伊藤ひであきの視察報告

葛飾区の24時間訪問介護支援サービス(10/29)

 上野駅から京成青砥駅まで、およそ30分。面積34.84ku、人口47万人の葛飾区。東は江戸川を境に千葉県松戸市に、西は足立区・墨田区、南は江戸川区、北は大場川を境として埼玉県八潮市・三郷市にそれぞれ接している。

 「かつしか」の「かつ」は丘陵や崖などを指し、「しか」は砂州などの低地の意味をもっているという。よって「かつしか」とは、利根川流域の右岸に低地、左岸に下総台地が広がる景観から名付けられたという。

 区内には、山田洋次監督の映画『男はつらいよ』シリーズで知られる柴又帝釈天や、江戸期の菖蒲文化を伝える堀切菖蒲園、秋本治の漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』で有名になった亀有(現在は派出所はない)がある。

●「勝つしか」ないと公明党が第一党

 近年は松戸や船橋・三郷の都市開発によって、「隣接する葛飾区の土地や家賃が安い」と言う理由で移り住む住人も多く、東京県民のベッドタウン的な要素も持ち、平坦な住宅地が続く。

 この地は、文字どうり「勝しか」ないと常勝の歴史を刻んできた本陣。それだけに葛飾区議会公明党は11人(定数40)を擁し、第一党。
 区長への来年度予算要望にあたって、陳情、要望団体は40団体を超えるという。「第一党とはこういうことか」と思い知らされる。

 この葛飾区を視察したのは10/7の公明新聞で紹介された「要介護者のSOS 迅速に対応/24時間訪問介護サービスが好評」の記事に接したからであり、郡山での「中核市サミット」の翌日、葛飾区を訪問した。

●コールボタンは安心ボタン

 最初に案内されたのは、このサービスを利用している一人暮らしの伊藤さん宅。伊藤さんの枕元には、オペレーターと話をするための弁当箱程度のケアコールがおかれ、伊藤さんの胸元にはコールボタンがぶらさがっている。
 伊藤さんは今夏の深夜、冷房のない部屋で寝ていたため、熱中症の症状が出て体調が悪くなり、このコールボタンを押した。ほどなくヘルパーが駆け付け、血圧と熱を測ってから、安静にして症状は治まった。
 伊藤さんは、「このサービスのおかげで、夜中に一人でも安心できる」。「介護保険制度は私のような一人暮らしの者にとっては、本当にありがたい」と笑顔で話す。

●「今、来てほしい」ときに利用できる。

 次にこのサービスを展開するハッピー葛飾・ヘルパーステーションへお邪魔し、この仕組みを見学させていただいた。

 この仕組みはケアコール本体にPHS電話が入っていて、コールボタンを押せば昼夜を問わず訪問介護事業者に連絡が取れるようになっていて、コールボタンを押した段階で訪問介護事業者の本部のディスプレイには登録者の情報が表示され、それを見ながらオペレーターの看護士が利用者と会話して状況をつかみ、ヘルパーを派遣したり、必要があれば主治医への連絡や救急車の要請も行う。

 「コールボタンひとつで、ヘルパーがお伺いします」。葛飾区の24時間365日随時訪問サービスを展開する事業者の謳い文句である。
 独居の方はもちろん、家族と住んでいても一人になる時間がある方、あるいは家族が対応できない方の突発的な事態に対応できるようになっている。

 また転倒・転落や体調不良の時だけでなく、定期のヘルパーさんが来ない時間の排泄解除、急に寒くなったときの更衣介助など、「今来てほしい」ご用の身体介護全般にご利用いただけますとPRする。

●在宅介護のためには不可欠のサービス

 葛飾区がこのサービスを始めたのは昨年6月からである。午前7時から午後10時までのサービスは市町村特別給付による、即ち介護保険条例で規定することにより、介護保険特別会計として予算を組んで実施している。また昼間の利用については利用限度額に含まれないので、利用限度額を気にせずに利用できるメリットもある。

 利用できるのは要介護1以上の方で、世帯状況は問わない。利用料金は1か月あたり1072円、通話料は1分あたり42円。ヘルパーが訪問した時の料金は午前8時から午後6時までは392円/回、午前7時から午前8時まで及び午後6時から午後10時までは462円/回。午後10時から午前6時までは介護保険の地域密着型夜間対応型となり随時訪問で1名対応時1回あたり641円、2名対応時は862円。

 サービスの利用にあたっては、担当のケアマネージャーが必要に応じてケアプランに組み込みます。その後、契約、区への利用申請を経てサービス利用の開始となる。

 現時点での利用登録者数は随時訪問32名、夜間対応型71名。
 平成22年度の予算対応としては、月50名がすべて随時訪問介護サービスを利用し、一人当たり月1回利用した場合の設定で、2,376千円を計上。現時点での実績は61件221,029円。
 昨年から、夜間対応型を実施している事業者が昼間の随時訪問サービスを本格的に開始することになり、この9月からは区内全域でサービスが提供できるようになったため、利用者が大幅に増えつつある段階。区ではさらに「広報を利用して、区民へのPRに力を入れていく」と葛飾区福祉部介護保険課長坂裕子係長は熱く語る。

 葛飾区の高齢化率は20%を超え97,800人、介護認定者は16%の14,300人。このようなサービスが始まったのは都内では世田谷区に次いで葛飾区が2番目。「このサービスにより、在宅介護がもっと進めば、お年寄りはどれだけ幸せなことか」と推進者の一人である区議会公明党の上原有美江議員は言う。さらに「在宅介護のためには24時間対応できるシステムは絶対必要」と言い切る。



 地方ではこのような24時間体制はおこなわれていない。豊橋でも4500世帯の独居老人が生活している。うち600人が緊急通報システムに加入して、万が一に備えているが、このような仕組みにはなっていない。このようなニーズが隠れているのか、手が挙がってこないのか。否、きっとニーズはあるのに、本人と家族任せにしているのではないかと反省する。なぜかなら、独居老人や介護家庭の実態は東京と地方と何の差があるだろうかと考えられるから。


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