地方政治クリエイト 正念場の東三河ミクス(下)

「界を越えられるか」

■微妙な広域連合

 もともと地域間競争が激しくなる中で、東三河が生き残るには、8市町村が別々に取り組むよりも、行政区域にとらわれずに、地域の力を結集することが不可欠となり、広域連合の方向に動き出してきた。

 しかし、8市町村間で温度差があり、当初の予定では、今年の3月議会で広域連合規約や関連予算を議決し、県知事の認可を経て、14年度後半にも発足させる予定が、微妙になってきている。それだけに、今年の「新春懇談会」が注目されたが、あえて、肝心な論点をはずした会合となった。

■農業を軸に連携

 豊橋市長は東三河の連携の在り方を農業を切り口に熱く語った。豊橋の香港駐在職員、田原のシンガポール派遣職員が連携して、農業マーケットを香港を拠点に中国へ、シンガポールを拠点にアジアへ広げていきたい。

 その生産のために北設の農業地帯と連携すれば、年中、新鮮な農産物を提供できるようになる。また北設のペレットボイラーは温室の微妙な温度調整が可能であり、その灰も農地に還元できる。様々に連携することにより農業の付加価値は一兆円に達すると夢は膨らむ。

 田原市長はアンテナショップを東京に開設すべきだ。そのためにも豊橋の首都ゾーン活動センターを活用していきたいとした。そして三河港を農産物輸出基地にするために東三河全体で取り組むべきだと呼びかけた。

■道路整備こそ連携促進

 「地域の一体的な発展のためには道路がつながることが肝要」と豊川市長。そのためにも国道23号バイパスの西への進捗を急ぐことにより、豊橋、豊川、蒲郡の行き来をスムーズにする必要がある。

 また、豊川インターから前芝インターまでの自動車専用道も急務とした。伊藤会長も三遠南信道の開通により、茶臼山やとうえい温泉の利用者が増加している。新東名などの東西軸に比べ、「国道151号などの南北軸の強化が遅れている」と指摘した。

■広域観光で連携

 新城市長は新東名新城IC近くに作る道の駅は奥三河の観光ハブステーションとし、南北軸の大きな支点としていくとした。

 蒲郡市長は「広域観光は東三河に限るのでなく、西三河にまで広げた取り組みが大事ではないか。この一年“みかわdeオンパク”に取り組み展開してきた。岡崎の徳川家康を中心とした戦国時代の武将を巡るような取り組みがあってもいいのでないか。

■大局に立って

 豊川市長は突然に「八重の桜」から八重の兄、山本覚馬の話を始めた。江戸時代末期の会津藩士で砲術家であった山本覚馬は藩内の保守派からの批判禁足処分など賊軍扱いされ、幽閉中に「山本覚馬建白〈通称「菅見」〉が認められ、京都府顧問として迎えられ、府政に貢献し、同志社大学の開学に尽力し、その用地も提供した。

その生涯から「自分のところだけでなく全体を見据えて東三河の発展に尽くすべきだ」と主張した。西三河との関係などで、広域連合に態度を決めかねている蒲郡市をけん制したものであることは明らか。

■島国から世界へ

 「今、大事なことは『島国国家日本』から『世界国家日本』へと変革する大胆な政策推進だと思います。この時に東三河は一層の連携を深めて新しい日本の代表的なローカルを創造しよう」懇談会の冒頭、主催者である神野信郎東三河懇話会会長は矍鑠(かくしゃく)として訴える。

 「東三河は一つ」一筋50年。産学官交流サロン30年。「界を越えて」を発表して20年。この執念にも似た熱き情熱に応えることができるか。

 北設で花祭りがにぎわい、新城で高速道が縦横に走り、豊川で若者がタスキをつなぎ、甲子園に乗り込み、蒲郡でヨットが波を切り、豊橋で鈴木明子が氷上に舞い、田原でライアン小川が躍動する。この時に8市町村が束になって、界を越えられるか。その成否に東三河ミクスはかかっている。


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