伊藤ひであきの視察報告

ユニークな松阪の入札制度(07/21)

 三重県のほぼ中央に位置し、東は伊勢湾、西は奈良県に、南は津市に接している松阪市。平成17年1月に松阪市、嬉野町、三雲町、飯南町、飯高町が合併し、人口17万人、面積623平方kmの新松阪市が誕生している。

 この松阪市はいうまでもなく、すぐれた肉質、行き届いた飼養管理によって日本一の肉牛として認められ、味のすばらしさは「肉の芸術品」として全国、世界から称賛されている「松阪牛」の松阪市である。

 この松阪市、奈良、平安の時代から伊勢神宮につながる街道の宿場町として栄え、江戸期を通じて商人のまちとして繁栄している。こうした長い市民と行政が歩んだ地道な歴史を背景に、「市民・地域の個性が光り輝き、誇りと美しさを備えた交流都市―まつさか」を将来の都市像としている。

 平成20年度の財政力指数は0.69、経常収支比率は918、公債費比率は10.3。市議会定員は30人。

 温度計がウナギ昇りの猛暑の中を公明党議員団5人で視察したのは、この松阪市の取組む入札制度について、学ぶためである。

●松阪の入札制度の概略

 松阪市では、平成14年度より入札参加希望者の受注意欲を尊重する「条件付き一般競争入札」を採用いる。この入札方法は、入札参加を希望する方で、入札参加資格条件を満足している方は全て入札に参加できるもの。その概略は以下

発注工事の公告:毎週月曜日の午後3時頃、ホームページ(入札の広場)に掲示、また松阪市役所4階契約監理課閲覧カウンターにおいても掲示。各工事の発注内容を確認の上、入札参加資格条件を満たしていれば参加申請できる。
郵便入札の参加申請:ホームページの各工事(委託含む)の発注掲示から提出書類を確認し、FAXで提出。
入札参加者の決定:資格審査のうえ参加資格が無い業者には、指定期日までに電話で連絡。指定期日までに電話連絡の無い場合は、入札参加資格があるものとする。
設計図書の閲覧及び購入:各工事の発注掲示で指定しているコピー店で購入。コピー店は毎週変わる。市役所契約監理課閲覧カウンターには閲覧場所を設けて閲覧可能にしている。
質問書:質問書(任意様式)の受付・回答は原則としてFAXで行う。
入札方法(郵便入札):郵便による入札。入札書は入札・契約関係書類からダウンロードする。
入札参加者の公表:入札書到着期限の翌日に入札参加資格条件により、入札に参加する業者をインターネットで公表
入札(開札)日:入札(開札)日は、原則として木曜日。
開札の立会い:入札参加申請書の受付順に通し番号を付し、申請件数に応じて別途設定してある番号に該当した業者の方3名を立会人として選定し、開札に立ち会っていただく。
設計価格の事前公表:公表する設計価格は、希望価格を公表するもの(競争性の乏しい工事等)を除く工事(工事に係る調査・測量・設計を含む)とする。
予定価格の算出(工事・工事委託):設計価格事前公表型の入札分における予定価格の算出は、次の手順により行う
(1)先に選出された3人の立会人に、予定価格を決定するための「くじ」を引いてもらう。
(2)この「くじ」引きは、設計価格の98.00%から99.99%の間で行うこととする。
(3)くじを引く者のうち最初の者は、98.00から99.99%までの一の位を決定するため「8」と「9」の2本のくじ棒から、次の者は98.00から99.99%までの小数点第1位を決定するため「0」から「9」の10本のくじ棒の中から、最後の者は98.00から99.99%までの小数点第2位を決定するため「0」から「9」までの10本のくじ棒の中から引きます。
(4)このくじ引きにより、3者の数字を組み合わせて率を決定。仮に、最初のくじの番号が「8」、次の番号が「7」、最後の番号が「6」とすると、予定価格の率は98.76%となる。
(5)設計価格にくじで決まった率を乗じて予定価格を算出。
最低制限価格:くじで算出した予定価格の85%(工事委託は67%)で設定。希望価格を事前公表する場合は、希望価格に一定率(8.5/10〜2/3の範囲内)を乗じて設定。ただし、特に必要がないと認める場合は、最低制限価格を設定しない。
全ての応札者が落札外(最低制限価格を下回った場合)となった場合の処理:予定価格を設計価格の98.00%と設定した場合の最低制限価格以上で、最低の価格をもって入札したものを落札者とする。
積算内訳書の入札時提出:1件500万円以上の工事については、入札書提出時に併せて積算内訳書を提出。積算内訳書の提出が必要な工事は、個々の発注公告に記載。
入札結果:落札者には、入札(開札)後すみやかに落札通知の電話連絡。インターネットへの掲載は、入札日の午後に掲載。電子入札システムによる場合には、落札決定後5分程度で掲載。
同日落札制限:同日に開札する契約金額2,500万円未満(建築一式工事は5,000万円未満)の工事において、落札件数は1業者1件とする。
設計書内訳の公表:入札後に設計価格の内訳を公表。 

