地方政治クリエイト

9月定例豊橋市議会傍聴記A

■市立養護学校が具体化

 九月議会で特筆されるのは長年の課題であった市立養護学校について、旧野依小学校跡地に平成27年4月の開校の方針が明確になったことである。この答弁を引き出したのは岡本泰議員(まちフォーラム)。  県立豊川養護学校の劣悪なマンモス状態の解消について、豊橋市議会に最初の陳情がなされたのは平成15年9月議会であった。そして平成20年九月議会で初めて一般質問で議論された。取り上げたのは同じく岡本泰議員。

 そしてこの問題が大きく動いたのは昨年6月。豊橋市に知的障害養護学校の設置を求める要望書が三万人を超える署名とともに、愛知県並びに豊橋市へ提出をされたことが転機となった。こうした動きに呼応して佐原市長の政治的決断で市立養護学校として具体化に向けて動き出した。  知的障害児を持つ家族の方々の真剣な思いが広がり、その思いを受け止めて奔走した一人の議員の汗と涙の軌跡は議会と行政のあるべき姿として深く刻み込まれるべきである。

 また予定地の地元である前田浩伸議員(豊流会)は敷地が狭隘であるなど、課題が多いことも指摘した上で、「私は今でも県立豊橋養護学校として整備されるべきと考えている」と述べていたが、「あえて市立として決断した決断」を市長に質問していただきたかった。この問題に政治がどう動き、展開したのかを市民が理解できる格好のテーマであったはずである。

■手数料着服問題に議論沸騰

 中村竜彦議員(豊流会)は手数料着服問題について「市が告訴しないのは検察の手前で不起訴判断するようなもので、刑法犯は原則、告訴するなど厳しい基準を定めて明確にすべきでないか」と迫った。当局は、「職員の非違行為は発生する事案によって様々であり、基準でもって決定することは非常に困難」とした。

 鈴木義則議員(公明)は職員の相次ぐ不祥事にコンプライアンス(法令順守)の立場から職員の意識改革と職場風紀の改善に努めるべきだと主張し、「内部通報制度」や「CSR(社会的責任)」の取組みを取り上げた。

 寺本泰之議員(紘基会)はオンブズマン議員として、「刑法犯に関する公務員の告発義務を記した刑事訴訟法第239条を引いて刑事告発すべきだ」と迫った。告訴しない理由を4点にわたって答えた堀内副市長との議論は平行線のまま終始した。

 このような問題は、ケーブルテレビやインターネットで同時放送されている時代だけに、当局も市民にも解りやすいように解説のような答弁に心掛けていただきたい。また、寺本議員の時に2回、斎藤議員の時にも「議事進行」がかかって2回議事が中断し休憩となり、各会派代表者が集まって協議していたが、「何が問題になっているのか」を議長から説明があってもいいのではないか。議会改革もこのような市民目線で取り組んでいただきたい。

■産業振興、介護保険など多彩なテーマ

 「とよはし農産物ブランド育成計画」を取り上げた杉浦正和議員(豊橋みらい)。「安全・安心・高品質をブランドの条件とするが、何を持って高品質とするのか。最終的な目標をどこに置くのか。計画策定になぜ生産者が含まれていないのか」など。若手農業者らしい質問は好感が持てた。

 牧野英敏議員(共産)は改訂介護保険制度で「地域包括支援システムの実現」がキーワードとなることから、その重要な役割を担う地域包括支援センターの機能強化が訴えられた。同センターの現状と課題を現場レベルで提示できれば、説得力が増したはず。

 また堀田伸一議員(豊流会)は豊橋をホームバンクとする深谷知広選手の活躍を紹介しながら、売り上げ減少が続く豊橋競輪の歯止め策を訴えた。また、まちなか活性の起爆剤として参加者負担型イベント“豊コン”を提案していたが、斬新でおもしろかった。

■東三河県庁構想と豊橋市の関係

 藤原孝夫議員(豊橋みらい)は「東三河大合併、政令市実現構想は市長が掲げたマニフェストの第一号である」として取り組みを質した。市長は「合併特例法が一部見直され、平成の大合併ではきめ細かい行政サービスが提供できないなどの課題も明らかになっている。地域の自律力を高めながら、その延長線上に広域合併・政令市がある」と答弁していたが、来秋の市長選を控えて興味深かった。

 古関充宏議員(豊流会)は「東三河の事は東三河で決めるためには、どのような権限と財源が必要か」と迫ったが、「都市計画決定など政令市並みの権限委譲とそれが円滑に推進される財源」としたが、「東三河県庁」議論はまだまだこれからというところ。

 東三河県庁構想が具体化した時、豊橋市はその県庁所在地となり、豊橋市議会はその大きな役割の一端を担う事を肝に命じて精進してもらいたい。そのためにも、頑張れ、地方議員よ!


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