伊藤ひであきの視察報告

大分で「地方議会のあり方」を考える (10/20)

 10月20、21日の二日間、九州・大分のiichiko総合文化センターに全国から市議会議員2400名が参加して「全国市議会議長会研究フォーラム」が開催された。

 地方主権改革の進展に伴い、今後とも都市に多くの権限委譲等がなされる流れの中で、議会は自治体の意思決定機関として、その役割がますます重要になっている。また同時に真の地方自治の担い手として市民の付託と期待に応えうるために、これまで以上に議員力を磨き、意思決定機関としての議会のあり方が問われている。  特に今回は、「議員定数及び議員報酬はいかにあるべきか」を中心に「議会のあり方」について議論が行われた。

 第一日目のパネルデスカッションでは、廣瀬克哉法政大学法学部教授をコーディネーターに、パネリストに中邨章明治大学政治経済学部教授、大山礼子駒沢大学法学部教授、谷隆徳日本経済新聞社論説委員、そして地元の仲道俊大分市議会議長。

 そこでの発言要旨は以下

●広瀬教授

 議員定数・報酬の半減を訴える首長が住民の支持を集めている。議会のことが住民にきちんと伝わっていないので、首長の議員定数や報酬の削減の提案に後手になり、右往左往している。住民の理解を得られる議会改革のあり方を、腰をすえて議論をすべきだ。
 会津若松市議会では、時間をかけて、どのような報酬と定数なら市民が求める議会が運営できるかという視点で、市民を交えて議論し、レポートをまとめている。このように裏づけある議論により、議会としての方向性を用意する必要がある。

●大分市議会の仲道議長

 中核市初の議会基本条例を制定し、市民との意見交換会を行うなど議会改革に取り組んできた。定数で言えば常任委員会審議に必要なのは7名、それが4委員会で28名、議長を足して、29名の議員定数を基本にしたとの事。、また、由布院市では、市民との話し合いの中から、市議の報酬を上げるべきだといいう世論が巻き起こり報酬を1万円上げた。市民を巻き込んだ議論や交流が大切。

●中邨教授

 報酬の低い諸外国に比べ、日本の議会が扱う業務は幅広く、単純な比較はすべきでない。それでも、イギリスやアメリカが日当で5000円程度なのを名古屋市議会は年収1600万円、半分にしても、、日本人の給与水準の上から20%程度の中に入ることになり、考える余地はある。

 日本人は、行政や議員に期待をしないが、将来は、個人責任13.2%cf行政40,8%と高く、行政に依存している−ここが諸外国と大きな違い。国民の政府自治体への不信感は、政府への信頼低下、納税者の公務員不満、そしてシビル・ソサイエティ論の台頭というロジックにある。そのねじれを解消する為にも、議会報告会などと言っておらずに、報酬を1票につき10円とするくらいのラジカルな方法で、住民にアピールすべきだ。議会事務局の体制をもっと強化すべきだし、パブリックコメントなどは議会がやることなのに、行政が行っている。

●大山教授

 長く議会民主主義の母国であるイギリスでイギリス議会下院の待遇見直し論を目の当たりにしてきた。ただ、イギリスではマスコミも市民もいきなり定数も報酬も半減という話にはならない。議員に対して職務遂行に必要な手段を提供することと、その経費が納税者にとって納得できる金額であること(value for money)とのバランスをいかにして確保するかという議論になる。 日本では住民が議会を信頼していないこと、住民が議員を自分たちの代表だと思っていない。そのためにも「議会だより」や「議会ホームページ」が貧弱すぎる。議員バッジなどはずすくらいの改革が必要。

●谷日経論説委員

 竹原阿久根市長、河村名古屋市長が際立っているが、ともに市長を支持する民意は小さくない。有識者でも地方議会不要論がある。ゆえに、もっと住民を引っ張り込むような議論が必要。大阪維新の会は、何をしたいかビジョンを示していない。大阪都構想といっても説明できない。悩ましいのは山口県防府市。3期勤めた市長が、自分の給料も半減する、退職金もいらない。だから議会も定数を半減してという問題。これを議会は否決した。そこで市民が自発的に、署名を集め、直接請求で条例案を出す。これを議会が否決できるか、どうか。市民の不信感が増し、地方議会は、同様な、嵐に攻められる。

 二日目の21日は課題討議として、「政治倫理条例について」と「議会の調査権について」が取り上げられ、かほく市議会と佐賀市議会の政治倫理条例、稲城市議会と飯田市議会の「特定所管事務調査の進め方」や「基本構想基本計画の進行管理」についての事例発表や討議が行われた。


 全体を通じて、総務省では地方制度の抜本的改革論議が進んでいるが、制度改革で現状がよくなる保証はない。現状の制度のなかでもできることはまだまだあるというのが現実ではないだろうか。議会の原点に立ち返って、住民の理解を得ていくために、積極的に住民に示していかなければならない。

 中邨教授の「地方主権というが、このままでは地方の首長にどんどん権限が強化される。地方議会が強くなるような改革でなければ地方主権ではない」という言葉が印象的でした。

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