伊藤ひであきの視察報告

柄にもなく小山で赤ちゃんの駅を考える(11/27)

 東京を出た新幹線「やまびこ」が、上野、大宮をすぎ、栃木県に入ると車窓の風景が一変する。広がる田園地帯とともに工業団地が左右に見えてくる。それが小山(おやま)市。いつもは肩をいからせている私が、11月27日、同僚の女性議員とともに小山市の「赤ちゃんの駅」を視察に赴いた。

 この小山市は鎌倉幕府の有力武家藤原秀郷流小山氏の居城、祇園城(ぎおんじょう)の城下であったから小山市というのだろう。企業の集積度も高く、東京に近いということもあって流入人口も多く、県内では宇都宮市に次いで栃木県第2位の16万人を超える栃木県2番目の都市である。

 このまちに来たのは確か4回目である。23年前、昭和61年に退職したコマツ(当時は小松製作所)の営業マン時代に建設機械のエンジンを作っていた小山工場へ研修などで来たことがあった。当時のイメージとは大きく変わっていたのは言うまでもないが、特に市役所へ向かう西口は研修中に飲み歩いた繁華街で、活気があったが・・。

●オレンジリボン運動は小山から

 このまちで目につくのはオレンジリボン。2004年9月、栃木県小山市で二人の幼い兄弟が、父の知人に暴力を受けたうえ、橋の上から落とされ亡くなった痛ましい事件があって、その事件をきっかけに小山市のNPO「カンガルーOYAMA]が、子どもの虐待防止を目指して2005年にオレンジリボンキャンペーンを始め、2006年からは、「児童虐待防止全国ネットワーク」が総合窓口を担い、全国的にオレンジリボン運動として活動を広げています。
 「オレンジリボン」には、子ども虐待の現状を広く知ってもらい、子ども虐待を防止し、虐待を受けた子どもが幸福になれるように、との気持ちがこめられてるというオレンジリボン。厚生労働省も音頭をとって、毎年11月を児童虐待防止推進月間に定め、各都市・各地域をリボンのオレンジの色で埋め尽くそうという計画を推進しているというが、その発祥の地に視察で訪問したのも奇遇であった。

●速攻で決めた「赤ちゃんの駅」は57ヶ所

 こうした背景からか、このまちの子育て支援策はきめ細かい。特にさすがと思わせるのは「おやま子育て―ほほえみマップ」。観光マップや、障がい者の外出用のバリアフリーマップなどは珍しくないが、子育てに特化したマップは初めて見せていただいた。それも毎年4月初めに改訂するという。来春の平成22年版マップには57ヶ所の「赤ちゃんの駅」が新たに付け加えられる。

 「赤ちゃんの駅」はおむつを替えたり授乳したりするスペースを設け、粉ミルクを溶くお湯も提供する。今年2月の定例議会で公明党の荒川議員が提案して半年、9月には33か所に設置されてオープンした。

 市役所本庁のほか各出張所、公民館、13の保育所、博物館、道の駅「恩川」、県立温水プール館等に設置し、以降、大型スーパーなどの民間からの申し出もあり、今では市内57か所に設置されている。

 「赤ちゃんの駅」であることを知らせるポスターを掲示し、周知。利用時間は各施設の開館日の開館時間。公共施設の一角をカーテンなどで仕切ったり、空いている和室などを利用したりするため特別な事業費は計上していない。予算ゼロで実現できたこと、実現させた事がおもしろい。また、開設してからの利用者などはあえてカウントしていないという。そこがまた、おもしろいし、「赤ちゃんの駅」の目的を象徴している。

 市役所本庁の場合は納税相談室が利用されていない場合は「赤ちゃんの駅」となる(写真右上)。小山駅に近いそれは、空き店舗を利用した「子育て支援センター」内に設置されている。また、道の駅「思川」の「赤ちゃんの駅」は多目的トイレを利用して改造されて有効利用されている。(写真右)

 全国的には、東京都板橋区、北九州市、新座市、海南市、本庄市、東京足立区、柏市、筑前町、春日部市、桑名市、前原市、寝屋川市などで設置されている。

 視察に際し、小山市子育て支援課、議会事務局の皆様に大変にお世話になりました。


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