伊藤ひであきの視察報告

08夏 宇都宮で「競輪」を考える(7/30)

 ぎょうざとジャズとカクテルのまち−宇都宮市は人口50万人を超える栃木県の県都。7月30日(水)、その宇都宮市内のホテルで「全国競輪主催地議会議長会役員会」が開催され、議会を代表して参加した。

●ピーク時の半分、四苦八苦の競輪経営

 全国の車券売上額は、平成3年度の1兆9,553 億円をピークに14年連続して減少している。平成19年度は8,401億円となっており、対前年度比では97.6%と減少幅が緩やかになったものの、平成3年のピーク時と比べれば、半分以下であり、競輪を施行している49団体のうち、赤字団体が4団体、各自治体の一般会計に繰り入れている団体は28と、半分強である。
 また平成3年のピーク時に全場で1516億円の収益があり、そのうち日本自転車振興会への交付金は672億円であったのが、平成19年度は212億円の利益なのに日自振への交付金は248億円という現実。当然に、競輪施行者からは「赤字であっても、交付金を出さなければならないのはおかしい」という意見も出された。

 こうした競輪の厳しい実態から、納めた交付金の1/3を限度に、H18年度から5年間の期限立法で翌年に還付されているが、抜本的な解決策にはなっていない。それよりも還付総額が84億円、5年間では400億円からの還付が行われるという日本自転車振興会のあり方も問われている。

●豊橋競輪の改革

 豊橋競輪は6年前の02年10月、このまま継続すると翌年度には5億円の単独赤字が発生することが分かり、一般会計から2億円近い繰り入れが必要となることから、廃止(撤退)する方針が明らかにされた。
 撤退表明後、多くの関係団体から事業継続の要望が出される中、上部団体である全国競輪施行者協議会から、全国で導入が一番遅れた3連単機器導入の負担軽減、05年度GU(ふるさとダービー)開催などの支援策が提示された。

 こうした支援策で、一般会計からの繰り入れが避けられる見通し(市民の税金を投入しなくてもよい)となり、早川豊橋市長は「再び一般会計から繰り入れて経営するような事態になったら撤退する」ことを条件に事業継続を決定した。以降06年度まで、4年連続の単年度黒字収支を続けている。
 この間、300人余いたパート従事員を06年度末までに90人と3分の1以下に減らしたほか、07年度から民間包括委託(指定管理者)に切り替えた(08年度は3.6億円で委託)。車券販売機の更新、施設改修などを行い、再建事業を進めてきた。場外売りも全国への営業展開の甲斐あって拡大した。
 一般会計への繰り出しは03年から5年間0(ゼロ)で推移してきたが、今年度3千万円の一般会計への繰り出し予算が組めるようにはなった。

 しかし、年間18節(54日、1日12レース)の普通競輪を自場で開催すれば一日約1000万円の赤字であり、その反面、年間260日に拡大した場外車券売上の5%が利益配当されることから、本場開催の赤字分を補い、記念競輪の売り上げでつないでいるのが実態。楽観できない状態が続いている。

●薄らぐ競輪の社会的意義

 「市民の税金を投入しなければならなくなった時が廃止(撤退)するとき」−豊橋市の豊橋競輪に対する姿勢は明確である。
 昭和24年からの約60年、一般会計に157億円余の繰り入れを行い、戦後復興や失対事業、さらには学校建設や都市計画、土木事業に資してきた競輪も、還暦である。その社会的意義も、存在意義もすでに失われているのではないだろうか。

 現在のように全国47競輪場が、施設改善をしながら赤字の本場開催を余儀なくされ、場外車券や、特別競輪に望みを託すような、本末転倒した姿は、異常であり、長続きしないことは明白。

 戦後60年、戦後復興の大義名分で全国の自治体で始まった競輪事業は、その役割を終えたといっても過言ではない。地方自治体がいつまでも「公営ギャンブル」を開催する社会的意味は見つからない。かといって「健全なレジャー産業」への転換は不可能であることも実証されてきたのが60年の歴史でなかろうか。


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