伊藤ひであきの地方からの提言

'10地方から 名古屋市議会が守らなければならないものA (9/14)

●議会を不信任したいのが河村市長のすべて

 その後、市民からの質問がパネラーや議会に向けられた。

@杉並区のやろうとしている減税と名古屋の減税はどこが違うのか
A-法定減税(杉並区)と、一律減税(名古屋市)とはおのずから違う。一律減税である限り、金持ち、大企業優遇の減税になってしまう

A議会に対して発言する場は今まで、ほとんどなかった。それだけにこのような会合を持っていただいたことを評価する。地域委員会の方向性についてどう思うか
A-市民の皆さんの河村評価は誇大評価がある。河村市長がやりたいのは議会解散であって、二大公約の減税と地域委員会が大事なのであれば、昨年12月に合意が成り立って議決されているのだから、それをちゃんとやっていけばいい。なのに、議員報酬の半減と議員定数の半減をいいだした。
 東京のメディアが取り上げているように「地方自治を守るため」ではないことは明白である。類(たぐい)まれなキャラクターで「議会を不信任したい!」「議会を解散させたい!」これだけである。ビジョンもなければ、政策もない。(筆者の但し書き→これが「名古屋の乱の本質です)

B河村市長は「庶民減税」だといったのに、ふたを開ければ、大企業や大金持ちの桁違いの減税。こうした本質をメディアはちゃんと伝えているのか。
A-「住民税10%減税」といえば聞こえがいい、そこに隠れている矛盾をほおむって、それに議会が反対すれば、それは「抵抗勢力」であると印象付けて市民動員、大衆動員、そこにマスコミが後押ししている状況は危険。

 など真剣な質問があったし、マスコミ報道に振り回されることなく、名古屋の現実と未来に対して真剣な市民の声が質問となって続いたことは、この会合が開かれた意味を表すのに十分だった。

●名古屋市議会はもっと真摯に考えるべきではないか

 ところで「議員はもっと現場に足を運んで、市民の意見をちゃんと聞いて、努力してもらいたい」という質問については、司会者が「今のような市民の声に、議員さんどう答えますか。報酬も半減せよといわれているが、どうか、市議会議員でちゃんと答えてください」と議員にマイクが向けられた。

 「8月27日にリコールが始まってから、自分のチラシをもって丁寧に訪問活動し、街頭演説して訴えている。それはなぜか地方自治の危機だからと思っているからである」と一人の名古屋市議が進んで答えた。
 しかし、「報酬は手取りからすれば40万円ちょっと、そこから国民健康保険などを引けば30万円ちょっと、政務調査費も自分に頂いたのは12万円、それを使えば使うほど自分の持ち出しも大きくなる。ここでまた10万円減額すると生活がやっていけない」という内容になると、「贅沢が身についてるのと違うか」という声が発せられた。これは説得力のある話ではなかったことを真摯に考えてほしい。

 なぜかなら、名古屋市議会の報酬は99万円/月(1633万円/年)、これを名古屋市議会は9月報酬分から来年の任期満了まで、現在の89万円/月(1513万円/年)減額にさらに月10万円減額し79万円/月(1393万円/年)にすることを決め、市長の報酬半減に対抗しようとしている。この額は19政令市で12番目になると、会場でいただいた資料にも説明してあった。
 それでも愛知県下の市議会議員の報酬と比べればダントツである。何故、政令市の横並び比較だけで市民に理解を求めようとするのだろうか。年収1400万円では生活ができないと嘆くなら、年収1000万円、いや年収800万円、いやもっと少ない額で生活している県内の市会議員たちは野垂れ死にになるはずである。

 また、政務調査費も毎月50万円のうち自分で使えるのは12万円というのは、市議団で雇用している控室の事務員さんや共同購入している政策資料代などを引き去っての話であろうが、それとて政務調査費が会派支給という原則からすれば、当然である。それらを含めて議員一人当たり50万円の計算で会派に支給されているのである。

 名古屋市議会議員は間違えないでほしい。政令市の議員は活動範囲も広く、勉強することが多いから、報酬も高くていい、政務調査費も支給されても当たり前という思い上がりがないだろうか。名古屋市周辺の北名古屋市や清須市、東海市などの議会議事録と比べて、名古屋市議会の議論が際立って高度な議論が行われているといえるだろうか。それらの市の議員報酬や、政務調査費を調べられたことがあるだろうか。

●守らなければならないのは、地方自治の本旨

 二元代表制を正面から崩そうとしているこの騒動に、市長不信任案などで対抗しようとすれば、河村市長は当然、議会を解散させるでしょう、それこそ河村戦略の思うつぼである。真正面から地方自治の本旨である「二元代表制」を守るために頑張ってほしいというパネリストの結びの言葉が一番響いた説得力ある言葉だった。

 名古屋市議会でおこっていることは、二元代表制の危機である。この危機は二元代表制の機能そのものが制度疲労を起こしていることを認めるとしても、二元代表制は「両者がそれぞれ適切に役割を果たすことで、市民本位のよりよい市政を実現していくことが本来の姿とされています」(リコール開始とともに、全会派一致で出された名古屋市議会の決意表明)。そして、このことは全国の地方議会で起こりうる可能性をはらんでいます。議会が懸命にそのチェック機能をはたさずに、現状に甘んじていると、市民からも、首長からも存在意義を問われることになります。

 名古屋市議会の解散請求運動は、一か月間という期限付きの折り返し点に差しかかっている。政令市初のリコールが成立するかどうか注目されるが、成立しようと、しまいと、地方自治への闇雲(やみくも)の挑戦であることはまちがいない。

 それだけに、頑張れ!名古屋市議会。


ホームページに戻る 視察報告メニュー