伊藤ひであきの視察報告

伊賀の里「モクモク手づくりファーム」(10/1)

●農業を第6次産業に

 関西本線柘植駅から畑や田んぼを横目に山の中へ車で15分。小高い丘に手作りの様な、幾つかのウッドハウスが見えてくる。それが伊賀の里「モクモク手作りファーム」。
 国有林の払い下げを受けた広さは東京ドーム3個分の広さであり、ログハウスのモクモク(木々)、燻製の煙のモクモクであり、忍者の術の煙に巻くモクモクである。

 1987年に、三重県阿山町(現・伊賀市)のおいしい豚肉を何とかブランド化したいと養豚農家が集まって農事組合法人を設立し、ハム工房を作ったのが始まり。そして、ウインナーソーセージの手作り教室を開設して客が増え始めた。豚肉の生産だけでなく、野菜や地ビールなどの農産加工品の製造をどんどん広め、今では300種類以上の製品を作り出している。その上に、通信販売や、直営店、量販売店向け卸販売、農場レストランは名古屋に進出しするなど、流通販売サービスへも拡大し確立している。
 生産(第一次産業)し、加工(第二次産業)し、流通販売サービス(第三次産業)までの、併せて第六次産業にまで農業を高めてきた21年の歴史がここにある。

●強固な会員組織、職員の協同意識

 それを可能にしたのが年間50万人の入場者、入場料は500円。それもお金をかけず一日のんびり過ごすこともできるが、リピーター率6割という来園者の多くは、安心・安全な農産物の購入、ウインナーやパンなどの手作り体験がお目当て。全国のレジャー施設の中で、客1人当たりの平均利用額を示す客単価がベストテン入りしている複合型農園でもある。

 そして4万人のモクモク会員、レストラン会員70万人。会員は単なる会員ではない。モクモクに温泉を掘ると決めた時、そのための「風呂桶募金」を始め1.7億円が集まったという。ブルーベリーの収穫や稲刈りも喜んで手伝いに来てくれるサポーター会員でもある。

 正職員は130人、主婦などのパート職員は130人、平均年齢は31歳。正職員の半分と全パート職員は地元採用で雇用創出にも貢献している。毎年、10人程度を新規採用しているが、入社説明会には「ここで農業をやりたい」と、全国から沢山の若者が殺到する。

 長い歴史の中で出資者である農家も、社員も平等で、給料をもらうためにモクモクで働くのでなく、家族の生活のため、自分の夢のための手段として黙々で働くのであり、協同的精神を最優先している。年間売上は50億円。

 今では滞在型食農学習施設や貸農園「農学舎」や村おこし・夢おこしのためのコンサルティング「モクモク流農村産業研究所」も全国で活動している。

●食と、農の挑戦は続く

 「農業を花形産業にしよう」「そのための農業の価値はどうあるべきか」「地域の夢のある産業にしよう」「一般のサラリーマンと同じくらいの収入を得るためには、安売り合戦に巻き込まれたらいかん」・・・それは農をみつめ、食を見つめ、時を刻んだ変化の歴史。時には高度経済成長、エコロジー、食農、地産地消などの時代の風に流され、飛ばされ、追い風になって歩んできた。

 「日本グリーンツーリズム大賞」、「ふるさと企業大賞」「食の懸け橋賞」などの受賞歴は数限りない。またここで作られているハム・ソーセージ・地ビールなどは海外からのモノづくり受賞歴も限りない。

 生き生きと働く彼らの姿が、“若者に不人気な農業”という固定観念を打ち砕き、「食と農業のあり方」を見つめなおすモクモクの挑戦は続く。自分たちの風を吹かすために・・。


 視察に際し、ファーム運営部の松永部長に大変にお世話になりました。これからの農業、地域おこしのために必修の視察地である。

伊賀の里 モクモク手づくりファーム


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