地方政治クリエイト 12月定例豊橋市議会傍聴記(下)

「質問者も答弁者も原稿の棒読みでは」

■ゾウの群れ飼育

 市長選挙でも大きな論点となったアジアゾウの群れ飼育について、寺本泰之氏(紘基会)が「財政運営が厳しい中で、市民の血税をアジアゾウの群れ飼育に使うことには賛成できない」と激しく食い下がった。

 特に6月議会で寺本氏が「市民アンケート」を要請したが、10月初めにアンケートを実施し、9割の回答者が賛成したとする当局に、議会でも「市民に丁寧に説明をする」と答弁しながら、費用を提示して市民に意見を求めた札幌市の円山動物園の手法と比べて、「丁寧にごまかしている」と迫った。

 「6月議会傍聴記」で寺本議員の一般質問に「拙(つたな)さ」を指摘したが、それに対して「反論」も掲載されたが、あれから半年、格段に進歩した質問の組み立てがなされていた。

 市民は「一人は欲しいオンブズマン議員」として二期連続で市議会に議席を与えたのだから、その期待に応えるためにも研鑽を重ね、主張を議論に変える技術と人格を磨いて欲しい。

■教員の勤務実態

 斎藤啓氏(共産)は教員の超過勤務と多忙化解消の取り組みについて質した。

 教育長は「時間外労働が月100時間を越える教員の比率は14%近くあり、事務処理の簡素化、会議の縮減などに取り組んでいるが、バケツの中の水をスプーンすくうようなものである」とした。今後、試験的に時間外労働の制限を設けて、その中で職務が円滑に進む研究をしたいという。

 斎藤氏は「人間的成長を担う教師の、家族との交流、読書、地域活動への参加などの経験が教師の深みが増し教育の深みにつながるのでないか」と歯切れが良かった。

■百万人プロジェクト

 近藤喜典氏(新政未来)は総合動植物公園の100万人プロジェクトに向けた今後の展開を聞いた。

 フードコートのような屋内型広場に、雑貨グッズなどの出店や飲食コーナー、ポイントカードなどでの集客増と地域還元などを提案した。
 豊橋総合動植物園が大きくなるのと共に成長してきた世代としての質問としたが、若い感性でゾウの群れ飼育をどう考えているのか、論じていただきたかった。市民が最も注目しているテーマを外した議論は残念だった。

■カード盗難事件

 平成22年11月に消防本部で発生したキャッシュカード盗難事件の発生から2年がたち、事件の進捗がみられないことから堀田伸一氏(豊流会)が「なぜ告訴せず被害届だけなのか、今後も告訴しないのか」と取り上げた。
 捜査は継続しており、警察とは互いに連絡を取り合っている。被害届が捜査機関に受理された時点で操作が開始され、現在もその操作は継続されていて、告訴は必要ないとした。

   被害届と告訴の法的解釈だけの質問だったのだろうか。

■水道水源

 市原享吾氏(豊流会)は水道水源の安定確保策、特に水源涵養林について聞いた。
 上下水道局長は水源涵養林は「豊川の源である段戸山には県内最大規模の浦谷原生林が広がっており、その保全に1d1円の水源林負担金をあて、保全に寄与している」と答えた。

 市原市は小鷹野浄水場近くに住んでいることから、しばしば水道の問題を取り上げるが、「水の市原」めざし、研鑽してほしい。

■TPP

 牧野英敏氏(共産)は、佐原市政二期目の市政運営について質問した。  その中で、特に衆議院選の争点になっているTPP交渉参加に対する市長の認識と、一次産業に対する影響について聞いた。

 市長は「なし崩し的に例外なき貿易自由化に進むことは大きな問題であり、多くの国民の理解を得たうえで判断すべきである。 どのような方向に向かおうとも、豊橋の農業を夢のある産業に育てて、新農業を確立していく」とした。

 そのためのグローバル経済に翻弄されない強い農業戦略と実践は待ったなしであり、その具体化が問われます。

 


 豊橋市議会は議会改革の一環で「議会だより」に会派、登壇者名と顔写真を載せ、内容も登壇者が責任編集することになったという。やっとである。 これを機に活発な議会を期待したい。
 何よりも二問目以降はテッパでできないものであろうか。質問者も答弁者も原稿の棒読みではおもしろくも、おかしくもない。


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