伊藤ひであきの研修報告

09秋 東京で「議員提案政策条例」について考える (10/22)

   10月22日、爽やかな秋の一日、東京・市ヶ谷のホテルで「社団法人日本経営協会」主催のセミナー「議員提案政策条例の立案と実現の手法」について学んだ。

●議員提案政策条例とは何か

 あえて、議員提案政策条例とあるのは、一般的な「議員提案条例」では議員や議会を規定する、例えば「議員定数条例」などのような条例も含まれてしまうので「議会や議員の身分党に関する条例以外の政策的な行政関係条例と定義づけている。

 また、議会には大きく二つの機能が求められる。執行機関の監視機能であり、政策の立案機能である。
 しかし、神奈川新聞の調査では原案どうり可決した議会は全議会の99.2%と高率であり、議員の執行機関に関する監視機能が発揮されているとはいい難い。
 また朝日新聞の調査結果によると47都道府県と15政令指定都市のうち2006年までの10年間で4割近くの議会は議員提案による条例の成立状況が0本であり、1本だけでも2割強となっており、極めて低調である。

 一般的には議員提案政策条例は、首長(執行機関)は嫌う傾向がある。その理由は首長が政策条例を議会に提出し「自らの手柄」となることが、議員・議会側に取られてしまうからである。しかし、最近では「住民の福祉を増進させる条例ならば、だれが提案してもよい」スタンスを持つような首長も現れた。

●条例発議の留意点とユニーク条例

 条例は地方公共団体が国の法律の範囲内において、制定する法規であり、法令に違反するかどうかは、個々の条例を具体的に判断しなければならない。また地方公共団体が、住民に義務を課し、または住民の権利を制限するためには、条例によらなければならない。

 さらに条例は、地方公共団体の法規であるため、その効力は原則として、その地方公共団体の区域内に限られ、議会の議決を経て制定される。当然であるが条例は公布され、施行されて、はじめて効力を生じることとなる。

 全国には地域独自のユニークな条例として、青森市「市民とともに進める雪処理に関する条例」、宝塚市「夜間花火規制条例」、千葉市「落書きの防止に関する条例」、福岡市「節水推進条例」などがある。また「井原市子誉め条例」(岡山県)や「鶴田町朝ごはん条例」(青森県)、志木市自然再生条例(埼玉県)などもある。(以上、財団法人 地域開発研究所 研究員 牧瀬稔氏の基調講演から)

●傾聴に値した若い議員たちの事例発表

 事例発表として「青森県中小企業振興基本条例」を発表した青森県議会の三橋一三議員、「平塚市民のこころと命を守る条例」を発表した平塚市議会の江口友子議員の二人から、何のために条例制定しようとしたのか、議決に至るまでのいくつかの壁をどう乗り越えたか、条例制定後にどのような効果があったかなど歯切れ良い報告がなされた。

 しかし、未曾有の不況の中で「青森県中小企業振興基本条例」がどのように青森県の中小企業振興に役立っているのか、あるいは「平塚市民のこころと命を守る条例」については全国初の自殺対策条例ともいわれるこの条例は多重債務問題を解決するするために弁護士と司法書士を市役所窓口に配置し、無料相談を行うことなどを柱としているが、前者は「青森県産業振興プラン」、後者は市民施策のなかに「多重債務対策」などをきちんとなされればいい事で、議員発議による議員提案政策条例を作る事が目的になっているような違和感を覚えたのは私だけだろうか。

 とはいえ、年代的にも若く、期数も2期目の二人が、とにかく覚悟と謙虚さを持って議員提案政策条例づくりに奔走した事は、全く持って評価しなければならないし、言葉使いといい、発表の作法といい傾聴に値する事例発表だった。


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