地方政治クリエイト

豊橋市議会傍聴記A(6/7)

●ベテラン、中堅議員が登壇

 豊橋市議会一般質問第二日は5期の渡辺則子議員、2期の豊田一雄議員、廣田 勉議員、そして3期の沢田都史子議員とベテラン、中堅議員が相次いで登壇した。

 冒頭を飾った渡辺則子議員の質問は、「浜岡原子力発電所の停止でなく、廃止!」を訴える立ち位置が明確に印象付けられた論理の展開であり、小学3、4年生が使う社会科の副読本での原子力発電所の記述の修正を本会議の場で教育長に具体的に示させたのは、そのことを更に鮮やかにした瞬間だった。
 また、「市民生活の安全・安心を担保するためには経済活動も重要であり、そのためのエネルギー問題は慎重にあるべきだ」と答弁する市長との対比は二元代表制のあるべき姿として印象強い光景だった。

 サイエンス・クリエイト計画の、約四半世紀の歩みを総括しながら。産学官の連携による新産業創出の議論を展開したのは豊田一雄議員。都市エリア産学官連携促進事業、食農産業クラスター推進事業などのプロジェクトの蓄積からさらに、次世代自動車産業、新農業の展開の課題と対応を説いていったが、今一つ、説得力に欠けた感がするのは時代の変化に呼応した市場のニーズと産学官のシーズとのマッチングの切り口が明確でなかったからではないだろうか。
 実施主体が株式会社になっていることと、「民活法」との関係を踏まえるべきだし、政策は現状の的確な分析とそれに基づく具体性がなければならないと抽象論に終始することを肝に銘ずるべきだ。

●起承転結の結を明確に

 また、廣田勉議員は大震災に伴う環境政策に与える影響や、危機管理における情報システムについて取り上げた。特に情報システムについては情報管理とアウトソーシングの議論、被災者支援システムの展開、そのための人材育成などについては説得力があったが、3問目で取り上げた「GIS(地理情報システム)」との関係や危機管理として東北の被災地では住民情報システム等が壊滅的状況にある中で、それを回避するためにも高速・大容量のクラウドコンピューティングにまで迫っていただきたかったと残念に思う。「オープンソース」にまで議論を広げたのだから。

 豊橋市議会でBCPという言葉が初めて使われたのは2年前の6月議会であり、沢田都史子議員によってである。あれから2年間、事あるごとにこのリスクマネージメント手法の導入を訴えてきた沢田議員の取り組みは評価できるが、毎回、同じような議論に終始していないか。それは、我が家のBCP、我が地域のBCP、我が校区のBCP、我が市のBCPと身近な所から創り上げていく具体的な取り組みこそが、この停滞感を打ち破れるのではないだろうか。また、広げていくと自ずから官民協力の体制が幾重にも必要になってくる。しかし、ここでも官民格差の課題をどう乗り越えるのかということが大きな課題である。

 今回も苦言を一つ。通学路の安全対策を取り上げた沢田議員の質問は、学校や地域、警察、行政などの関係部局を調整し、責任もって「子どもの命を守るための窓口を一本化すべきであるというのが取り上げた理由です」と自ら言いながら、肝心の答弁を引き出さないまま、残り時間を15分も残して「答弁はいただけませんでしたが、今後に期待して終わります」と第二問で終えてしまうのは何なのだろうか。

●農業に挑む新人-向坂議員

 今回の改選後初の定例議会で当選した12人の新人議員のうち3人目の一般質問に登壇した向坂秀之議員。自らの職業を農業として初当選。20年余の温室園芸農業に取り組み、農業の発展のためには政治と切り離すことができないと議員としてのコンセプトは明快。ホームページもすでに立ち上げ「豊橋は元気がなくなっていませんか?」と問いかける。

 選挙公報でも「農育、食育、教育から豊橋市政を考える」とした。そして、初質問で取り上げた課題は本市の農業政策(農育)、学校給食の地産地消(食育)、私立高校の授業料補助(教育)と公約のままの展開。今後を大いに期待させる存在感が本会議場を包んだ。


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