伊藤ひであきの視察報告

秋深く、西宮で芸術を考える(11/18)

●復興のシンボルとして

 マホーガニーの無垢材で統一されて、優しく落ち着いた雰囲気に包まれ2000席を配置し、圧倒されるほどの客席空間を演出しているのは「兵庫県立芸術文化センター」。阪神・淡路大震災から10年目の節目にオープンし、4シーズン目を迎えている。

 あの時、いてもたってもおれず震災から2週間たった2月初め、JRが芦屋まで開通するのを待ち構えて、芦屋まで来て三ノ宮まで歩きました。この世のものかと疑いたくなるほどの息を呑むような光景に五体が震えました。今でも脳裏に張り付いています。その三ノ宮からさらに震源地に近い西宮の惨状はいかばかりであったか、想像を超えます。

 その西宮市の阪急神戸線西宮北口駅すぐの交通至便な地に重厚な雰囲気を漂わせて立つのが兵庫県立芸術文化センター。

 昭和63年に兵庫県で行われた「国民文化祭」が開催されたのを契機として、そのモニュメントとして劇場建設が提起された。基本構想が策定され、事業基金も80億円規模で創設され、基本設計が実施された直後、阪神淡路大震災に見舞われ、一時中断。震災復興の目処がつき始めた3年後に再スタート。そして、大震災から10年・・・、兵庫県立芸術文化センターは、この節目の年に文化復興の、いや震災復興のシンボルとしてオープンした。敷地面積13,227u、延床面積33,144u、建設費200億円。

●多彩な芸術活動の拠点

 芸術文化センターは三つの施設で構成されている。KOBELCO大ホール(2000席)ではコンサートを中心に、オペラ、バレエなどを上演、阪急中ホール(800席)では演劇を中心にミユージカルや古典芸能まで幅広く上演。
 神戸女学院小ホール(400席)はリサイタルや室内楽、ジャズなどの小編成の公演を始め、様々なパフォーミング・アーツを上演。舞台を客席が取り囲むアリーナ形式のホールは関西初。このように各ホールでは、芸術文化の新しい発信拠点として、様々な舞台芸術を展開している。

 芸術監督は世界で活躍する指揮者佐渡裕氏。 また、センターと共に創設された「兵庫芸術文化センター管弦楽団」は、佐渡芸術監督のもと、世界各地で行ったオーディションにより選ばれた若き精鋭達で構成されており、「世界一フレッシュでインターナショナルなオーケストラ」をめざしている。

 そのほか、県内の小・中学生を対象とした青少年鑑賞公演『わくわくオーケストラ教室』や、センターを飛び出して街の中で人々と交流するアウトリーチ活動も実施し、県下全域・県民各層への音楽文化の普及・浸透をめざしている。

 開館から4年、多彩で豊富なメニューを実現し、舞台芸術ファンの発掘、ソフト・ハードへの信頼獲得、地域とタイアップしてのまちのにぎわいの創出により開館スタートダッシュに成功し、安定的運営をめざしている段階。愛され親しまれ続けるセンターを目指したいと関係者の胸は高まる。


 今回、西宮の兵庫県芸術文化センターを視察させていただいたのは、豊橋駅東南口の再開発地に豊橋の顔として全国的に発信できる新しい芸術文化の創造・発信拠点として、中心市街地のシンボル的な施設として「芸術ホール」が具体的な段階に入っているからである。800席、事業規模約60億円。

 「広く厚い関西圏がバックグランドにあるこれだけの芸術文化センターの今日までの準備期間、そして開館後4年間の経験から、38万都市が地方で作ろうとする場合のポイントは何か」とお尋ねしたが、「地域のニーズ―市民はどのような芸術文化を求めているのかという徹底した市民目線で芸術ホールを位置づけることが大事。芸術は文化は誰のためか。市民のためであって芸術監督のためでも、市長のものではない」と答えていただいた。

 身の丈に合った「芸術ホール」にどこまで挑戦できるか。GO!サインを出した議会の責任も重い。

 視察に際し芸術文化センターの総務部の皆様に大変にお世話になりました。ありがとうございました。


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