地方政治クリエイト 13/12新城市議会傍聴記(上)

多彩な論客が多彩な議論を展開

 師走も半ばにさしかかり、あわただしい中で、新城市議会一般質問が12、13日と夕方まで目一杯の議論が行われた。
 11月の選挙でわずか911票差で再選された3期目の市長と新しく当選してきた新人7人、返り咲いた4年前の市長選候補者、そして10人の再選議員のうち15人が登壇し、選挙戦の争点が再選後初の議会にそのまま持ち込まれての熱い議論が続いた。

■記者の目

 地方紙記者生活35年の経験から、記者席からグランドに立った山崎祐一氏がトップバッターで登壇した。
 「現職が負けていてもおかしくなかった選挙戦だったが、徳俵に残って寄り切った」―市長選を総括した山崎氏は、現庁舎がなぜ旧南設楽郡新城町役場にできたのか、またバイパス沿いに官庁街を作ろうとした試みがなぜ頓挫したのかの温故知新から現在地に立て直すを良とした。

 また、7つに分かれている現状は非効率で、そのロスは年間5千万円にも及ぶとし、速やかに建設に向かうべきだと主張するなどの洞察力と説得力は新城に「新しい風」を予感させた。

■市民自治

 二番バッターで登壇したのは白井倫啓(みちひろ)氏。
   白井氏は「合併して8年、新城は何も変わらない」、「庁舎を作って元気になったまちはあるのか」と切り込んだ。そして、「合併特例債に飛びついて、庁舎建設を進めている。大事なのは、新城にとってどのような庁舎が必要なのかということであり、このような進め方のどこに、“市民自治”があるのか」と持論を展開した。
 市長は「二元代表制の市長と議員が選挙で選ばれたことこそ市民自治である」と反論した。

 穂積市政を議員として4年、そして、市長選に出て、野に下って4年、「田舎の新城の魅力をどう生かすのか」と再び議会に論客が戻ってきた。

■若者の初陣

 もう一人議会に37歳の若者が登場した浅尾洋平氏である。

 「今、市政に求められているのは、市民の暮らしと命を守ることであり、50億円という多額の費用をかけて新しい庁舎をいま作るべきでない」と率直な質問を展開した。特に新庁舎のランニングコストを公表すべきだと迫った。論理明瞭な歯切れの良い初陣だった。

■もっくる新城

 山口洋一氏は道の駅「もっくる新城」が産直の物販に取り組むのなら、何をどのように売っていくのかという地域の連携や情報が大切である。開業まで残された15ヶ月の間に農産物や畜産物を用意する、特に「ジビエ料理」や「移動販売車」の運用には戦略が肝要であるとJAで44年働いた経験から問題提起した。
 新人とは思えない地に足の着いた説得力ある議論だった。

■駅前広場

 長田共永氏は三期目のマニフェストに掲げた項目の中から「新城駅前整備及び栄町線延伸について」質問した。
 長田氏は「中心市街地の活性化なくして、新城の発展はない」と主張し続けてきたが、駅前広場と栄町線そして新城駅のバリアフリーの3点セットで取り組むべきだと強調した。

■人口減少時代

 加藤芳夫氏は庁舎建設について40ヶ所に及ぶ説明会などを繰り返したにもかかわらず、手厳しい結果が出たことを、どう受け止めるか、人口減少の流れの中で過大でないのか」と質した。
 市長は「情報を伝えることの難しさを痛感しながら、よりきめ細かな説明会をやっていく。その上で、市民のご意見に丁寧に耳を傾け、特に議会との議論を大事にしていく。また、日本全体が人口減少時代に突入している中で、流失を防ぎ、山間地の移住の受け皿にもなって人口5万人を維持し、その拠点として決して過大ではない」とした。

■新庁舎の中身

 鈴木達雄氏は基本設計に基づく概算事業費を庁舎の基本機能を満たすために絶対に必要な費用と判断次第では調整可能な費用とに分けるとどのようになるのか、絶対に必要な部分の面積と判断次第で調整可能な部分の面積にわけるとどうなるかなど、新庁舎建設の中身について聞いた。
 当局は「新しい取り組みには賛否両論があるが、全て必要な機能であるが、次の基本計画段階で精査していく」とした。

 真摯な質問と丁寧な答弁こそ大事だと痛感した。


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