地方政治クリエイト

9月定例豊橋市議会傍聴記@

 大震災の復旧・復興や原発事故の収束への道筋が依然として見えてこないなかで、円高デフレは止まらず、雇用の減少や地域経済の衰退を招きかねない産業空洞化の深刻さが増幅されています。こうした中で船出した野田政権の行く末にも不安は尽きません。
 混とんとしたこれらの背景には中央集権型の日本の行政システムの矛盾と限界が顕在化しています。逆に「地方議会」は今こそ力をつけて、「新しい地方自治」創出の扉を開くべきです。それだけに豊橋市議会九月定例会一般質問に過去最高の26人が登壇して、議論を展開したのは注目されたところです。

■新人議員相次いで登壇

 6月議会で4人の新人議員が初登壇しましたが、九月議会で8人が登壇し、全員が元気に初登壇をこなした。

 最初に登壇した小原昌子議員(豊流会)は落ち着いた姿勢で「路面電車」、「生涯スポーツ」を取り上げたが「ビール電車」や「おでん車」に次ぐ女性議員らしい利用促進策の提案―「絵手紙電車」とか「鬼祭り電車」などがなされればおもしろい。

 松崎正尚議員(無所属)は「津波対策」と「地域コミュニティ」の問題を取り上げたが、大震災後、いち早く岩手に赴き震災ボランティア活動に参加した体験や、一般質問前日に地元校区での避難訓練に汗を流した体験から避難所としての高台−「エスケープヒル」を提案していたが説得力があった。

 2日目には4人が初登壇。市原亨吾議員(豊流会)。主要地方道東三河環状線など市東部方面の基幹道路整備が遅々として進まない状況から、「幹線道路はつながってこそ機能が強化される」と歯切れが良かった。

 「少子高齢化社会での市民税などの推移」、「自主財源のための産業振興のあり方」などを論じた星野隆輝議員(まちフォーラム)。民間企業で身につけてきた分析手法が半端でないことを裏づけるように論点が明確で言葉に無駄がなかった。「自らが問題意識を持ち、提案し、実行する」(選挙公報)志の高さをうかがわせた。

 市内の小中高に500人を超える特別な支援を必要とする子どもたちに対する支援体制と専門機関との連携について迫った渡辺 誠議員(無所属)は「子ども発達センターを中心に心の通った相談体制を」と訴えた。

 4月の本格運行以来、一日平均30人が利用する「地域生活バスタクシー東部東山線」について利用者の確保策や、そのための停留所の配置、運営委員会の構成などの問題提起をした近藤喜典議員(無所属)は若さにあふれて清々しかった。

 三日目には山田静雄議員(無所属)が登壇。避難所運営のマニュアルに従って行った避難所開設訓練を通じて避難所対策の充実策を提起した。「誰かに貸そう自分の手 いつかは借りる誰かの手」という震災現場で得てきたフレーズが地域住民の支えあいを象徴して印象的だった。

 山本賢太郎議員(豊橋日本一愛知の会)は広域連携について取り上げた。「日本一愛知の会」所属議員として同会会長である大村知事の提唱する「東三河県庁」をはじめとする「東三河マニフェスト」に対して突っ込んだ議論の展開を期待したが、具体的な肉付けが同会所属議員の間にもなされていない事をうかがわせた。

 また、一期生議員で二回目の一般質問に登壇した尾崎雅輝議員(無所属)は視聴覚教育センターでハイブリッドタイプのプラネタリウム機器に更新するのを機に市自然史博物館の大型映像機器の更新と併せたシティプロモーション戦略、それによる利用者増を提案したが、若々しいユニークな発想が目を引いた。

 同じく斎藤啓議員(共産党)は災害時における学校や避難所での対応について、緊急地震速報機器を学校の各教室に配置することや、避難所での弱者支援のために補聴器や人工呼吸器などの電源の確保策について提案した。

 大震災の被害を踏まえた学校施設の整備について取り上げた尾林伸治議員(公明党)は建物の耐震化は平成19年度までに完了しているが、運動機材などの非構造部材の耐震化の対応ができていない点を指摘し、対策を迫った。

 総じて、一年生議員の皆さんの真摯な研鑽の跡をうかがわせる質問が続いたが、答弁も含めて60分という制限時間を30分以上も残して降壇するケースが何人かであった。市民の代弁者として「市の一般事務について質問できる権利(会議規則第60条)」をもっと大切にしていただきたいものである。


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