伊藤ひであきの地方からの提言

09秋 発足一カ月、よたよたしてきたぞ小鳩政権 (10/31)

 以下の文章は豊橋での長谷川幸洋氏(ジャーナリスト、中日新聞・東京新聞論説委員)、浅川博忠氏(政治評論家)の講演をベースに、文芸春秋10月号「戦後日本のいちばん長い日」・同11月号「小沢一郎−新闇将軍の研究」、週刊現代11/7「脱官僚はウソ、民主政権の大迷走」、そして何よりも東京で活躍中の高校時代の同級生などのジャーナリストや官僚OB諸氏からの情報でまとめました。

●二重構造でなく、これは小鳩政権

 鳩山政権はハネムーン期間が終わる11月頃に潮目が変わると見られていたが、1ヶ月で流れが変わった。日本郵政の次期社長に元大蔵事務次官・斎藤次郎氏を決めたことがターニングポイント。天下り根絶の路線と異なるだけでなく、小沢一郎幹事長と亀井静香大臣で決め、鳩山首相には事後報告だったことが露呈してきた。

 あるいは、行政刷新会議の「事業仕わけ」を担当する民主党議員が32人から一挙に7人に減った。仙谷行政刷新担当相は党側との調整不足に「配慮が足らなかった」と小沢幹事長に陳謝。「私が知らないところで進んだ」という小沢幹事長の存在がきわだつ。

 見えてきたのは鳩山、小沢両氏のぶつかりあいは一切なく、小沢にひれ伏す鳩山の姿であり、そのことに緊張関係もない。これは新政権は二重権力構造でもなく、まぎれもなく小沢・鳩山政権であり、小鳩政権である。今後も繰り返し同じことが起こるだろう。

 また、仕分け作業には民間人も起用して減員分を穴埋めしなければならず、予算案を年内に編成するにはどうしても財務省主導にならざるを得ない。現政権は”脱官僚”どころか”財務省依存政権”である事も見えてきた。

 新政権の目玉は「国家戦略室」と「行政刷新会議」。政権の最大の政治課題は当然に景気対策。その経済財政政策の司令塔にならなければならないのに、事実上無力化している。「感動する」内閣どころか、「国家戦略室」を任された副総理の「管はどうする」羽目になって開店休業状態。

●収入より借金が上回る初の予算

 政府は10月16日、政権交代後初となる来年度当初予算の概算要求総額を発表した。それによると一般会計で95兆380億円。マニフェスト(政権公約)実現のために要求額が膨らみ、前麻生内閣による今年度当初予算を大きく上回り、要求段階で過去最大。しかも、概算要求に計上されていないが、各省が強く予算化を求める「事項要求」も3兆円超が見込まれ、それを含めると98兆円を超える。

 その一方で、今年度の税収は不況の影響で当初見積もりの46兆円から6兆円以上減る見通しだ。年末以降、景気回復どころか「二番底」も噂される状況だけに、来年度の税収見積もりも厳しい数字となり40兆円を切る事は確実。となると予算の大胆な絞り込みがなければ、赤字国債の増発は避けられない。

 鳩山首相は先の総選挙で「借金だらけのばらまき予算は許せない」と繰り返し、初の国会答弁でも打伝えて、政権交代後の赤字国債増発を否定してきた。このため、政府としてはこれからの予算編成過程で総額を大幅に削減しないと公約違反のそしりは免れない。
 今後、95兆円の概算要求を5兆円以上削れるかどうか。そのリーダーシップを鳩山が取れるかどうか。それでも、日本の財政史上初の収入より借金が上回る予算にならざるをえない。

●難問山積、政界再編へ

 今後、JAL問題や景気の二番底で新たな補正予算が必要な時や、外交安保でも足並みが乱れる。現に10/29日の国会論戦では普天間飛行場移設問題で嘉手納基地への統合を検討する与党と、県外移設を唱える社民党出身の福島大臣との閣内不一致も露呈した。
 民主党がマニフェストに掲げた地域主権も、地方主権のための安定的財源は消費税を地方のために使うことしか考えられないのに、民主党は消費税は「年金」のために使うとする。これでは、地方主権は進まない。

 小沢氏の狙う2大政党は「2大保守政党」。今の民主は保守とはいえない。来年7月の参院遥で民主党が圧勝し、単独過半数になってしても、秋口に政界再編が起きるだろう。民主党の若手を中心とした、それこそ平成維新で小さな政府作ろうとする改革派と一たび手にした権力を守ろうとする大きな政府を目指す穏健派と分かれるだろう。
 自民党も再建の軸がなく、流れ解散的に分かれていく。政界再編がおこるのは歴史の必然である。いわば、国会議席の前半分の半円状と、後ろ半分の半円状に分かれるといったほうがわかりやすい。


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