地方政治クリエイト 9月定例豊橋市議会傍聴記(下)

「現場の視点で、具体的議論を!」

■地域防災活動

 山田静雄氏(新政未来)は発災時の共助の核である地域自主防災活動について取り上げ、地域の実情に応じた津波避難訓練や避難所開設訓練の重要性を強調した。
 そして、三百人を超える防災リーダーが地域において積極的に活動できるために、地域住民との顔の見える関係づくりが重要であることを訴えた。

 今夏に自ら防災リーダー講習会に参加した経験を踏まえ、地域での体制作りに取り組む作業から問題点を提示していけば、もっと具体的な議論になったのでなかろうか。「災害は現場で起きている」「災害対策は実務」を基本にして、現場の視点で、しかも具体論での議論が大切だと思います。

■豊橋公園

 松崎正尚氏(新政未来)は豊橋のシンボルでもある豊橋公園の施設配置のあり方や管理体制について質問した。
 豊橋公園は自然景観や歴史遺産などの風格を兼ね備え、文化教養施設やスポーツ施設が共存していることから豊橋公園の将来像と、それに調和したスポーツゾーンとしてのビジョンの必要性を強調した。
 また浜松市や、岡崎市などの大型公園の管理体制を引き合いに出しながら総合管理事務所による一元管理を提案した。

 議論が総花的になったが、松崎氏自身が豊橋公園に何を期待し、何を求めるのかに焦点を当てての組み立てが必要でなかっただろうか。

■郷土の教育・継承

 豊橋の郷土・歴史・文化を継承し得る郷土教育が豊橋市を担う人材の育成につながることを強調して、豊橋の教育目標である「学校を核とした地域ぐるみの教育システム」の重要さを取り上げたのは星野隆輝氏(まちフォーラム)。
 教育長は「校長の裁量権の拡大、各学校の特色ある学校づくり、地域教育ボランティア制度などにより、その地域ならではの教育を展開する姿が見られるようになった」とした。

 近年、「社会のための教育」から「教育のための社会」へというパラダイムの転換が叫ばれて久しい。教育の手段視が人間の手段視に直結し、20世紀の様々な悲惨な歴史を生み出してきたという歴史的反省からである。

 「地域ぐるみの教育システム」がその豊橋版になることを期待したい。

■孤独死対策

 孤独死問題を取り上げたのは牧野英敏氏(共産)。対策として「高齢者安心生活サポート事業、給食サービス給付事業、緊急通報装置設置事業などを実施しているほか、地域包括支援センターによる家庭訪問や民生委員及び老人クラブによる見守り活動を展開している」と福祉部長。
 そのような支援の手が届かない所で孤独死がおきているから社会問題化しているのです。

 最近では、老老介護の家庭や障害者を抱える世帯など、社会とのつながりを失った家族が共倒れするケースも増えてきています。また、高齢者の中に、支援を望まず、自ら孤立する人々も少なくない現実もあります。こうした「個人化社会」で課題は多いはずです。それだけに再質問をせずに終えたのは残念です。

■穂の国とよはし芸術劇場

 宮澤佐知子氏(公明)は6月に成立した「劇場、音楽堂などの活性化に関する法律」を追い風にした「穂の国とよはし芸術劇場」の運営についてただした。
 「自主的な実演芸術の公演や企画・実施することや、啓発普及活動、人材の育成を行うこと」が法律の主旨であり、これは同劇場の理念に合致したものであり、「劇場法」に沿った事業展開を行っていくことを確認した。

 自主公演に積極的に取り組んでいる新潟市の「新潟市民芸術文化会館」や、地域の枠を超えて実演芸術団体と連携を図っている岐阜県の「可児市文化創造センター」など地方都市の意欲的な取り組みに学び、「未来を創る夢事業」(佐原市長)に「失敗は許されない覚悟」(宮澤氏)で取り組んでいただきたい。


 三日間の議会は、市長の政策発表の場になっていたのではないだろうか。議会の主役は議員であり、市長の掲げる政策に様々な角度から切り込んでこそ二元代表制なのではないだろうか。


ホームページに戻る 直言メニュー