地方政治クリエイト 9月定例豊橋市議会傍聴記(中)

「風化させるな浜名湖事故!」

■浜名湖ボート事故

 渡辺則子氏(とよはし市民会議)が事故から丸二年が経過し、両親は今年5月には学校を管理する豊橋市などを相手取り、損害賠償を求める民事訴訟を起こし係争中でもある事件を取り上げた。

 教育長は「司法の場で係争中であり、本市の見解等の公表は司法の判断を待って対応したい」としながらも、亡くなった西野花菜さんへの思いを「未来のある、尊い命を12歳という若さで停めてしまったことは痛恨の極みであります」と切々と答えた。

 教育長自ら愛息を亡くされている原体験からか、その言葉には心打つものがあった。あの痛ましい事故を風化させることなく、大切な命を預かっているという強い責任感で教育活動に生かしてこそ、花菜さんの、そしてご両親への思いに誠実に応える唯一の道なのだとの感を強くした。

■いじめ問題

 斎藤啓氏(共産)は滋賀県大津市のいじめ問題の顛末から、豊橋市の現状と対応についてただした。
 「いじめ問題への対応には教師の教育的敏感さを磨く必要があり、学校をあげての組織的対応が不可欠である」との考えを示し、「豊橋市においては生活サポート主任を中心に生活サポート委員会で早期対応のできる体制を整えている」とした。

 しかし、「人は集団の中で生活する以上、トラブルや摩擦は当然起こり得るもので、その延長線上にいじめがあるとすれば、いじめはどの学校・学級にも起こり得るもの」との認識を示したように、大津の事件を他山の石として、「いじめはいじめる側が100%悪い」と毅然として立ち向かい、人間教育に不断の努力をお願いしたい。

■文化行政

 渡辺誠氏(新政未来)は穂の国芸術劇場「プラット」やアイプラザ豊橋が来春春にオープンすることからその文化戦略を取り上げた。

既存の施設に加え「プラット」や「アイプラザ豊橋」などで幅広い専門的役割や機能を発揮するために文化振興財団に事業企画の専門家や舞台監督などを採用し、専門的ノウハウを兼ね備えた体制を整え、優れた芸術が提供でき、鑑賞できる環境づくりが進んでいることを印象付けた。

 しかし、劇場や音楽ホールなどの施設(300席以上)は、全国で約1900施設あり、その設置者は9割以上が地方自治体であり、施設の稼働率は、全国平均で約6割。また施設の使い道は全体的に自主公演よりも、貸館公演が中心なのが実情である。
 40億円の建設費をかける「プラット」の完成に合わせ、地方都市が文化の力で地域や人を育む社会づくりにまで視点を広げた「文化振興戦略」が重要ではないのか、問題提起が欲しかった。

■避難勧告情報

 今年6月に台風4号が豊橋市を直撃した時に12万人を超える豊橋市民に避難勧告が発令された経過から、市の災害対応の問題点を指摘したのは中村竜彦氏(豊流会)。

 梅田川の水位上昇による避難勧告の対象地域に自ら住む芦原校区全体が指定されたことから、仮に梅田川が氾濫した場合、実際に被害を受けるのは校区の一部の低地部分であり、まして指定避難所の校区市民館は梅田川沿いにあるという矛盾を指摘した。

 当局は、避難勧告は町別に対応する事、また指定避難所の適正度を検討することを約した。
 身近な事例から、全体の制度を変えていく地方議会らしい論の展開は明解だった。

■自治会・老人クラブ

 市原享吾氏(豊流会)は自治会と老人クラブのあり方について取り上げた。その背景に時代の変化の中で自治会加入率や老人クラブ会員数の減少があり、併せて地域コミュニティの希薄化という問題がある。
 長い歴史の中で培われた革袋でいかにして新しい酒を盛るのかという問題提起である。

 総代会から自治会となり6年以上が経過している。行政と密接な関係にある自治会再生への取り組みは、豊橋のまちづくりそのものであるという真剣さが問われているのではないだろうか。それは高齢化社会と老人クラブとの関係においても同様である。


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