伊藤ひであきの視察報告

視察報告 北杜市の「三代校舎ふれあいの里」

●風雪を刻んだ校舎を活性化拠点に

 JR中央本線韮崎駅よりバスで50分。国道141号線から高低差の激しい山間を抜けると、緩やかな時間が流れるかのような里山の景色が広がる。そして、八ヶ岳を望む夏空の下で、明治・大正・昭和のなつかしき校舎が並び、運動場には朝礼台もあってほほえましい。
 この学校こそ、創立以来百十数年、日清、日露、太平洋戦争などの激動の時代を乗り越えて、この地域(北杜市須玉町津金)の文化と教育の要となってきた津金学校跡地である。
 明治20年には津金尋常小学校と改めら、昭和16年には津金国民学校、戦後は津金小学校、中学校となり、日本における教育制度の歴史を刻んできた。そして遂に昭和60年3月末に百年余りの学校史を閉じた。
 しかし、この旧津金学校は明治・大正・昭和三代の校舎がそのままの位置に並んで残っていることで全国的にも珍しく、それぞれの校舎の特徴を生かして再生されて、地域活性化の拠点となっている。

●それぞれ性格の異なる三つの校舎

 ■明治8年に落成した旧津金学校校舎は日本に現存する最古の擬洋風学校建物であり、昭和63年に解体され、平成元年に復元され「須玉歴史資料館」となっている。始業の鐘や当時の木製のイスや机が並ぶ教室も復元されている。入り口横には昭和初期のリードオルガンの音色も懐かしい「カフェ明治学校」となっている。

 ■大正13年に建てられた木造平屋校舎は、現在は農業体験農園施設「大正館」に生まれ変わり、そば打ち・ほうとうづくり・陶芸など豊富な体験メニューを備え、近くの田んぼでの田植え、稲刈り体験も踏まえた都市と山村の交流施設、地域のコミュニュティ施設となっている。

 ■昭和校舎:昭和28年に建てられた木造校舎を解体し、平成12年にレストラン・ハーブ湯・宿泊施設を備えた複合施設「おいしい学校」として生まれ変わって、県内外から観光客を集めている。生産者自ら届ける朝採り新鮮野菜を中心に特産品売り場や、パン工房も備わり楽しい。

●平成の歴史をどう展開するのか

 山梨県の北西部に位置する北杜市は、2004年(平成16年)11月に、明野村、須玉町、高根町、長坂町、大泉村、白州町、武川村の7町村が合併し、人口4万4千人の市として誕生、2006年3月に小淵沢町と合併し人口5万人の新「北杜市」が新たにスタートしている。
 北は八ヶ岳連峰、西は南アルプス、東は茅ヶ岳、瑞牆山など美しい山岳景観に囲まれ、清らかで豊富な水資源、高原性の気候、日本で一番長い日照時間、高原リゾート地など、豊かな資源に恵まれた地域である。

 この明治・大正・昭和の「三代校舎ふれあいの里」が平成の新たな歴史をどのように開き、将来像である「人と自然と文化が躍動する環境創造都市」の歴史を刻んでいくのか。
 市の総面積は、602.89ku、その76.4%が森林等である高齢化率30%の山間地で、豊かな資源をどのように展開していくのか。
 8つの地域が持つ可能性を高めながら相互に連携し、一体となったまちづくりをどのように進め、個性あふれる魅力ある地域の形成を目指していくのか。
 首都圏から約2時間、中京圏から約2時間半、中央自動車道の須玉、長坂、小淵沢の3つのインターチェンジが利用でき、企業立地にも恵まれた環境をどのように生かすのか。
 課題も多いが、大いに注目される地域である。

 視察に際し、北杜市議会の内田俊彦議員に大変にお世話になりました。


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