地方政治クリエイト

12月定例豊橋市議会傍聴記(上)

 大震災から8ヶ月。被災地は師走を迎え、厳冬の季節に入っていきます。そこへ大震災関連倒産がかぶさってきています。また歯止めがかからない円高の長期化は大きな暗雲となって、地方に広がっています。
 また長引く福島原発の事故は地方に、特に見えざる放射線量で深刻さを拡大しています。TPP(環太平洋連携協定)問題も地方にとってどうなのかという視点が欠けているように思います。税と社会保障論議も、地域福祉ビジョン抜きでは考えられません。

 地方が、そして地域住民が生き生きとしていられれば、日本の未来は開けてくるはずです。そのためにも住民に最も近い地方議会が問われています。

■新人議員の農業促進策

 12月議会のトップバッターとして登壇した近藤喜典議員(新政未来)。花き産業の振興策について取り上げた。花き需要低迷の中で新しい需要を創出するためにも、花に親しみ育てる「花育」の観点から戦略的な取り組みを訴えた。特に「造形パラダイス」からヒントを得て「花パラダイス」の提案はユニークであり、花き産業振興の具体化として2021年の花博誘致につなげてほしいと力説。

 環境保全型農業や植物工場など新農業を取り上げた向坂秀之議員(豊流会)は商工業の優れた技術・ノウハウを農業へ展開する農商工融合プログラムの取組みを通じて高生産性、高競争性など高付加価値を創出する豊橋の農業の展望を語った。一般的には10アール当たり約20トンの収量を、工場では倍以上の50トンにすることを目指しているだけに注目のプロジェクトである。

 TPPに参加すれば国内の農業の基盤が揺らぐといわれる中で、「攻める一次産業」で地域活性化の可能性にしようとする、一期生議員の真摯な農業議論は頼もしい限りである。

■津波対策、放射能対策

 松崎正尚議員(新政未来)は津波対策を取り上げた。指定ビルの一つとなる津田小学校での避難訓練で、小学生と津田保育園児が校舎3階へ逃げる訓練を行ったが、満員で住民までは収容できなかったことを明かした。三河湾沿岸の四校区(牟口・吉田方・前芝・杉山)では「エスケープヒル(津波避難用高台)や避難タワーを設けるべきだ」と要請した。
 福島第一原発事故により広がった放射能が、豊橋地域に与える影響については、斎藤啓議員(共産党)が取り上げた。国・県による放射性核種の測定、市独自での水道の浄水やろ過砂、下水処理水と汚泥などの測定でいずれも異常は出ていないことを確認した。市当局は今後の取り組みとして、放射線など環境モニタリングポストを1カ所、水や食品の放射能を測定するゲルマニウム半導体検出器1台を設置し、監視体制の強化を図ることを明らかにした。
 国交省中部整備局は「五連動地震」を巨大地震のモデルの想定とすることを明らかにしている。津波対策と放射能対策という市民の生活に深くかかわることを真正面から論議することは地方議会の責任である。

■文化財保護と耐震対策

 小原昌子議員(豊流会)は文化財保護と継承策について質問した。市当局は県指定史跡 「馬越長火塚古墳」 (豊橋市石巻本町馬越地区) が 国指定史跡となる可能性が強まったこと、同古墳一帯を公園として施設整備に積極的に取り組むことを明言した。
 また、同議員は教育施設の耐震強化が一定なされたのを受けて、文化財の耐震・防火対策を迫った。東北の被災地では数々の文化施設や文化財が被災したこともあって、人々は文化・芸術に親しむ機会を奪われている実態があり、インフラ復旧や生活再建の支援の継続は当然として、もうひとつ心の癒しとなる文化面での支援の拡充が要請されているだけに地震対策に大切な側面を指摘した意義は大きい。

■シティプロモーション戦略

 伊藤篤哉議員(豊流会)はシティプロモーションの最終目標とそのための戦略と戦術を取り上げた。しかし、平成21年12月の「豊橋市シティプロモーション戦略ビジョン」、平成22年11月のその推進計画「ええじゃないか豊橋推進計画」等が策定される段階での質疑の繰り返しをなぞっているような感がしてならなかった。
 それとは逆に、首都圏活動センター開設以来一年八ヶ月の成果を踏まえて「それでもなお、東京に拠点を置いての活動としては、努力不足でないか」と迫ったのは田中敏一議員(豊流会)。ベテラン議員の重みのある問題提起だった。

 また、同議員は市当局が「路上喫煙防止とポイ捨て禁止」についていわゆる「ポイ捨て禁止条例」の制定を準備していることに触れ、「市民協働」の醸成がなされないままの動きを批判したが、そのような条例がないことこそ「530運動発祥の地」としてのシティプロモーションではないだろうか。大いに疑問が残るところ。


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