伊藤ひであきの視察報告

郡山での「中核市サミット」レポート(10/28)

 10月28日(木)「中核市サミットin郡山」が郡山市内のホテルで開催された。全国には、人口1000人以下の村から大都市まで約1800の市町村があります。19の政令指定都市以外の都市で規模や能力などが比較的大きな都市の事務権限を強化し、できる限り住民の身近なところで行政を行うことができるようにした都市制度が中核市制度。

 この制度は1995年にスタートして、15年目を迎え、中核市になるための用件は昼夜人口や面積用件もなくなり、人口30万人以上だけとなった。現在、中核市は40市、中核市の人口は国民の約13%を占める。来年4月1日からは群馬県高崎市が41番目の中核市となることも発表された。

●流動化する政局と中核市の役割

 基調講演「流動化する政局と中核市の役割」と題して、基調講演されたのは(財)地方自治研究機構会長・元内閣官房長官の石原信雄氏。講演の要旨は以下

 国においては「地域主権戦略大綱」に基づき、地域に住む住民が自らの責任で意思決定できる地域主権社会の実現に向け、住民にもっとも身近な基礎自治体への権限委譲や、それに伴う地方税財政制度の抜本改革について議論がなされている。

 昨年9月の政権交代以降、民主党政権の1丁目1番地は「地域主権改革」であったはずだが、一年経って、参議院選での敗北もあり、意気込みに力強さを失っている。そうした中で「国と地方の協議の場を定める」法案などは与野党に反対意見はなく通るだろう。しかし、ここで問題なのは地方といっても六団体があり、都道府県、市、市といっても政令都市から中核市、一般市、そして町、村と意見がまとまらなければ、国のほうも財源や権限を渡すのを反故にしてしまう理由付けができることになる。それだけに中核市の果たす役割は極めて重要である。

●避けられない抜本的税制改正

 また、国の出先機関の廃止でも、国家公務員の処遇をどうするか言い換えれば地方の受け入れ体制が重要になる。
 ひも付き補助金の一括交付金化についても、社会保障や義務教育関係のお金をはずすのかどうかもきちんと議論する必要があるし、交付金の法的位置づけをきちんとしなければならない。

 国の財政が厳しい中で今年度の地方交付税は16.9兆円と昨年より2兆円増やし、臨時財政対策債も24.6兆円と過去最高。これだけ見れば民主党政権はよくやっているように見えるが、赤字国債の上積みでやり繰りしていることが大きな問題。臨時財政対策債も国が交付税措置することで担保しているが、不交付団体になるとこの約束事がどこかへ隠れてしまう。

 このようなことは抜本的な税制改正がなされないとどうにもならないことであるが、与野党とも選挙が怖くて、避けてばかりいる。その意味でも来年度の予算編成、特に地方財政がどうなるかが重大である。

●中核市は明日を拓けるか

 このあと、「分権社会における財政運営」、「地域における子育て支援策」、「地産地消を通した地域活性化」、そして「地域における地球温暖化対策」の4グループに分かれて分科会が行われ、その分科会のまとめを、@持続可能な財政基盤の確立、A子育てに優しい社会の構築、B地産地消を推進し6次産業化をめざす、C低酸素社会の実現を柱とする「中核市サミット宣言」として採択して閉会した。

 全体を通じて一番感ずるのは、国政の不安定、特に民主党政権のぶれる政権運営に、40の中核市市長は、地方主権の展望が開けないもどかしさで憤懣やるかたない状況であることがありあり。なかには国政を改革するために参議院は全員、首長の代表が議席を占めたらどうかという案までも飛び出した。そこへ、円高株安の不況が重なって、四苦八苦の財政運営を強いられているのが現状。
 大会のテーマである「明日を拓く中核市」になれるかどうか、地方分権改革の先導的役割を果たせるかどうか。突破しようとする壁はあまりにも高いように思われた。

 郡山は終日、冷たい氷雨が降り続いていたが、爽やかな気持ちで会場を後にできたのは、「夢は未来の現実だ!」と題して特別講演してくださった郡山市ふれあい科学館館長の松本零士氏の「若者を侮(あなど)ってはならない、少年、少女にエールを!」と時空を超えたスケールのでっかいお話を伺ったからか。


ホームページに戻る 視察報告メニュー