地方政治クリエイト 浜岡原発視察記(下)

1500億円かけて津波対策着々

■中部電力唯一の原子力発電所

 午後からの視察は、いよいよ浜岡原子力発電所。遠州灘に面した恵まれた自然環境の中に同発電所はある。敷地面積160万u(約50万坪)で、名古屋ドーム36個分の広さである。

 この発電所で原子力発電の運転が開始されたのは1976年(昭和51年)春のこと。以来、中部電力唯一の原子力発電所として、全面停止前の10年では同社の電力供給の2割程度を占めてきた。

 1号機、2号機はすでに役割を終えて、廃止処置中。3号機は定期検査のため停止中であったが、2年前の国からの運転停止要請を受けて4号機、5号機と共に運転停止中。

■世界一安全な発電所

 「この時から世界一安全な発電所を目指そうと会社を挙げて津波対策、安全対策に取り組んでいます」と説明員。

 福島の原発事故では、津波によって「海水取水ポンプと非常用ディーゼル発電機などの安全上重要な設備が浸水し、原子炉を冷やす機能を失って、炉が過熱。原子炉が損傷した上に、漏れ出した水素が爆発した。
 そのために全国の原発で津波対策工事が行われているが浜岡原発の徹底ぶりは際立つ。

■圧倒される巨大防波壁

 敷地内への浸水を防ぐ、敷地内が浸水したとしても建屋内への浸水を防ぐ、さらに福島第一と同様の事態が起きたとしても「冷やす機能」を確保するという3つの柱からなる津波対策工事を進めている。津波対策だけで1500億円の工事費をかけている。

 浜岡原発は、自然の地形を生かした砂丘の堤防があるが、その後ろに海抜22b、幅約2bの巨大な防波壁を、総延長1.6kmに渡って建設している。実際にそのそばに立ってみると圧倒される巨大さである。

■再稼働を確信して

 いただいた資料によれば、今夏の電力各社の需給見通しでは中部電力は最大需要2,585万kwに対し供給力は2,817万kw、予備力は232万kwで予備率9.0%だという。これは中国電力、北海道電力に次いで高率。

 一方、同社の12年度決算では個別で353億円の赤字、13年度見通しでは900億円の赤字見通し。火力発電の燃料費増加によるコスト増が大きな要因。

 「これだけの大工事は再稼働を確信しての取組みですか」と質問すると説明員は「勿論そうです」ときっぱり。目は輝いていた。


 原発には様々な意見がある。しかし、どの立場の人も電力の安定供給を望んでいること。そして、今なお福島原発の事故で避難されている人は16万人以上、日々苦しんでいる方はその何倍かであるということ。

 この二つだけはまぎれもない事実である。(写真上の浜岡原発全景と津波防波壁の写真は浜岡原発のホームページより転載)


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