地方政治クリエイト 9月定例豊橋市議会傍聴記(上)

「市長選を前に、活発な議論を」

 地方自治は二元代表制といわれ、住民は首長と議員という二つの住民代表を直接選ぶことができる。
 2ヶ月後に市長選を迎える豊橋市。市民が我がまちの明日を考え、我がまちの自治を考える絶好の機会である。その機運を議会が提供できるかどうか、大切な9月議会である。

■総括及び展望

 伊藤篤哉氏(豊流会)と杉浦正和氏(新政未来)が佐原市政一期を総括し、二期目に向けて重点的に取り組む政策について取り上げた。

 伊藤氏は首都圏プロモーション活動や、中心市街地の魅力づくり、総合動植物公園の魅力発信、市民病院の果たすべき役割など幅広い施策について質問した。
 一般質問は市の行政課題に対して「質していく」作業であるがゆえに、住民代表としての議員個人の、また会派としての切り口が大切なのではなかろうか。そこは市長の政策発表の場ではないはずです。市長与党派であればこそ、質さなければならない課題は多いはずです。

 杉浦氏は産業政策について取り上げた。リスク分散のために名豊道路周辺の内陸地での産業用地のニーズが高まっており、しかしそこは豊橋の農業の要となっている優良農地であり、この二つの課題について迫った。 答弁の双方の連携する手法や、組み合わせてのウィン・ウィンの関係などについて具体的な議論が欲しかった。
 また「健康長寿産業」を政策の柱として産業拠点の形成を目指すことが明らかになったことは収穫であった。

■入札制度改革

 廣田勉氏(まちフォーラム)は公契約、特にそのほとんどが人件費で占める業務委託について、「より良いものをより安く」という取り組みが「より安く」に重点が置かれ、そのつけが労働者の賃金に繋がっていることを指摘した。
 そして、最低制限価格の範囲拡大や予定価格の引き上げを提案し、「公契約条例制定」を迫った。
 市長は市民の利益にもつながるとして、「基本条例の制定に向け前向きに検討を進めたい」とした。

 続いて登壇した寺本泰之氏(紘基会)は「最低制限価格をなくし、低入札価格調査制度を導入すべきだ」と主張し、同制度の評価を二分する議論で興味深かった。

 全国で相次ぐ談合事件を受けて進められてきた入札制度改革。二転、三転する制度改革の結果、建設業界の疲弊感は高まり、さらには地域の機動力の低下をも招いている現実についても言及してほしかった。

■ゾウの群れ飼育

 寺本泰之氏(紘基会)は市が総合動植物公園で計画するアジアゾウの群れ飼育について取り上げた。 急速な高齢化社会の進展や、南海トラフに対する防災対策などで財政負担が増大する中で、この事業が妥当なのかについて論じた。
 特にアメリカの社会生物学のエドワード・ウィルソン博士の「種の保存を守るために最も大切な事は生息地を支援すること」という言葉を引用し、「大型野生動物は大自然で自由に生息させる」ことこそ重要であると市長に迫った。
 折角、そこまで組み立てたのだから、佐原市長の「ゾウ飼育は都市間競争に勝ち抜く最高のコンテンツとなる」という考え方に挑んでいただきたかった。

 市長選に、立候補を予定しているもう一人の候補はこの事業を「ムダ遣い」としているだけに、議論がなかったのは残念だった。

■災害時の夜間照明

 堀田伸一氏(豊流会)は災害時の夜間照明の確保策について取り上げた。第一次、第二次指定避難所は来年度中に発電機、投光器が配備されること、広域避難場所、防災拠点公園などにおいても計画的な配備がなされる事が明らかになった。
 夜間照明ということになれば蓄電システムの活用が不可欠であり、各小中学校の太陽光発電システムなどとの連携についても明確にした。

 また、競輪選手としての経験から自転車利用環境についても取り上げたが、発災時の自転車利用についても取り上げていただきたい課題である。


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