伊藤ひであきの視察報告

「つばさ」は川を越えるか(10/23)

 埼玉県川越市、埼玉県西部の中心都市であり、東武東上線・JR川越駅及び、西武新宿線本川越駅を合わせた乗降客数は26万人を超える。

●推進協議会で全面バックアップ

 江戸時代には川越藩の城下町として盛えた都市で、「小江戸」の別名を持つ。戦災を免れた為、歴史的な街並や寺院などが多く残っており、市内の観光名所には年間約600万人もの観光客が訪れているという。川越のシンボル「時の鐘」は2005年1月に再建されたものではあるが、その周辺はウィークデイだというのに多くの観光客でにぎわっていた。

 「最近は週末だけでなく、金曜日や木曜日も観光客が多いのです」と同行していただいた議会事務局利根川晃副課長は笑顔で話す。いうまでもなく、今年3月30日から9月26日まで放映されたNHK朝の連続テレビドラマ小説「つばさ」の舞台となったからである。

 川越市を舞台にした同番組が正式に発表になったのは、2008年の4月24日。クランクインは同年11月5日、クランクアップは2009年8月14日。

 その「つばさ」を支援するために作られた体制が「つばさ」推進協議会。川越市長が会長、商工会議所会頭と自治会連合会会長が副会長となり、NHK、民間団体、行政などの関係機関とともに支援体制を構築し、関係機関相互の連絡調整を行う組織として7月30日に設置された。市民の郷土意識の高揚を図り、観光振興及び協働による観光まちづくりを推進していこうというのがこの協議会の目的でもあった。

●ドラマのPRでなく、川越の魅力発信

 特に評価できるのは、単なるドラマのPRとならないために、どのような手段で地元の魅力発信につなげることができるかに留意された点である。そのためにドラマと市の観光をミックスしたパンフレット(「ステラ」など)やオリジナルポスターを作成などに意を尽くした。また、FMさいたまなどでのラジオの生出演等で川越の魅力を発信したり、各団体(県、さいたま市、長瀞町、観光物産協会、JR、東武、西武、秩父鉄道)と協働で観光PR。

 また、鏡山酒造跡地にて、明治蔵(観光情報、物産)、大正蔵(イベント)、昭和蔵(つばさ展示)、広場においてB級グルメの太麺焼きそば出展で相乗効果をねらうなど、あの手、この手で取り組んだことである。

 さらにドラマ終了後も「盛り上がり」を継続させるために、一度川越に来た(あるいは知った)お客さんを再来させるような取り組みを工夫した。特に川越においては、鏡山酒造跡地にてつばさ館を開館て受け入れ体制をつくった。あるいは、川越市観光グルメ大使に出演者(ロナウニ郎役)の脇さんになっていただいたり、ロケ地マップ作成やロケ地ルートの新設や記念碑も設置した。

 何でもNHKの許可が必要だったり、市民でも協力的ではない人もいることもわかったし、カットされる部分が多いのでし 協力者にあまり期待させないなどやってみてわかったこともあったが、各ロケ地でのエキストラなど市民が大いに協力してくれたという。

 現在は広域(川越市、長瀞町(ながとろまち))ロケ地マップを協働で作成したり、ロケ地となった安比奈線を絡めて川越卸売市場を観光客に開放するための整備計画も煮詰まってきている。

●NHKの挑戦的番組づくり、評価も様々

 ドラマ「つばさ」のおおよそのあらすじは以下の通り。

 20歳の主人公玉木つばさは、実家が営む老舗和菓子屋「甘玉堂」の跡継ぎ。また出奔した母の代わりに主婦として玉木家の家事全般を行っていた。
 しかしある日、母が「もう一度主婦をやる、店の跡も継ぐ」と言って帰ってきた。そして、つばさも知らなかった膨大な借金が発覚。最終的に、祖母は現店舗を手放すことを決断。その提案をした不動産屋は、母の借金の利子と引き換えに、つばさを返済回収人にする。貸し出し先が開局前の地元コミュニティラジオ局だったことから、いつしかつばさも立ち上げに関わることとなった。

 主人公の多部未華子は連ドラ初の平成生まれの主人公であり、高畑淳子や中村梅雀、西城秀樹、吉行和子など個性的俳優が脇を固めた。

 NHKはこの作品でかなり冒険し、今までの連続テレビ小説では見られなかった描写が多数存在する。また、サンバダンサーが突然現れたりで、市民の反応も様々で、朝の連続ドラマとしては通算視聴率は最低のそれであったとか。

 また、NHKのFM放送開始40周年を記念して制作された記念策でもあり、FM豊橋の番組審査委員でもあった自分にとっても、念願の視察地でもあった。


荒川、入間川、新河岸川、小畔川、不老川に囲まれた川越市。市街地を川が囲む形となっており、川を越えないとたどり着けないことから「河越(川越)」と称されたと言う。
 人口33万7千人で1年で2500人から3000人は人口増の上昇カーブとともに、「つばさ」を持った川越市が、未来に向かって飛び立ち、川を越えれるか。大いに期待されるところである。

 視察に際し、川越市産業観光部観光課の「つばさ」プロジェクト担当の田中三喜雄主幹や飯野栄一氏、議会事務局の皆様にお世話になりました。


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