伊藤ひであきの視察報告

夢、そして誇り。奈良市の教育ビジョン(07/22)

 和銅3年、(納豆売れる平城京)と覚えた西暦710年の平城京遷都から1300年。今年一年、県下各地で展開されている「平城遷都1300年祭」はいよいよ夏休みを迎えて、活気を浴びている。

 「奈良市は、国際文化観光都市であり、世界遺産のあるまちです。平城京の昔から、悠久の歴史を経て、今に受け継がれてきた多くの文化財や伝統に大きな誇りを持ち、大切に守り、未来に引き継ぐ責任があります。
 私たち奈良市民は奈良の教育を考え、未来に羽ばたく子どもたちの心身の健全な発達を支えなければなりません。
 そのためには家庭・学校・地域の連携が何よりも大切です。奈良市はここに教育憲章を制定して”教育のまち―奈良”をめざします」―奈良市教育憲章である。

 猛暑の奈良市を公明党議員団5人で視察したのは、この教育憲章をベースに、昨年の5月に策定された「奈良市教育ビジョン」を学ぶためである。

●この5年間に取り組むべき5つの基本目標

 奈良市教育ビジョンは「教育のまち―奈良」の実現のために、向こう10年間に奈良市の目指すべき教育の姿とその前期計画となる5年間に取り組むべき施策を示すもの。

 この教育ビジョンの策定に当たっては、国の教育の新たな方向性を踏まえるとともに、これまでの奈良市が取り組んできた教育改革の流れに、新たに「奈良らしい教育の推進」と「地域全体で子どもたちを守り育てる体制づくりの推進」を加えた、5つの基本目標で構成している。

 ここでいう、国の教育の新たな方向性とは自公政権当時の平成12年12月の「教育改革国民会議〜教育を変える17の提案〜」からの「教育市先うの総合的推進のための教育振興基本計画を」という要請を受け、文部科学大臣から中教審へ諮問され、平成18年12月には「教育基本法」の改正により、「地方公共団体は、前項の計画を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画を定めるよう努めなければならない」となった動きである。

 ちなみに豊橋市においても、来年―平成23年4月から10年間の基本構想、基本計画の策定に合わせて「豊橋市教育振興基本計画」を策定中であり、そのためにも既に先進的に取り組んでいる「奈良市教育ビジョン」を学びにきたのである。

 また、奈良市の「めざす子ども像」に迫るための5つの基本目標とは「確かな学力をはぐくむ教育の推進」、「信頼される学校づくりの推進」、「地域全体で子どもたちを守り育てる体制づくりの推進」に上述した2つを合わせた5つの基本目標の事をさす。

 以上の事からも「奈良市教育ビジョン」とは1高校21中学校48小学校40幼稚園の学校教育に関する「教育振興計画」である。

●奈良市のめざす子ども像―知・徳・体、そして夢・誇

 そして、奈良市のめざす子ども像はは「自ら学び、考え、行動する子」(知)、「あたたかい心や公の心をもつ子」(徳)、「自他の生命と体を大切にする子」(体)という、いわゆる知徳体の三原則に、「奈良で学んだことを誇らしげに語れる子」(誇)と「手ごたえのある夢をもち、たくましく生きる子」(夢)を加えている。
 「この誇りと夢こそ、奈良市教育ビジョンのもっとも特徴的な事なのです」と担当していただいた奈良市教育委員会のお二人は、生き生きとした目で胸を張って語られる。

 「奈良で学ぶ」とは―「奈良の人々が大切にしてきたものや大切にしてきた心を学ぶ」ことであり、「奈良を誇る」とは「奈良にある素晴らしい文化財や伝統、自然に対する誇りを持つことであり、受け継いできた奈良の人々の営みに対する誇りをもつことであり、本物にふれて学ぶ事が出来た自分に対する誇りを持つ」こと。「奈良を語る」とは「奈良のよさを語り伝える事」。

 奈良市にはいうまでもなく「古都奈良の文化財」をはじめ、奈良には千年単位で受け継がれてきた「伝統文化」がある。それだけに「世界遺産学習の充実」や、年間2000万人が訪れる観光客、その中の外国人とのふれあいも奈良ではであり、「小学校ハローイングリッシュ事業の充実」などは奈良らしい教育そのものである。

 また、奈良では小1〜小3の「30人学級」の充実、「幼少連携・小中一貫教育の推進」など特筆に値する。

 平成10年に「古都奈良の文化財」として東大寺・興福寺など8資産群が世界遺産に登録され、それらを「世界遺産から持続発展教育(持続可能な社会づくりのための未来をつくる教育)への展開は、世界遺産を身近に感じることができる奈良ではの教育環境であり、奈良の子どもから世界へ、そして未来へ・・・、可能性は広がるばかりである。


 視察に際し、奈良教育委員会の武田雄司教育企画課長、樫原正巳企画調査係長、そして奈良市議会事務局の浅原 哲調査課長に大変にお世話になりました。


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