新城市議会では産廃処理施設の進出、新庁舎の二大論点を柱に活発な議論がなされており、それに臨む議員諸氏の研鑽の汗がうかがい知れる。更に勉強を。

(愛大地域政策学センター研究員)


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