伊藤ひであきの地方からの提言

'10地方から 浜名湖での「自然体験学習」で犠牲者! (6/21)

 我が家から東へ、車で10分も走れば愛知県と静岡県の県境の峠にさしかかり、トンネルを抜けると眼下に浜名湖と遠州平野が広がる。そして、そこから5分も走れば東名高速道路三ケ日インターチェンジに向かうバイパス沿いに「静岡県立三ケ日青年の家」がある。

●訓練は強行された、そして、悲劇が起った

 昨日夕方から全国にニュース報道されている「浜名湖で豊橋市立章南中学校の一年生18人と指導の教師2人が乗ったボートが転覆し、一人の女子生徒が亡くなった」事件の舞台はここである。

 章南中学は17日から学校行事の「野外活動」として、1年生94人が2泊3日の日程で浜名湖に来ており、18日は手こぎボート4艇に分乗してカッターの訓練をしていた。18日は午後2時頃から訓練開始がなされたが、その頃から浜名湖一帯は強風と横殴りの雨が激しくなっていたが、「雨が降っているけれど、みんなで協力して漕ぎましょう」と訓練は実施された。

 出航後まもなく、生徒の船酔いがひどく自力でオールを漕げない状況となり、連絡を受けた「青年の家」の所長らが別の船で救助に向かった。

 そして、生徒を乗せたままボートを岸へ牽引していた途中、何らかの原因でボートが転覆、悲劇は起きた。転覆したボートの中から一人の女子生徒が心肺停止状態で見つかったのは、転覆してから約3時間が経過していた。病院に転送されたが午後6時47分死亡が確認された。

 豊橋市議への連絡は議長名のFAXが午後5時50分が最初であるが、その頃からラジオやテレビニュースで流れていた。それだけに当事者の同中学校の父兄は体育館に集まった。情報がふくそうする中で「全員が救出された」と報告されたが、途中に「女子生徒一人が行方不明」、「重篤な状態で発見された」、そして、午後8時過ぎ死亡が伝えられた。

 学校側も合宿を中止し、憔悴しきった生徒らは午後10時頃、学校に戻った。議員活動後、急きょ、中学校に駆け付けたが、泣き崩れる生徒や迎えの父兄、学校側に詰め寄る保護者の怒号などが折からの激しい雨にまざって大混乱の状況だった。

●問題点は次々と明るみに、あいまいさが重大事故に。

 ○大雨や強風、波浪などの注意報が出ている中での訓練実施の判断はどうだったのか。
 ○訓練は警報が出ている場合は中止、注意報の場合は所長と学校長が協議するとなっているが、現場の指導員と教師の判断でなされ、所長と校長の協議どころか、校長はそのようなルールを知らなかったし、注意報が出ているのも知らなかったと述べている。
 ○転覆したボートに限って指導員は乗っておらず、男女一人ずつの教師と18人の生徒はライフジャケットを着用して乗っていた。手漕ぎボートの操作には資格は不要。
 ○波が高い中で人を乗せたままボートを引航する方法に問題がなかったのか。など。
 今後、警察の捜査の進展で責任の所在が明らかになってくると思われます。

 また、同青年の家は静岡県教育委員会の所管であり、今年4月に指定管理者制度が導入され、「小学館集英社プロダクション」が運営。常勤職員は所長をはじめ指導員6人、指導員は全員、小型船舶免許を持っている。

●感動体験は無事故でこそ、子どもの安全第一の体制を!

 豊橋市では「自然体験学習」が、二十年前から実施され、今では市内全22中学校で自然に親しむ事を目的に、同「青年の家」や、野外教育センター、時には長野県高遠などで行い、キャンプやカヌー、山林でのウォーキングなどが実施されています。

 15年前、平成7年6月議会の定例本会議で私は以下のように発言している。


 「現在、豊橋の中学校の修学旅行は関東と関西というようにありますけれども、うちの息子も先日、修学旅行に行ってきて帰ってきたのでどうだったと聞きますと、余りおもしろくなかったというんです。それは恐らく”オウム”の関係で地下鉄に乗ったりする自由行動が禁止されたという側面があったかと思いますが、むしろ去年の9月に高遠に行って、地元の中学生たちと交換して、そしてまた駒ヶ岳に登ったと、あれがやはり一番よかったと。
 この話を聞きまして、これからは三遠南信(三河・南信州。遠州の県境を越えた連携エリアの新しい時代を担う青少年たちを、そうした南信の大自然に触れさせていく。あるいは、あそこには冬場はスキーという格好のまた豊橋ではできない部分もあるわけでございますので、こうした青少年の活発な交流というのはこれから非常に大事ではないかと思いますので、教育委員会の自然体験学習の拡大の考え方をお聞かせ願いたいと思います」と推進に取り組んできた。

 それだけに今回の悲劇は残念の極みである。発表された公明党のマニフェスト2010の重要政策の中にも「豊かな心を育む自然体験学習の拡充」を明記している。

 無事故で、有意義な研修ができるためには具体的な責任の明確化が大事であり、あいまいさが事故につながる
 無事故であってこその感動体験であり、自然体験学習である。夏休みも一ヶ月後であり「子どもの安全第一の自然体験学習を」の体制づくりが急務である。

写真の上2枚は6/20朝撮影、記事中の3枚は朝日WEBから

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