地方政治クリエイト 13/12田原市議会傍聴記(下)

任期はあと一年、実りある議論を

■国県道の雑草

 眞木正五氏(田原新生会)は特に国道県道の雑草が、沿道空間を乱し、景観を損なわせるだけでなく、歩道としての機能を大きく害し、時には生命にもかかわる事故につながるとして、自ら渥美半島を回って撮影した現場写真を掲げながら問題提起し、市費を投入してでも市民協働で雑草対策ができないかと食い下がった。

 これには市長も答弁に立ち「市民は県民であり、国民である。国・県・市の役割分担でそれぞれの責任を果たすことが大事だ」と答えた。

■墓苑整備

 田原市内には寺社管理や区など公共管理の墓があるが、臨海部の工業地帯で働くために移住してきた人たちが増えてきていることから、公共の墓地需要について取り上げたのは平松昭徳氏(田原新生会)。

 田原市ではこの8年間に人口は千人減少しているが、世帯数は千八百世帯増えているとして、世帯構造も多様化してきている中で、宗派や住居地にこだわらない公共の墓苑需要は増してくるとして、具体的な検討を要請した。

■水産業振興

 小川貴夫氏(田原新生会)は県内の17%の漁獲高を誇る田原市の水産業の現状と課題、特にその柱であるアサリの漁獲量が減少していることから水産業の振興について質問した。

 小川氏は「獲る漁業」から「育てる漁業」への転換策や、担い手育成のための若手漁業者との意見交換などを論じ、水産物ブランド化への取り組みを強調した。当局は「県の水産試験場と連携し貝類や海藻などの新たな水産資源を発掘していきたい」としたが、答弁の声は弱かった。

■小中学校再編

 彦坂久伸氏(田原新生会)は市教育委員会が11月18日に「和地・伊良湖・堀切の3小学校の統合」を決めたことに関連して、「新設校も現在の0歳児からみれば、近い将来に小規模校になり兼ねない」と懸念を示したうえで「教育“田原丸”の航図を示すこと―すなわち小中学校再編のグランドデザインを示すべきだ」と迫った。

 教育長は「学校改革は大作業であり、田原市の苦い歴史に学んで、行政からの押し付けはだめだと肝に銘じて、住民の中に入り、話し合い、市内全体の住民の意向や実情が明らかになってきました。来年度中には全体配置案を示したい」とした。

 長い教員生活の経験のある彦坂氏と豊富な経歴の嶋津教育長の議論は、田原の子どもたちへの熱い思いと責任感に満ちていた。

■TPPと漁業

 杉浦文平氏(無所属)はTPPの政府間交渉が進む中で農業はもちろん、県下有数の出荷高を誇る漁業への影響とその対策について聞いた。

 「水産物にかかる関税が既に低いことなどその影響が少ないのではないか」との認識を示したが、杉浦氏は「漁業に対する補助金の原則廃止の動きもあり、国の動きを注視すべし」として、県との連携を密にして、国に対して事業の継続を働きかけるよう要請した。

■イベント事業

 掉尾を飾った北野谷一樹氏(田原新生会)は市民協働の観点から、各種イベントを集約・複合化し、事業の有効性や効率性を高めるべきではないかと問題提起した。

 イベントの集約化やすでに目的を果たしたものなどの分類を自ら試みる現状分析から、具体的に切り込まないと現状をなぞるだけの質問で課題が明らかになってこない。PDCAによるイベントマネージメントという言葉が軽くなってしまったのは残念だった。


田原市議会議員の任期満了は、再来年の一月である。年が明けると、あと一年となり、カウントダウンが始まる。その中で、議会が任期の総仕上げの一年であることを期待したい。


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