●松阪の入札制度の特徴

 以上であるが、徹底して官民、民民の接触を排除しているのと、何よりも開札の公正を保ち、厳正を維持している点がユニークで徹底している。予定価格の算出で述べたが、予定価格の決定権限は開札当日「くじ」で決定し、算出率もその業者によるくじで決める点である。その算出率が98.76%となれば設計価格に98.76%を乗ずれば予定価格が算出できる。その予定価格の85%を最低制限価格に設定している。こうして公正な入札手続きの確保と、ダンピング受注の排除に取り組んでいる。

 そして、一般競争入札の導入により入札業務が増大し、1入札で多い時には50社の資格審査を行い、人為的なミスの起きる可能性もあり、その入札業務のプレッシャーから入札業務の電子化を検討し、横須賀市が開発した「電子入札システム」を共用する自治体として秋田市、安城市、下関市等10市と連携し、取り組んでいる。

●豊橋の入札制度改革の取組み

 豊橋市では、平成8年秋に公正取引委員会から豊橋市内の建設業者ら93名に対し、予め受注予定者を決定し、その予定者が受注できるようにしていたとし、独禁法に基づき課徴金の納付が命じられるという前代未聞の入札談合問題が明確になり、翌平成9年9月には、豊橋市発注の電気設備工事に伴う談合疑惑で電機会社の社長(当時の市長の長男)などが逮捕され、遂には豊橋市競輪場スタンドの建設に係る収賄容疑で当時の市長が逮捕され、辞任するという大不祥事にまで発展した。

 市議会ではこうした緊急事態に入札制度調査特別委員会を設置するなど、行政と一体となって、公正・透明な入札制度の改革に向け取り組んできた。そうした中で、一般競争入札(制限付)の拡大、予定価格と最低制限価格のセットでの事前公表、総合評価競争入札などの導入に取り組んできた。

 しかし、最近、平成18年度は412件の入札を執行し、落札率70%未満の低入札は18件の4.4%。平成19年度では469件に対し26件、5.5%。平成20年度では388件のうち388件のうち、36件で9.3%というは甚だしい低入札の実態が顕著になり、国土交通省からの通達(最低制限価格制度制度及び低入札調査基準価格制度における設定範囲が、これまでの2/3から8.5/10の範囲から、7/10から9/10の範囲に引き上げられ、地域の実情に応じて設定範囲の引き上げを適切に行うべしという要請)もあり、今年度から最低制限価格、予定価格を事後公表とし、最低制限価格の設定範囲を7/10〜9/10に変更し、「定率」から案件ごとに算定に変更するなど、入札制度については試行錯誤が続く。


 視察に際し、松阪市総務部契約管理課の高村直樹係長、同佐藤 真課長、契約管理担当の房木要冶参事には大変に明快な説明をいただきました。また議会事務局調査担当の中西雅之主幹、水谷春夫議長、公明党会派の山本 節議員に大変にお世話になりました。ありがとうございました。


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