地方政治クリエイト

豊橋市議会傍聴記@(6/6)

●ベテラン議員こそ先頭に立て!

 豊橋市議会6月定例会が開会した。考えてみれば24年間、議員席に座わらせていただいていたが、市議会を傍聴するのは初めてであった。

 日本の歴史上未曾有の3・11東日本大震災。「戦後」という歴史に終止符をつけて、「日本の分かれ道」にもつながる大きな転換点に我々は立っている。その直後に行われた4月の統一地方選挙で問われたのは、生活現場に密着した地方政治の力強さであり、地域に根を張りめざすべくは分権型の地域づくりであり、地方議員がその原動力になりうるのかどうかが問われている。
 一方で、この1、2年地方議員が置かれている環境は厳しい。「議員を減らせ!」「報酬を減らせ!」「調査費を減らせ!」の大合唱は次第次第に地方議員をどんどん土俵際に追い込んでいる。

 それだけに、東三河のリーダー都市−豊橋市議会が東北大震災を「明日は我が身」としてとらえ、どのような議論を展開し、豊橋市民の安心・安全の道を拓いていくのか!?、大いに注目されるところである。
 また、36人の議員の1/3にあたる12人が新人議員として、議席最前列にずらーっと並んでいる様は頼もしく、嬉しい限りである。

 逆に、後列に並ぶ5期、4期のベテラン議員10人が、市議会の議論を大いにリードして指導的役割を果たしていただきたい。そうでなければ、ベテランの意味がなくなる。しかし、残念ながら今回の質問通告で近田明久議長、佐藤多一副議長以外に質問通告して登壇するのは共産党団長牧野英敏議員と豊橋市民会議の渡辺則子議員の2人だけであるのは寂しい。
 未曾有の大震災に原子力発電所の事故が重なっているのだ。この国難に向かって全国の地方議会で災害に強い街づくりの競争が始まっているのであり、その先頭にベテラン議員たちが立つべきでないのか!。

●頼もしい新人議員の登壇

 そうした中で、トップバッターで登壇した尾崎雅輝議員は最年少の29歳、4900票獲得して2位当選を果たした気鋭の新人議員。その彼が歯切れよく登壇して、堂々の一般質問を展開したのは頼もしい限りであった。論理も明快で、豊橋の消防力を国が示す整備指針から問いかけて「大規模地震における防災体制について」論を進め、「豊橋東部地域におけるまちづくりについて」は国道1号沿いののんほいパークの入場者数と旧東海道沿いにある二川本陣の入場数の比較から論を進めるあたりは、「さすが」という他はない。

 もう一人、4番目に登壇した尾林伸治議員は公明の新人議員である。落ち着いた口調で市当局を質していく姿勢は好感が持てた。ただ、せっかく5月下旬に市議団で二本松市と相馬市にボランティア活動も兼ねて震災現場に足を運んだと述べるならば、そこでのすさまじいばかりの被災地の模様を、もっともっと語るべきでなかったか。すべての解決策は現場にあるのだから。

 そして、二人の新人議員に共通して言えるのは、初質問をきちんとこなそうとするあまり、あまりにも優等生な質問で終始していないか。「優しい若者を、私は若者だと思わない。若者が、優しく有れる筈はない。全ての事が可能だと思っている年頃は、高慢で不遜で有る方が似つかわしい」とは塩野七生女史の「男たちへ」の一節である。地域消防団の現実をもっと大胆に迫ってもいいのではないか(尾崎議員)。被災者支援システムの採用や子どもの医療費補助の拡大(尾林議員)に、もっと食い下がってもいいのではないか。

●”勉強”、”勉強”、”勉強”

 豊流会の古関充宏議員、豊流会会長の伊藤篤哉議員が相次いで登壇し、今後の行財政運営や総合的防災対策、豊橋駅周辺の活性化、大震災後の東三河経済の諸課題などについて質した。
 「大震災が今後の市財政にどのような影響を与えるのか。その中で市長マニフェストを具体化した第五次総合計画をどのように具体化していくのか」(古関議員)、「震災後の東三河の新成長戦略」(伊藤議員)などの切り口は市民の関心も高い課題であるが、抽象的問答に終始したのは、「避難行動困難性評価手法を用いた防災拠点と避難所に関する研究」結果で具体的に指摘した避難所の在り方(古関議員)、釜石の小中学生救った「津波避難の3原則」から防災教育を説いた(伊藤議員)の質問と比べれば明確である。具体的な論理の展開がなければ実りある議論にならないということであり、だからこそ突っ込んだ”勉強”が必要なのだ。

 なお、伊藤篤哉議員の第一問で「今回被災された皆様には不敬ではありますが、東海・東南海・南海地震ではなくて良かった。これで教訓を生かせる」と述べられたが、全く不敬である。「東北大地震の教訓を東海・東南海・南海地震の減災対策へ生かしていくことこそ、今回大被害に遭われた皆様の悲しみに応えていくことになるのではないか」というような表現にすべきでなかったか。将来ある議員だけにあえて苦言を呈したい。

 最後に登壇した堀田伸一議員も5項目にわたる質問項目で取り組んだが、なかでも建設業界の災害対応力の低下の問題は重要な問題提起である。
 本年3月議会最終日での討論で私は「豊橋市と東三建設業協会との間で『災害時における応急対策業務』に関する協定が平成11年から締結されていますが、東三建設業協会の会員数は平成11年には91社であったのが、平成22年度末では54社と60%に落ち込んでいる実態」を指摘させていただいたが、それだけに堀田議員は「建設業界が体力をつけて機動力を発揮できるように地元優先の工事発注、公共工事の増大」を提案されていたが、そんな時代は過去のものとなっているからこそ、重機はリースとなり、オペレーターも少なくなり、災害対応力が危惧されているのであり、もっと掘り下げた対策を提案すべきではないのか、考えていただきたい。


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